すみっコ仕事人インタビュー 第3回 日本コロムビア株式会社

第3回


日本コロムビア株式会社

すみっコぐらしに関わる仕事を語ってもらう「すみっコ仕事人」も3回目です。

これまでにサンエックス、アガツマとインタビューしてきましたが、答えてくれたのはどこか「すみっコ」感がある人々でした。

ですが今回話を聞いたのは、「集合写真では必ず中心にいるタイプ」だというポジティブな人。ニンテンドー3DSとNintendo Switchのすみっコシリーズを手掛けている日本コロムビアのゲームプロデューサーです。

ポジティブなすみっコ好き。少し意外な印象でしたが、すみっコとの長い付き合いがあるため、その愛は相当なもの。どれほどの情熱を傾けて作っているのかなどを聞いてきました。(すみっコぐらし学園認定記者・朝日新聞社 影山遼) 影山遼 自己紹介

――今回は、2021年2月に移転したばかりだという東京都港区のオフィスに足を運びました。取材した会議室の隣には、バランスボールの置かれた部屋があるなど「今風」な感じが出ています。


インタビューに対応してくれた人と、これまでに世へ出たゲームを紹介します。

島田良尚さん:エグゼクティブ・プロデューサー。他に、ゲーム・ビジネスユニットのリーダーなど、肩書は多数。学生時代はジャーナリズムを学び、物を書く職業を志望していたところ、縁あってゲームのシナリオを書くアルバイトに。そのまま、ゲームの開発会社に就職し、プランナーを経て、ゲームメーカーのプロデューサーとなった。下記のゲーム以外にも、主に子ども向けのゲームソフトを数多く世に出している。

すみっコ仕事人インタビュー 第3回 日本コロムビア株式会社

【ニンテンドー3DS】
①すみっコぐらし ここがおちつくんです
②すみっコぐらし おみせはじめるんです
③すみっコぐらし むらをつくるんです
④すみっコぐらし ここ、どこなんです?

【NIntendo Switch】
⑤すみっコぐらし すみっコパークへようこそ
⑥すみっコぐらし あつまれ!すみっコタウン
⑦すみっコぐらし 学校生活はじめるんです
⑧映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ ゲームであそぼう!絵本の世界
⑨すみっコぐらし おへやのすみでたびきぶんすごろく

すみっコ仕事人インタビュー 第3回 日本コロムビア株式会社

――最初に、どのような仕事をしているか簡単に教えてください。

島田良尚さん(以下、島田):プロデューサーという立場で、どんなゲームにするかの全体像を決め、年に4〜5本のタイトルを作っています。

実際にプログラミングなどをするのは外部の開発会社のスタッフに任せています。優秀なスタッフがそろっているため、自分の仕事としては、キャラクターの扱い方などをチェックするくらいで、後は現場がやってくれている状態です。

――すみっコシリーズは長く続いています。一番初めは、どのような流れでゲームを作ることになったんでしょうか。まだすみっコの認知度もそこまで高くない時期ですよね。

島田:長くゲーム業界で働いていますが、これだけの数同じキャラのゲームを作ったのは初めてです。

1作目を発売したのは2014年の冬。その前から、サンエックスと一緒に仕事をしており、「まめゴマ」を皮切りに「きれいずきん生活」「モノクロブー」など何作もゲームを作っていたところで、「そろそろ新しいキャラを」と相談に行ったのがきっかけです。

実は、すみっコとは別のキャラクターを念頭に相談したのですが、サンエックスから逆に提案されたのが「すみっコぐらし」でした。

――2014年というと、すみっコが世に出てからまだ2年のことですね。島田さんは可能性を見いだしたということでしょうか。

島田:サンエックスも「まだ未知数のキャラ」というような感じでしたが、個人的には「これは成長しそうだ」と感じ、作ることを決めました。ですが、(日本コロムビア)社内でも当時はすみっコの存在を知っている人がおらず、「このキャラ、大丈夫なの」と心配されることもありましたね。

さらに、どんなゲームにするか、企画をまとめるのにとても難航しました。国内でも指折りのゲーム開発会社数社に相談しましたが、どこの会社の提案もなかなかしっくりしたものがなく、半年以上悩みました。

――どんな点が難しかったのでしょうか。

島田:今でこそ映画(とびだす絵本とひみつのコ)がありますが、当時はすみっコといえば平面(2D)の静止画のみ。正面から見た時と横から見た時で姿が変わるので、立体のイメージが作りにくく、かといって、平面のイラストで構成したゲームではインパクトが弱い。さらには、ゲームのキャラとしては色々な動きを活発にさせたいけれど、動かしすぎるとすみっコらしさが薄れますし……。難しい点は挙げればきりがない状況でした。

(原作者の)よこみぞさんや(1回目に登場したサンエックスのデザイナーの)笹沢さんからは、せっかく3DSで出すなら3Dにしてほしいと要望され、そこは譲れないなと考え、最終的には、古くから付き合いのある札幌の開発チームと一緒に作ることになりました。

最初は、キャラの表現手法など悩む点が多かったですが、今は、ほとんどのタイトルをこのチームに任せているため、メンバーも根っからのすみっコのファンたちばかりで、「すみっコらしさ」にこだわって作っています。

すみっコ仕事人インタビュー 第3回 日本コロムビア株式会社

――苦労の末、発売に至りました。どのような反応があったのでしょうか。

島田:まだゲーム業界のほとんどの人が「すみっコぐらし」という存在を知らない時代でした。ゲーム業界とファンシーなキャラグッズの業界って、近いようで、案外遠いんです。ゲーム店ではファンシーなキャラはあまり売っていませんでしたし、逆も似たような状態でした。なので、このキャラのゲームが人気になるのかどうか、みんなが心配していました。

しかし、売れ行きは好調でした。ゲームとしての評価も高く、定番商品の価格を抑えて再発売する任天堂の「ハッピープライスコレクション」に入れてもらえるほどになりました。

続く2作目からは、(1回目に登場したサンエックスのプランナーの)大竹さんやデザインチームに、ゲームの内容をよく相談するようになりました。どんなネタが入っていたら面白いか、よこみぞさんをはじめとして、みんなでランダムに出してもらい、できるだけゲームに生かすという形です。

また、ゆっくり歩くイメージのあるすみっコですが、すみっこをとる時は急ぐのだから、多少はダッシュしてもいいよね、という具合に、キャラ設定も相談しながら、ゲームに生かしやすいよう多少のアレンジを許してもらいました。

長い付き合いの中で、すみっコを大事にしているという私の心構えを信頼してもらい、ある程度まではサンエックスに許容してもらえる関係を作れたのが良かったかな、と思います。

その結果、1作目は部屋の中から始まり、2作目はゲームと親和性の高いお店づくり、と順調に進み、3作目では、すみっコたちが村を作ったら面白いかな?と畑づくりなどの要素を採り入れ、4作目では、ついに冒険に出てもらいました。どこまでアクティブに動かして良いものか悩みましたが、結果的にお気に入りの作品となりました。かなり洗練されてきて、かつ、凝った集大成の作品になっています。

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――その後、ニンテンドー3DSからNintendo Switchへプラットフォームが変わりました。すぐにSwitchのゲームを着手されたのですか?

島田:基本的にゲーム業界では、新しいゲーム機が出てきた場合、そのプラットフォームメーカー(ソフトだけでなくゲーム機も自社で作る会社)自身が、新しいゲーム機のスペックを利用したお手本となるゲームを出し、続いて大手メーカー、次に中小メーカーがソフトを出すという流れがあります。

ですので、Switchが出た当初、私はもう少し後から始めようと、のんびり構えていたのですが、実際にはSwitchが登場してから相当早い段階で「すみっコパークへようこそ」を出すことになりました。ユーザー層を広げるために「すみっコぐらしのゲームを早く出してほしい」とプラットフォームメーカーから要望されたためです。

今でこそ、すみっコは年齢や性別を問わずに愛されていますが、ゲームというくくりで考えると、6〜12歳くらいの子ども向けの商品として選ばれてきたため、当時は、高校生以上が主な対象だったSwitchの年齢層に合わないのではないかと考えていました。

しかし、慌てて企画を考え、急ピッチで作った「すみっコパークへようこそ」は予想以上のヒット作になりました。

その後、「あつまれ!すみっコタウン」を経て、「学校生活はじめるんです」と映画に連動したゲームの2本を1年の間に出すという、業界にとっては「普通でない」こともやりました。同じキャラのゲームを同じ年に発売することは、人気が分散するので、あまり歓迎されないのですが、この二本はどちらも受け入れてもらえてヒットしました。

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――そもそも、ゲームとキャラという組み合わせは合っているのでしょうか。

島田:実はそうとも言えず、世界中で愛されている人気のあるキャラでも、ゲームには誰もしようと思わないキャラもいます。

例えば、身につける「ファッショナブルな」キャラはゲームにするのは難しい。一方、TVアニメのキャラは、ゲームとの相性は良いですが、そのアニメのファンに対象が限定されてしまいます。

そういう意味では、すみっコも最初はゲーム化が難しいキャラのように感じていましたが、今では子どもから大人まで一緒に楽しめ、愛されていると思います。(筆者注:ちょうど取材の日も、びっしりとメッセージが書かれた手紙が小学生から届いていました)

――なぜゲーム化に成功したのでしょうか。

島田:まず第一に、すみっコ登場後の早い段階で取り組めたことがあると思います。すみっコに対する世間の固定観念がなかったといいますか。もし仮に、長い歴史を持ったすみっコを突然ゲーム化していたとなると、それまでにできあがっていたイメージがあるので、「すみっコたちはこんなことしないよ!」という意見も出てきたんだろうなと感じます。

加えて、サンエックスの寛容さに助けられました。変にキャラの設定を守ろうとするのでなく、柔軟に考えてもらえたのが良かったです。

打ち合わせの回数を重ねていくと、むしろこっちが「すみっコ的に大丈夫ですか?」というような提案をもらうこともありました笑

あと、よこみぞさんが、ゲームに関しては私よりも詳しいということもありましたね。よこみぞさん、忙しいはずなのに案外ゲーマーのようで。私はゲーム業界で一番と言って良いぐらいプライベートではゲームをしないので、教えてもらうことも多かったです。

それでも、すみっコの基本的な世界観は崩してこなかったという自負はあります。掘れば掘るだけ、色々な話が出る主要な(?)5人(?)のバランスが良かったのもありますね。

――ゲームといえば毎回、応募した人全員へのプレゼントが魅力です。

島田:新作を出す時には、キャンペーンでプレゼント企画を毎回行っています。

途中までは「てのりぬいぐるみ」だったのですが、もうぬいぐるみはみんな持っているからもっと別なものを、と思い、「おきがえすみっコ」セットに変えた時期もありました。さらに、ぬいぐるみを持ち歩ける実用性があると良いかも、と「おでかけすみっコ」をオリジナルで作ったこともありました。2020年に発売した最新作では、ゲームの鍵となったキャラのてのりぬいぐるみに戻りましたけれど。

毎回、どんなものが喜んでもらえるのかを考えるのは、結構大変です笑

こういった特典は、かなり採算度外視でやっています。送料もありますし。それでも、もらった人には喜んでもらえているので、これからも特典は続けていこうと思っています。

ちなみに私は、ふくろうのてのりぬいぐるみが気に入っています。かわいいですよね。

また、ご存じの通り、日本コロムビアは音楽がメインの会社です。

なので、ゲームのテーマ曲として「すみっコぐらしのうた」などを作らせてもらいました。サンエックスから公式ソングの扱いをしてもらっているのはうれしい限りです。

よこみぞさんや笹沢さんにも打ち合わせやレコーディングに立ち会ってもらい、歌詞がキャラと合ってるかどうかや、発音(みにっコ↑なのか、みにっコ→なのかなど)のチェックをしてもらいました。

すみっコ仕事人インタビュー 第3回 日本コロムビア株式会社

――今後はどのような展開をしていきますか。

島田:今は映画第2弾(映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ)に連動したゲームの開発をしています。

また、今はまだ詳しくお話しできませんが、2022年には新しい企画のゲームを、と考えています。これまでのシリーズとは違った魅力のあるゲームになると思うので、ご期待ください。

シリーズがここまで続けられると最初は思っていませんでしたが、いまだにネタが尽きないのはうれしいです。すみっコは、昔発売したソフトも定番商品として長く販売してもらえるので、ありがたいです。

すみっコの普及には責任感も感じています。うちはスタッフが多くないので、あまり大きく手を広げられませんが、すみっコとはじっくり大事に付き合っていきたいと思っています。これからも、サンエックスを含め、しっかりコミュニケーションをとることを大事にしていきたいと思います。ただ、リモートが多く、直接顔を突き合わせて話せないのが悩みです。

――話は変わって、ゲーム業界に適しているのは、どのような人でしょうか。

島田:プログラマーやCGデザイナーなどの技術職を目指すのであれば、ゲームの専門学校などで勉強して、となるかと思います。

一方、プランナーやディレクター、さらにプロデューサーを目指すなら、専門学校も良いですが、アルバイトでも何でも、とにかくゲーム以外の様々な経験をした方が良いと考えます。

ゲームが好きかどうかはあまり関係ないですね。先ほども言ったように、業界屈指のゲームしない人間の私でも、何とかなっていますので……。

プランナーとしては、人とのコミュニケーションが好きな人が強いです。この人についていけば安心だなと思える人物に、私もなりたいと思っています。

――最後になりますが、推しすみっコを教えてください。

島田:ざっそう、一点推しです。すみっコには珍しいポジティブなポジション。ブーケになれると信じて疑わない前向きな姿勢が好きですし、すみっこにいないのも共感できます。私も、目立ちたがりというわけではないのですが、集合写真を撮る時などは、自ら真ん中に立って映ります。誰かが真ん中に行かなければ写真が成り立たないと思うので、気づけば真ん中に立って、みんなを集めています。

――少し内向きなすみっコとはまた違ったタイプの人が作るからこその魅力もあるような気がします。色々なタイプの人が愛してくれるのがすみっコぐらしの面白いところですね。次の特典は何になるのか、自信作の2022年のゲームはどんな内容なのか。私も教えてはもらえなかったので、読者のみなさんと一緒に情報解禁を待とうと思います。

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