自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)で禁錮5年の判決を言い渡された飯塚幸三被告(90)が、「判決を受け入れ、罪をつぐないたい」と話し、控訴しない意向であることが分かった。検察側も控訴しない見込みのため、16日の控訴期限を過ぎれば、実刑が確定する。
飯塚被告と面会したNPO法人の代表が、被告の近況について語った記事を特別公開する。(初出:週刊文春2021年9月16日号、年齢、肩書等は掲載時のまま)。
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9月2日、判決公判に姿を現した「池袋暴走事故」の飯塚幸三被告(90)は、頭に傷を負っていた。加害者家族の支援を通じ、飯塚被告と面会したNPO法人・ワールドオープンハートの阿部恭子代表が語る。
「自宅で転倒して、頭を切ったんです。事故以降、この2年で体調がずいぶん悪化しているようで、家で転倒することも増えています」
飯塚被告の過失を認め、禁錮5年の実刑判決
東京・池袋で飯塚被告が運転する車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女・莉子ちゃん(同3)が死亡、9人が重軽傷を負ったのは2019年4月。東京地裁はブレーキとアクセルを踏み間違えたと過失を認定、禁錮5年(求刑・禁錮7年)の実刑判決が言い渡された。
旧通産省の工業技術院長を務めた飯塚被告は「逃亡や証拠隠滅の恐れがない」ことを理由に逮捕されず、在宅起訴のまま捜査や審理が進んだ。このため「上級国民は特別扱いか」などと批判が噴出。住居である都内マンションの住民が語る。
「病院から退院した後、数カ月間は両手で杖をつきながらマンション内を歩く姿を見かけました」
街宣車、脅迫状、爆破予告…
飯塚被告は事故後、「アクセルから足を離したが、ペダルが戻らなかった」、「安全な車を開発するように、メーカーの方に心がけていただきたい」と発言。無罪を主張し続けたため、さらに世間の怒りを買った。
「公判などの節目のたびに、マンションの前に街宣車が何度もやって来て、『罪を認めろー!!』『反省しろー!!』と大音量で叫んでいました」(近隣住民)
前出の阿部代表が語る。
「自宅には脅迫状などが届き、マンションへの『爆破予告』もありました。近隣の住民に迷惑がかかるため、警察にも相談したとのこと。飯塚さん本人も精神的なストレスをかなり受けていたようです」
こうした状況に、飯塚被告の家族は「正直、逮捕してもらいたかった。早く拘束された方が命の心配もない」と話しているという。