ウイスキーに詳しくない人が、各銘柄の値段を比較していったときに、シングルモルトウイスキーの方がブレンデッドウイスキーよりも高級で高品質ではないか、と思う人はいるのではないでしょうか。

しかし実際にどういう原酒が構成されているかを見ると、それが正しくないことが理解できるはずです。

シングルモルト

_DSC3594_01シングルモルトは、単一の蒸溜所で作られるモルトウイスキーを使っていることが特徴となっています。
ただし、蒸溜所自体が1種類のモルトウイスキーを作っているわけではありません。

比較的大きな蒸溜所になると、ポットスチル(単式蒸留器)を複数種類設置し、同じもろみでも別々のポットスチルを使って蒸溜、貯蔵することがあります。

また、もろみにしても大麦麦芽を加熱するモルティングという工程で、ピートを使わない、あるいはピートの量を変える、フェノール値の異なるピートを使うなどして複数種類を用意します。

さらに貯蔵する樽も、ホワイトオークの新樽、あるいは中古樽、元々バーボンやシェリー酒、ワインなどに使っていた樽を再利用する、樽材もホワイトオーク以外にミズナラ、杉を使うこともあります。

そうして作られた複数種類のモルト原酒をブレンド、あるいは一種類の原酒のみを使って、シングルモルトウイスキーができあがります。

こうした工程を経ても、蒸溜所ごとに個性の違うボトルが生まれます。それらはブレンデッドウイスキーに比べて比較的癖の強いものが多いです。
極端な例で言えば、ブランデーを思わせるほどのブドウの香りが強いマッカラン、そして正露丸のような薬臭さが強いラフロイグというものがあります。

シングルモルトウイスキーの値段の高さは、高品質であるよりも、単一の蒸溜所でしか作られないために生産量が限られ、希少性から需要過多に傾きやすく、値段がブレンデッドよりも割高になります。
さらに限定ボトル、使用する原酒の数が少ないもの、そして単一の樽の原酒のみを使ったシングルカスクとなる度に、値段は上がっていきます。

ブレンデッドウイスキー

_DSC3600_01一方でブレンデッドウイスキーは、複数の蒸溜所からモルト原酒、グレーン原酒を買い取る、もしくは自社の複数の蒸溜所の原酒を集め、個性を強く出し過ぎず、なるべく均一な香りや味を保って大量生産できるようにブレンドを決めて作られます。

そのため、シングルモルトに比べると複雑な香り、味わいを得ることも可能であり、ものによってはシングルモルトを上回ることも可能です。

ブレンデッドスコッチウイスキーとして有名なバランタインに於いては、扱われる原酒の数は40種類以上と言われていて、その手間のかけ方の半端なさがおわかりいただけるでしょう。

上記のように、複数の原酒をブレンドすることによって、扱う原酒の総量もシングルモルトの数倍になるので、基本的に需要過多になる恐れが少なく、価格も比較的安くなります。

バランタイン12年やジョニ黒(12年)が2000円台で販売されるのに対して、12年もののシングルモルトが倍以上の値段になるのは、そう言った理由があるのです。

まとめ

ウイスキーファンがブレンデッドよりもシングルモルトを好むのは、高級、高品質という理由よりも、蒸溜所、銘柄によって様々な個性があるからだと言えます。
逆に香りが複雑で豊かで熟成感のあるウイスキーを望むのであれば、ブレンデッドから選ぶ方がいいでしょう。