DaiGo氏が炎上した一連の発言のなかで、図らずも正鵠を射ている事実がある。実際に世間の人びとは、ホームレスよりも猫の方により同情を向け、慈悲を注いでいるということだ。
かわいそうな猫のためであれば、人びとは心をつき動かされる。東京大学で行われている猫の治療薬開発のために、ほんのひと月で1億7000万円を超える多額の寄付金が集まった一件はニュースでも大きく取り上げられ、ネットでも話題となった。
一方で、ホームレス支援団体の最大手である「ビッグイシュー基金」の2019年9月1日~2020年8月31日の1年間における会員費・寄付金・助成金を合算した経常収益は6926万円である(雑誌「ビッグイシュー」の販売収益は含まない)。猫が数週間で集めた金額の半分に満たない額を、ホームレス支援団体は1年かけてようやく集める。
人びとは愛らしい猫には深い愛情と同情心を抱くが、道で寝そべる人には同情しない。カネを与えるどころか一瞥もくれず、それこそ「街の風景」のひとつであるかようにかれらの存在性や実存性を消去して、その前を足早に通りすぎる。
DaiGo氏の一連の言動はまさしく差別や蔑視である。しかしだからといって、その発言内容それ自体が棄却されるかどうかは別の問題だ。むしろ、これをある種の「事実の適示」として見たとき、私たちの社会の否定しがたい一側面を言い当ててすらいるだろう。私たちは実際に「ホームレスより猫の方がかわいそうだし、大事だ」と思ってしまう、「素朴な人情」を持っているのだから。
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