今回は、私が見つけたわけでもわざわざまとめるものでもなさそうですが、忘れないために記事にしておきます。山田太郎と統一教会の繋がりについてです。

発端

 ことの発端から整理しておきましょう。発端は青識亜論が言いだしっぺの署名もどき『全国フェミニスト議員連盟宛抗議と公開質問状』です。ここには地方議員に加え、AFEEと見慣れない団体―「一般社団法人一国民の会」が賛同していました。この一国民の会の渡瀬裕哉という人物が問題です。

 一国民の会というのは、名前から大体想像できるように、極右的な思想を持つ政治団体です。一国民の会のHPを見るとそのことははっきりします。事務局長の名嘉眞要はメッセージとして『なぜ特攻隊の若者たちは、自らの命を懸けてくれたのでしょうか?』と書いていますが、特攻が特攻隊員による自発的なものであると理解するのは歴史修正主義的な極右だけです。

 なお、一国民の会の販売する動画には荻野稔が出演しているものもあります。この会があの「署名」に名前を連ねているのは、そちらの繋がりのためでしょう。ついでに言えば、音喜多駿の出演動画も販売されています。

一国民の会の正体

 さて、ここまででは、一国民の会はただの歴史修正主義的な極右団体というだけです。まぁ、この時点ですでに致命的だと思いますが、残念ながらそうは思わない人のほうが多いでしょう。

 もちろん(?)、話はこれだけでは終わりません。一国民の会の代表である渡瀬は、同時に、ワシントン・タイムズ・ジャパンのエグゼクティブプロデューサーでもあります。ワシントン・タイムズ・ジャパンはワシントン・タイムズの日本語版ウェブサイトになりますが、そもそもワシントン・タイムズはアメリカで文鮮明―統一教会のトップが創刊した新聞です。そして、ワシントン・タイムズが日本語版ウェブサイトを始めるにあたって提携した世界日報も統一教会の機関紙です。

 ですから、渡瀬はバリバリの統一教会関係者であると判断できます。

 念のために付言しておけば、統一教会は反社会的カルトと断定して過言ではない組織です。かつては合同結婚式などが批判されましたが、現在においても信者への人権侵害などが問題となっています。アメリカにおいても、トランプ政権を強く支持し銃を所持する権利を主張するほか、宗教集会に重火器を大量に持ち込み会場となった地域の住民とトラブルにもなっています。

山田太郎と統一教会

 そして、ここからようやく山田太郎が出てきます。渡瀬は2019年にJapan-US Innovation Summit 2019というイベントで基調講演をしているのですが、この講演には音喜多とならんで山田太郎も登壇しています。フライヤーを見れば一目瞭然でしょう。山田太郎と統一教会には繋がりがありました。

 ということを書くと「山田太郎はイベントに参加だけ」とか「知らなかっただろう」などという擁護も出てきそうなので、先に潰しておきます。そもそも、渡瀬が統一教会系の人物であることは、この講演がワシントン・タイムズ・ジャパンの紹介を行うという体で宣伝されていることから明白です。ワシントン・タイムズ=統一教会という図式にすら気づけないのであれば、国会議員としての情報収集能力に疑問がつきます。

 また、そもそも、本当に表現の自由のために活動しているのであれば、主義主張が一切相いれない統一教会の関係者と接触する機会も少ないであろう上、イベントへの登壇を依頼されることもあり得ないはずです。山田太郎がこのイベントに登壇できたということそれ自体が、彼の主張する表現の自由が統一教会にとって都合の悪くない程度のものにすぎないことを示しています。

 なんにせよ、山田太郎が表現の自由を守るというお題目はますます怪しくなったと考えてよいでしょう。

ついでに:荻野稔と白饅頭と幸福の科学

 ついでに、別のカルト人脈もメモっておきましょう。山田太郎が登壇したJapan-US Innovation Summit 2019は「日本政策学校」という組織に講演されていましたが、この組織はかつて荻野稔と白饅頭との対談イベント『おぎの白饅頭トークイベントVol.10一年間お疲れ様スペシャル』も共催していたようです。

 この時点で日本政策学校が碌でもない組織だと結論できますが、それだけではありません。この団体の理事長である上田博和は幸福実現党の党首である釈量子と対談を行っています(『「二宮尊徳精神が日本を変える」~日本政策学校理事長・上田博和×釈量子(未来対談vol.2)』)。

 故に、日本政策学校はカルトと繋がりのある組織、あるいは少なくともカルトと繋がっても気にしない程度の倫理観の組織であるということができます。そうした組織に協賛されてイベント行う荻野稔と白饅頭が碌でもないことは論を待ちません。

節操のない極右人脈

 ところで、ここまでの事実を辿ると1つの奇妙なことに気づきます。それは、荻野稔が日本政策学校を介して幸福の科学と統一教会の両方に繋がっているということです。日本政策学校も、統一教会のイベントであったはずのJapan-US Innovation Summit 2019を後援しています。これはどうしたことでしょうか。統一教会は文鮮明を「お父様」とする宗教で、一方の幸福の科学は大川隆法を頂点とする宗教ですから、当然相いれないはずです。

 これはおそらく、統一教会にせよ幸福の科学にせよ、それぞれで繋がっている極右政治家・政治活動家の大半は、あくまで緩く宗教組織と繋がっているだけであるということなのでしょう。後援してもらい金ももらうが、別に教義を信じているわけでもなく、宗教側もそのことに期待はしていないという緩やかな紐帯です。

 不思議なことに、統一教会と幸福の科学には「極右(あるいは反共)」という共通点があります。この共通点を起点に、極右的な主張を躊躇わない政治家と繋がっているのでしょう。

 能川元一氏はかつて、同じ雑誌に歴史修正主義的ながら相反する主張が平気で併存するということを指摘し、極右論壇のいい加減さを看破しました。宗教的に相いれない組織が政治的には結託するというのも、このようないい加減さの類型ではないかと思われます。

 厄介なのは、こうした組織が「金は持っている」という点です。現在、デマによる異様ともいえる共産党への攻撃も行われていますが、こうした潮流とも無関係ではいないでしょう。

 彼らは当然、表現の自由のことなんか1ミリも考えていません。そもそも自由や人権を軽視している人たちですから当たり前です。そうした組織と繋がりながら表現の自由を謳う空疎さに、せめて我々は気づかなければなりません。