世界的に希少な石狩市の私設「石狩美術館」が閉館へ

 2011年11月29日、石狩市の私設美術館である「石狩美術館」と、併設するミュージアムレストラン「ラ・シェネガ」が2011年12月20日をもって閉館すると発表した。絵画やガラス工芸などのコレクションを収蔵・展示する世界的に希少な美術館であったが、開設5年で残念ながら閉館となる。(画像は公式サイトのキャプチャ)

 石狩美術館の公式サイトやtwitterアカウントのツイートで発表された。公式サイトでは「閉館のお知らせ」と題し、「多くの皆様に支えられ、これまで営業していくことができました。突然の閉館でご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。長年のご愛顧を頂き、誠にありがとうございました」とメッセージが掲載されている。

 石狩美術館は石狩市石狩新港地区にある、ちょっとリッチな私設美術館である。2005年3月に七生総業株式会社(神奈川県)が石狩開発株式会社の旧本社ビルを取得・改装、1~3階部分を美術館とし、併設レストランとともに2007年6月1日にオープンした。

 同美術館のコンセプトは「自然との共生」。三友グループ代表・小松燿氏が40年以上の歳月をかけて収集した個人コレクションを展示する。収蔵する美術作品総数は約1100点にも及ぶが、そのうち約360点を常時入れ替え展示している。

 具体的には、「アール・ヌーヴォーとアール・デコの美術館」とも呼ぶように、フランスの「アール・デコ」を代表するルイ・イカール(1888-1950)の銅板画・油絵作品600点以上、「アール・ヌーヴォー」を代表するエミール・ガレ(1846-1904)やドーム兄弟(1853-1909、1864-1930)を収蔵。ルイ・イカールの収蔵作品数は、全作品の86%にも及び、世界一の収集といわれる。その他、宮崎県在住の黒木国昭(1945-)等のガラス工芸品253点も収蔵している。

 たとえば、ルイ・イカールの作品「二人の美人」(1931)は石狩美術館を代表する展示品。小松氏がルイ・イカール作品の収集のきっかけとなった作品である。エミール・ガレの作品としては「水中文花瓶」等のガラス器や陶器作品が中心、ドーム兄弟や黒木国昭の作品もガラス工芸品である。


 館内には、黒木国昭氏のガラス工芸品ショップ、美術品ショップ、道内作家の民芸品ショップがあり、2階にはミュージアムレストラン「LA CIENEGA」が併設されている。このレストランでは地元産の食材にこだわった創作フレンチを提供する。すべて美術品を展示した個室であり、石狩川をイメージした水路を使って料理が運ばれてくる仕掛けになっている。

 残念ながら間もなく閉館する石狩美術館。町から離れた場所にあり行きづらいのもあるが、閉館前に一度行ってみることをお勧めしたい。住所は石狩市新港中央1丁目710番地。一般入館料は大人1000円、65歳以上と石狩市民は800円、小学生は500円。水曜日以外の10:00~18:00まで開館、レストランは11:00~20:30まで営業している。詳細は公式サイト参照