非常に低い車高と徹底した低重心、軽量なボディとミッドシップレイアウトなどにより、極めてコントローラブルなスポーツカーとして名高い「ロータス ヨーロッパ」。日本では人気漫画「サーキットの狼」で初期の主役級マシンとして活躍したほか、スーパーカーブームでも人気のある車種でしたが、本来は小型軽量安価なライトウェイトスポーツとして作られました。
ロータス ヨーロッパ / Photo by Mike Roberts
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可能な限り安価な小型軽量ミッドシップスポーツ、「ヨーロッパ」誕生
ロータス ヨーロッパ S1A(サイドウィンドウが取り外し可能) / Photo by Jack Snell
1950年代にマーク6で成功し、その後エリートやエランといったスポーツカーを作る一方で、若者が安価にモータースポーツを楽しめる車としてキットカーのセブンを販売していたロータスですが、セブンより本格的、しかし同じく安価に楽しめる小型軽量スポーツを開発。
1967年に発売し、セブンの後継にしようとしました。
基本コンセプトは「安い量産ミッドシップスポーツ」で、当時はまだレーシングカーや、それにナンバーを取得して公道走行できるような、「職人手作りの高級品」的なミッドシップスポーツモデルしか、存在しなかった頃です。
ロータスのコーリン・チャップマンは、可能な限り市販車のパーツを使い、装備は極力簡素にして軽量化するとともに、空力に優れた軽量FRPボディを使い、価格を抑えることを試みました。
これは日本の「ヨタハチ(トヨタスポーツ800」が、レイアウトや車格も全く異なるとはいえ、パワーはなくとも安価なエンジンを積んだ車に、空力に優れた軽量ボディでスポーツ性を持たせようという意味で、似たようなコンセプトだと言えるかもしれません。
ロータス ヨーロッパS1 透視図 / 出典:https://www.favcars.com/pictures-lotus-europa-s1-type-46-1966-68-394426.htm
逆Y字(U字)バックボーン・フレームの間へ、極力低く搭載されたのは、ルノー16のエンジンからミッションまで含むパワートレーン一式です。
ルノー16はトランスアクスルの後方にエンジンを縦置きした、4(キャトル)以来のフロント・ミッドシップ方式が採用されていたため、それを前後逆にしてリアに載せれば、市販車ベースで簡単にミッドシップスポーツができるじゃないか!というわけです。
後にこの手法はフィアット X1/9やトヨタ MR2など、ジアコーサ式横置きFF車のパワートレーンを前後ひっくり返してリアに載せた車でも採用されており、昔も今も安価にミッドシップスポーツを作るなら、やり方は同様。ヨーロッパは、そういう意味での先駆者でもありました。
もちろん、大衆車のルノー16に搭載された1.5リッター直4OHVエンジンは、スポーツカー用としては非力です。
しかし、商用バンのように窓もなくそそり立つバーチカルフィンを、「世界最速のブレッド・バン(パン屋のバン)」など陰口を叩かれつつも空力に優れた軽量FRPボディで補った上に、軽量化のためにシートのスライド機構は省略(工具で調整)するなど、装備の簡素化を徹底。
なんと、シリーズ1初期のサイドウィンドウは、基本、開閉不可でした。
シリーズ1Aおよび1Bで、サイドウィンドウが取り外し可能となりましたが、いずれにせよ「なくて困らないものは最初からつけるな」というシンプルな発想と割り切りができるのは、現代のクルマ好きからするとうらやましい限りです。
ロータス ヨーロッパ S2(サイドウィンドウが開閉可能) / Phoyo by Staffan Andersson Using Albums !
基本的にはフランスへの輸出用だった、つまりある意味まことにイギリス人らしく、「フランス人ならこれだけスパルタンでも文句は言わないだろう仕様」だったヨーロッパのシリーズ1ですが、フランス以外に自国を含め、手広く売ろうと思えば、話は少々変わってきます。
そこで1968年に発売されたシリーズ2では、ちゃんと開閉可能なパワーウィンドーや、スライド可能なシート、床にはフルカーペット、木製パネルのついたダッシュボードにはラジオが標準装備。
初期を除き、ヘッドライト内側のウィンカーや、プッシュボタンではないちゃんとしたドアノブが装着されました。
もっと根本的な部分で変わったのは、バックボーンフレームとボディの接合方法で、シリーズ1では接着していたところを、シリーズ2では脱着しての修理が容易なようにボルト止めとされ、剛性面で若干妥協した事と引き換えに、メンテナンス性は大幅に向上しています。
ここまでするとアメリカへの輸出も可能となったため、排出ガス規制に対応し、同じルノー16用でも1.6リッターエンジンを搭載するなど、アメリカ仕様のシリーズ2は若干、細部が異なりました。
フォード系のDOHCエンジンを積み、スーパーカー路線へ
ロータス ヨーロッパS1 いかに低い車かわかる1枚 / Photo by Hugh Llewelyn
こうして安価で軽量、低重心でコントローラブルなスポーツカーへ仕上がったヨーロッパですが、ちょっと割り切りすぎたのか、パワー不足を指摘され、レーシングモデルの「ロータス47」ではエランと同じフォード系の1.6リッター直4DOHCエンジンを搭載。
フレームやリアサスペンションも改めるなど、かなり別物となります。
市販モデルも、「47」ほどではないにせよ改良が求められ、エランと同じフォード系1.6リッターDOHCエンジンが搭載されて、82馬力から105馬力へ一気に出力を向上。
バーチカルフィンも低くなった事で、後方視界も多少改善され、両サイドの燃料タンクにガソリンもタップリ入る「ヨーロッパ ツインカム」が、1971年に発売されます。
翌1972年には、さらにビッグバルブ採用のエンジンで126馬力となり、パワーアップに対応したフロント175/70VR13、リヤ185/70VR13のワイドタイヤを装着。
ノーマル4速MTだけでなく、オプションで5速MTも選択可能な「ヨーロッパ スペシャル」が登場し、これがロータス ヨーロッパの決定版となりました。
ロータス ヨーロッパ / Photo by Mark Benson
しかし、バージョンアップするごとに豪華で快適になり、ヒラヒラ舞うだけでなく、パワーアップでキチンと直線でも速くなったヨーロッパではありますが、ここまで来ると逆にシリーズ1のスパルタンさが懐かしくなってきます。
本来のパワーはなくともコントローラブルなシリーズ1やシリーズ2がいいか、ロータス・ツインカムを搭載してパワフルなツインカムやスペシャルがいいかは、ユーザー次第。本来のコンセプトを味わうなら前者、純粋に速さを求めるなら後者という事になるでしょう。
主要スペックと中古車価格
ロータス ヨーロッパ スペシャル / Photo by Aaron Headly
ロータス ヨーロッパ スペシャル 1972年式
全長×全幅×全高(mm):3,980×1,650×1,090
ホイールベース(mm):2,310
車重(kg):712
エンジン:水冷直列4気筒DOHC8バルブ
排気量:1,558cc
最高出力:93kw(126ps)/6,500rpm
最大トルク:153N・m(15.6kgm)/5,500rpm
燃費:-
乗車定員:2人
駆動方式:MR
ミッション:4MT
サスペンション形式:(F)ダブルウィッシュボーン・(R)固定長ハーフシャフト ラジアスアーム トランスバースリンク(中古車相場とタマ数)
※2021年2月現在
410万~560万円・7台
本来のコンセプトに忠実か、かけ離れても高性能か、選ぶならどっち?
ロータス ヨーロッパ スペシャル / Photo by Vetatur Fumare
今回、ロータス ヨーロッパを振り返ってみて思うのは、決定版のスペシャルに至っても、全高1m少々の低重心ミッドシップスポーツである事には変わらないにも関わらず、パワーはなくともより軽く、スパルタンなシリーズ1への関心が決して薄れない事です。
おそらくはユーザーの要望に応えるべく、あるいは販売サイドからのフィードバックそのままに快適装備を追加し、強力なエンジンを搭載していったものと思いますが、非力でも軽量なマシンを、アクセルを踏むほんの僅かなタイミングにさえ気を使って可能な限り速く走らせようとするのが、本来のヨーロッパだったはず。
しかし、だからといって「こういうクルマなのだから」と押し付けるのはメーカーの独りよがりに過ぎません。そうなると、結果的に車がどんどんパワフルになり、タイヤは太くなり、速くなるので衝突安全などにも気を使いと、当初のコンセプトからどんどん離れていくのかもしれません。
すると今度は、「余計なものがなければ、もっと安くて軽くて速い車を作れたはず」などと、ユーザーに言われてしまうわけですが、こうしたメーカーとユーザーのすれ違いは、昔も今も変わらないというのが、今回ロータス ヨーロッパを見ていての、率直な感想です。
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