胸騒ぎ
ちょっと短め。キリが悪いので………前回のところにブチ入れた方がキリは良かったかもと、後の祭りな事を考えました。
わたくしは、一人で復讐をしたかった。
あの男たちを地獄へ突き落したかった。
誰でもない、自分自身の手で。
相変らず愚図でポンコツなわたくしは、お父様を辱めた奴らを手打ちにすることすらできない。
変わらなきゃ、変わりたいと願ったのに。
わたくしが主導を握り行うべきなのに、その意思に、その感情に、肉体が付いていかない。歯がゆくてもどかしい。
ジュリアスが敏いのは知っていた。昔から、わたくしの状況を、考えを、お願いを、必要な事を全て察し整えてくれていた。
もともと、お父様がその為に付けた従僕なのだから、当然と言えば当然なのかもしれない。
それはキシュタリアやミカエリスも同じで、わたくしを無下にすることなんて一度もなかった。
分かっていました。
わたくしはちっぽけで、着せられた身分という衣装に振り回されている。
だから三人を巻き込んだ。
わたくしの願いが全て叶うネバーランドは、ラティッチェという箱庭の中だけ。
外に出れば無力で無知な子供だ。
わたくしの拙い復讐の刃は、お父様を辱めた連中にしっかりと突き刺さるとは限らない。振り下ろして空振りになることだって、十分あり得た。
どんなに重く鋭い一撃でも、当たらなければ意味がない。
だが、あの三人から繰り出される刃を全て避けきるのは至難の業だろう。
優秀とはいえ、まだ若い三人。
スクロールによる契約は三人を間違いなくわたくしの駒として引き込むと同時に、力を付けさせるためでもあった。
次期王配となれば、多くの貴族が彼らの下に付くだろう。それぞれ思惑はあるかもしれないが、派閥という重装甲があればおいそれと淘汰されないはず。
わたくしの喪が明けてから、本格的な争いが始まる。
だからこそ、ミカエリスは敢えて戦果で箔をつけるために危険な場所へ赴いた。
キシュタリアはラティッチェの当主となるために尽力している。
ジュリアスは後ろ盾を得るため、フォルトゥナの養子となった。
あの三人は、それぞれ軍部や騎士、古くからいる旧貴族、新興貴族に顔が広い。
それぞれにそれぞれのパイプを持ち、強い勢力を作る基盤がある。
彼らに掛かれば、愚鈍なマクシミリアン侯爵家などどうってことないはずだ。
わたくしは、そんな『どうってことない』人間にすら振り回されている。一番身分が高いのに、完全に宝の持ち腐れだわ。
……帰ってくる。ミカエリスが、キシュタリアが。ジュリアスが、そういっていた。
そろそろ、でももうすぐでもなくちゃんと確定的な日を示したのだ。
揃う、久々に。
嬉しいし、安堵する。だけれど、どうしても胸騒ぎがする。
読んでいただきありがとうございました!
ブクマ、評価、コメント、レビューありがとうございます!
大切に読ませていただいております。