アンテナが劇的に小型化LUCASの登場により、こうしたメリットを持つ衛星間通信システムのさらなる高速大容量化が実現するが、山川氏によれば、“光化”の意義はあと2つある。
1つは、電波と違って傍受・干渉の可能性が極めて低いことだ。地上と通信した場合だが、こだまが使用していたKa帯の電波が直径60kmの範囲で補足・追尾が可能なのに対して、光は直径560m程度まで狭まる。
もう1つは、アンテナを大幅に小型・軽量化できることだ。こだまに搭載されていたアンテナは直径が3.6mもあったが、LUCASのデータ中継衛星用のアンテナは直径15cmと圧倒的に小さくなっている。低軌道衛星用のアンテナは直径10cmほどだ。
「小型・軽量であるほど打ち上げ費用を抑えられるし、他の機器と一緒に衛星へ搭載しやすくもなる」
このため山川氏は、JAXA以外の商用衛星での採用にも意欲を見せる。
こうした動きで先行するのは欧州だ。ESA(欧州宇宙機関)とエアバスのプロジェクト「Space Data Highway」は、光衛星間通信システムを使って、商用の観測衛星向けにデータ送信サービスを提供している。衛星間の通信速度はLUCASと同じ1.8Gbpsだ。
「欧州には5年ほど遅れたが、今年10月から11月に光データ中継衛星を打ち上げ予定のNASAには約1年先行できた。NASAの通信速度は1.2Gbpsで、そこでもわずかだが優っている」
低軌道コンステにも活用欧州と比べても、LUCASには有利な点があるという。
光通信に用いる光の波長に、地上の光ファイバー通信で使われている1550nm帯を意図的に採用していることだ。
「この波長の技術は、地上光ファイバー通信によって非常に発展している。Tbps化なども視野に入るなか、地上で確立された技術を宇宙へも持っていける。『eye-safe laser』と呼ばれるが、目で見ても比較的安全なレーザーで、製造や試験の際に扱いやすいのもメリットだ」
山川氏はこう説明したうえで、「1000nmを使用する欧州の技術も優れているが、将来性という意味では、我々の1550nmに分がある」と語気を強める。
JAXAが光通信と描く将来像の中には、SpaceXなどで盛り上がる低軌道衛星コンステレーションも含まれる。
図表2 光データ中継衛星の将来像

「LUCASは、約4万km離れた静止衛星と低軌道衛星の間でデータ送信する技術だが、もっと近い距離で10Gbps、100Gbpsで送りたいといったニーズも大きくなっている。低軌道衛星コンステレーションでも、光通信はキー技術になる。LUCASで獲得した技術をそうしたビジネスに展開していく流れもあると考えている」
低軌道衛星コンステレーションが宇宙通信の世界を大きく変えようとしている今、「非常に大きなインパクトを与える技術を、いいタイミングで開発できたと思っている」と山川氏は自信を見せた。

月刊テレコミュニケーション2021年8月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)