これは暴走族の車両ではありま
せん。別物。
私のローティーンからハイティーン
の時代、日本には本物の暴走族がい
た。というか、本物しかいない。
78年12月某日には新道交法改正の
抵抗集会も開いた(CRSのうちのス
ペクター)。
晴海事件の時程ではなかったが、
かなりの人数が某所に集結した。
新道交法施行直後なので、シビア
で、恐れて集まらない奴らもいた
が、参加した奴は腹を括って参加
した。検挙されれば確実に免飛び
だし、よくて保護観、悪くて鑑別
所行きだ。だが、日和らない奴ら
はかなりの数が集結した。
私の時代は本物の暴走族だった。
サタデーナイトは街道は1チームで
200台の二輪と400台の四輪のテール
ランプで埋め尽くされる。
それが何チームも都内の深夜の街道
を席巻していた。数万の若者が土曜
の夜の集会に参加していた。
その後、時は流れ、なんだか暴走し
ない人たちが、ミョウチクリンな姿
に四輪車や二輪車を仕立てあげてチ
ンタラと走るようになった。
ただ単に音だけやたらでかい。
本物の頃の仕様は、基本的には四輪
はサーキットでも走れるような仕様
だった。二輪ではセパハンやクール
スハンドルと呼ばれた軽くアップし
て真下にドカン下りのハンドル、
4ストは集合管だった。2ストで集合
にするのは遅くなるからカッペと
バカにされるのでやる者は少ない。
基本仕様の根幹は「爆走」する為の
仕様だった。
環七、環八、ルート20、246の巡行
速度は120km/h前後だ。
それを極めて車両間隔を詰めて走行
し、時にTON-UPも行なった。
大集団の大爆音なのだが、速度が速
いので通り過ぎるのは一瞬だ。
まあ、羽田空港に着陸する旅客機の
ような音の集団が走り抜ける。
で、その本物たちが潰えた後。
関東ではチバラキと呼ばれた東京で
はバカにされていた地域から、実に
ミョウチクリンな仕様の車両が登場
し始めた。ダサイタマは東京に準じ
ていたので発生は見られなかった。
その珍奇なチバラキの仕様は、高速
度走行不能確実の二輪のアッパーカ
ウルと竹ヤリのような四輪車のエキ
パイとフロントの出っ歯。
意味わかんねえ。
そんな仕様で暴走などできる筈もな
いのだが、案の定、二輪も四輪もた
だチンタラ走って騒音を撒き散らす
だけの珍妙なる集団だった。
しかし、その珍走団が全国に普及し
た。
世間はそれを「暴走族」と称した。
やめてくれ。
暴走しないじゃないか。
鹿を見て馬だ馬だと言うような事は
よしてほしい。
で、エンジンを壊す「コール」なる
ものをやり始めた。
本物の暴走族はそれはやらない。
暖機の為のレーシング(空ぶかし)と
高速度域でのヒール&トゥやブリッ
ピングでの吹かし、警告での空ぶかし
はやるが、空ぶかしの為の空ぶかしと
いうのはやらない。ましてエンジンを
いじめて連続空ぶかしでリズム出し
を競うなんてクソバカな事は暴走族
はしない。暴走とは関係ないから。
かくして、本物の暴走族はその後どう
なったかというと、大別して以下の
現象が見られた。
一、サーファーになった(これまじ)
一、走り屋になった(ララバイ系)
一、ニセモノたちの登場を陰で
せせら笑いながら、一般人に
潜り込んで何食わぬ顔で生活
して隠密化(いわゆる卒業)
一、本物の極道になった
そうして、ララバイ系はかつて自分
らが集会で賑わせた埠頭を走るよう
になり、あるいは峠を攻めるように
なった。
その基盤に新たな80年代バイクブー
ムで誕生した新人たちが加わり、走
り屋の層が形成されて行った。
警察が峠族の事を「暴走族」と規定
しているのは正しい。ちゃんと暴走
するからだ。走り屋は埠頭や峠をと
んでもない速度で走る。
しかも、従来無かった「集団競争型」
を生み出した。
ただ、違っていたのは、同じ反社会
的な事をするにしても、ツッパリと
いう不良少年のスタイルは脱してい
た事だった。
ごく普通のジャニーズのような髪型
でごく普通の高校生、大学生のよう
な容貌の若者が峠や埠頭を攻めてい
た。反社会的違法行為を外見上は
真面目君のような者たちがやって
いた。
だがしかし。
その走り屋の世界にも珍走系が80年
代末期から参入してきた。
ヘルメットに変な猫耳を着けたり、
尻尾をつけたりして、走りではない
部分で目立とうとする者たちが登場
した。
さらに、レースでもないのに「レー
シングチーム」と称して群れ始めた。
これが私より10才程下の世代。
チームのTシャツを作ったり、車両
にゼッケンを貼ったりしていた。
そして、現代のハンドルネームに
繋がる意味不明なニックネームで
呼び合っていた。自分に「クン」
や「さん」付けするバカ風習はここ
らから。
彼らはローリング族と呼ばれた。
彼らの走りには不思議な現象が現れ
た。
ギャラリーがいる一つの見物コーナ
ーだけが重要で、そこでどれだけ
目立つかのみが主要目的だった。
区間を決めての区間タイムを競う
イニDのような走り屋とは別な種族
だった。
要するに竹ヤリ出っ歯天井カウルと
全く同種で、速く走る事などは二の
次を目的とする集団だった。
ローリング族が蔓延し始めた頃、
走り屋たちは峠や埠頭から去って
行った。
走り屋たちはどこに行ったか。
大別して二つに分かれた。
一、サーキットで本格走行の世界へ
一、走るのをやめた
その後、公道の暴走族にはドリフタ
ーズという新ジャンルの集団が登場
した。
これも速さではなく、四輪でドリフト
をいかに決めるかだけを目的とした
走行であり、「走り屋」ではない。
今いえることは、四輪の竹ヤリ出っ歯、
二輪の天井カウルに爆音コール。
これらは「暴走族」の仕様ではなく、
それをやっているのは本物の「暴走
族」ではない、という事。
カフェに行かないカフェレーサーが
嘘モンのナンチャッテであるように。
世の中ニセモンは実に多い。
真剣日本刀を腰にしていながら、畳
表一つ切れないくせに剣士になった
つもりの奴とかね(笑
船に乗れない船長さんなんていない
のよ。
料理作れないシェフとかさ。
ニセ剣士も、まあいうなれば竹ヤリ
出っ歯の天井カウルで暴走族だと
勘違いしてる連中と一緒なわけ。
事の善し悪しはともかく、本物は
本当の事をやるから本物なのよね。
本物の暴走族は車両で暴走する。
剣士は剣を自在に扱える。空気斬り
のエアではなく。
本物とニセモノ。
結構ね、パッと見て判るものなのよ。
最近では政治屋に多いね。
リーダーぶってる求心力無い奴とか、
口先だけの真っ赤なニセモン。
まあ、霞ヶ関と永田町なんてのは、
そんな化け物屋敷なんだけどさ。
まがいモンだらけの棲息地。
日本よどこへ行く。