いえ、登米には実際にいらっしゃるのです。
「おかえりモネ」で医事考証をつとめる医師・田上佑輔さんです。
2021.09.10第17回 登米の医療とドラマをサポート! リアル“菅波先生”
こんにちは! ライターZです。
東京の大学病院を離れ、登米の診療所に専念することを決めた菅波先生。
ヒロイン・百音(愛称:モネ)とのことなど、ますます気になるところですが、そもそも、医師が東京と登米を行き来するという菅波先生のスタイルは「ドラマの設定でしょう?」と思っていませんか?
2013年、登米に在宅診療所を開設し、東京や仙台など都市部に住む医師が、地方と行ったり来たりしながら医療をサポートする仕組みを各地に広げてきました。
それだけではなく、住み慣れた地域で生き生きと暮らしていけるよう、健康相談やイベントができるカフェも設置したのです。
ドラマにもカフェが出てきますよね!
ドラマを支える「医事考証」とは
田上さんのことが気になると思いますが、まずは「医事考証」についてお話ししましょう。
医療に関わる言葉や器具など、不自然なことがないようにチェックするのが医事考証の役割です。
具体的なシーンでは、「アイスクリーム頭痛」という医療用語、車いすマラソンの鮫島選手の深部体温に関するデータ、血圧や体温といったバイタルサインのチェックの仕方などがあります。
さらに撮影に立ち会い、役者の動きにも目を配ります。
田上さん:医者は聴診器を使う時も、患者から目を離すことはありません。でも慣れないとつい聴診器を見てしまうので、それをアドバイスしました。ほかにも患者の背中をさするシーンでは、手を丸めて優しくなでるようにするとか、患者への声のかけ方とか、細かい所作を指導しました。
ライターZ:ドラマの医事考証を担当するのは初めてだそうですが、どんな思いでドラマを見ていますか?
田上さん:撮影では、指導したシーンを断片的にしか見ていないので、「あのシーン、ここで使われるんだ」とか、楽しみながら見ています。
でも自分のことより、登米のみなさんが喜んでくれているのがうれしくて、関われてよかったと思います。
医療を通じて、地域に新しいストーリーを
田上さんが登米に来るきっかけになったのは、東日本大震災時の医療ボランティアです。
田上さん:もともと、東京の大学病院に勤めていて、アメリカで手術の道を極めようと思っていました。その一方で、社会で困っている人のために何かしたい、でも東京にはいろんな医者がいて、自分の存在価値や役割を見いだしにくい…そう思っていた時に宮城に来て「自分を必要としてくれる人たちがいる」と、気付いたんです。
医師不足といった地方の現状を知ることで、自分らしい働き方について考え始めた田上さん。
田上さん:新しいことをやりたい、学びたいと思っても、「地方ではチャンスが少ない」という声があります。そこに刺激を与えられたら、と思いました。
登米から外に出るばかりではなく、僕が東京と往復すればいい。そこから社会を変えるようなストーリーを生み出せるのではないかと考えたんです。菅波先生がモネちゃんに勉強を教えて、モネちゃんが刺激を受けたようにね。
そして誰かの行動が、次の世代のストーリー探しにつながってくれればと思っています。
実際、田上さんのまわりには「まちづくりに携わりたい」「こんなことに挑戦したい」という人が増えてきたそうです。
その刺激を与える場所の一つが、診療所の近くに開設したカフェ。
ドラマに出てくる、米麻町森林組合のカフェの雰囲気そのものなんだとか。
今は新型コロナウイルスの影響で集まる回数も減っていますが、工夫しながら勉強会などを開催しています。
田上さん:地元のみなさんの人柄に触れて菅波先生が変わっていくというのは、自分自身と全く一緒だと思いました。
最初、菅波先生は「わざわざ来てあげている」という雰囲気でしたが、登米で自分の存在価値を感じるようになり、やがてまわりの人に感謝するようになる。
そうすると、今まで出せなかった自分を出せるように変わっていく…そういうふうに「誰もが自分のストーリーを持っていていいんだ」というメッセージが、ドラマに描かれているのかなと思いますね。
ドラマが多くの人の刺激になることを期待している、田上さんでした。
次回もお楽しみに!