元気できれいに 美容×デイサービス施設が八尾に
「そのネイル素敵やね」「先月カットしたんやけど、どう?」。高齢の女性らの朗らかな会話が聞こえてくる。美容室やエステサロンではない。大阪府八尾市に昨年末オープンしたデイサービス施設「Bee:(ビー)」だ。
◇
近鉄八尾駅に近い八尾市本町5丁目。ビーは白いおしゃれな外観が特徴だ。
室内には大きな丸い鏡がずらりと並んでいる。高齢者が立ち上がる訓練に使う手すりや、リハビリの施術台もある。
一般的なデイサービスでは、折り紙や運動器具などで高齢者に体を動かしてもらいながら交流を図ることが多い。ビーの場合は、鏡やメイク道具がその役目を果たしている。
色とりどりのメイクパレットで化粧したり、スタッフに手をもんでもらったり。「きょうのスカーフどう?」「パーマかけに行こうと思うねん」。利用者の声が弾む。
利用できるのは通常のデイサービスと同じだ。スタッフは介護福祉士や看護師、理学療法士らだ。美容師の資格を持つ人もいる。
午前と午後に各10人を受け入れている。自己負担500円で、ヘッドスパを兼ねたシャンプーとブローも受けられる。近くの美容室の協力を得て、月に1度は出張美容室も開いている。
運営しているのは佐藤岳登(たけと)さん(38)。実家は八尾市内で整骨院を営み、高齢者の存在は身近だった。
通常のデイサービス施設を営んでいたが、トイレに長時間こもる利用者の女性が気になった。話を聞くと、鏡に向かい時間をかけて化粧をしていた。おばあちゃんと呼ばれるような年齢になり、身なりを気にしていると家族らに思われるのが恥ずかしく、家ではあまり鏡に向かえないという。
「きれいでいたい気持ちに年齢は関係ない。心も体も元気にきれいになってもらえる場所を作りたい」。佐藤さんは美容のスキルを採り入れたデイサービスを開設することにした。
開所時から通っている檜作(ひづくり)美和子さん(82)は「一番大事な足のリハビリもできて、年を取ってもきれいでいたい気持ちを大切にできて、一石二鳥なの。来るのが楽しみ」とほほえむ。
佐藤さんは、デイサービスなど高齢者向けの事業と、保育所やシェアハウスといった若い世代向けの事業を合わせた新施設も計画している。「介護職のイメージを高め、多世代をつなぐ場所を創造していきたい」と意気込む。(関宏美)