アフガニスタン・イスラム共和国

基礎データ

令和3年5月14日
アフガニスタン・イスラム共和国国旗

一般事情

1 面積

652,225平方キロメートル(日本の約1.7倍)

2 人口

3,890万人(2020年 世界人口白書)

3 首都

カブール

4 民族

パシュトゥン人、タジク人、ハザラ人、ウズベク人等

5 言語

ダリー語、パシュトー語(公用語)

6 宗教

イスラム教(主にスンニ派であるが、ハザラ人はシーア派)

7 略史

  • (1)長年の他民族による支配の後、18世紀半ばドゥラニ王朝が成立。バラクザイ王朝下の1880年、英国保護領となるが、1919年独立を達成。1973年に王制(アフガニスタン王国)から共和制(アフガニスタン共和国)に移行後、1978年人民民主党のクーデター(サウル革命)により社会主義政権(アフガニスタン民主共和国)成立。1979年ソ連の軍事介入のもとカルマル政権成立。1988年のジュネーブ合意に基づき、1989年駐留ソ連軍の撤退完了。1970年代終り頃から、アフガニスタン国内の混乱を逃れ、隣国のパキスタン及びイランに何百万人ものアフガン難民が流出した。
  • (2)1992年ムジャヒディン勢力の軍事攻勢によりナジブラ政権が崩壊、ペシャワール合意に基づく暫定政権(アフガニスタン・イスラム国)が成立するが、各派間の主導権争いにより内戦状態が継続。1994年頃から、イスラムへの回帰による秩序回復を訴えるタリバーンが南部から勢力を伸ばし、1996年首都カブールを制圧、1999年までに国土の9割を支配するに至った。2001年9月の米国同時多発テロ事件を機に、同年10月から米英主導でアルカーイダ及びタリバーンに対する軍事行動が行われ、11月「北部同盟」がカブールを制圧、12月までにタリバーン支配地域が奪還された。
  • (3)タリバーン政権崩壊後、2001年12月のボン合意に基づき、移行政権の発足、新憲法の採択・発布、大統領選挙、下院議会・県議会選挙に至る一連の統治機構整備プロセス(ボン・プロセス)を通じ民主化が進展。2014年にはカルザイ大統領からガーニ大統領への民主的な政権交代が実現するとともに、同年末、国際治安支援部隊(ISAF)からアフガニスタン政府へ治安権限が移譲。2020年2月米国とタリバーンの間で「和平合意」が成立し、同年9月アフガニスタン政府とタリバーンの間で初の本格的な和平交渉が開始。

政治体制・内政

1 政体

共和制

2 元首

モハンマド・アシュラフ・ガーニ大統領

3 議会

  • (1)上院(定数 102議席、県議会(任期4年)及び郡議会(任期3年)から選出される各34名と大統領が指名する34名(任期5年)により構成)
  • (2)下院(任期5年、定数250議席)

4 政府

  • (1)大統領:モハンマド・アシュラフ・ガーニ
  • (2)外相:モハンマド・ハニーフ・アトマル

5 政治・和平プロセス

月日 出来事
2001年 12月5日 国連の呼びかけによりドイツで開催されたアフガニスタン各派代表者会議において以下を内容とする「ボン合意」が成立。
  • 暫定行政機構、緊急ロヤジルガ(国民大会議)招集のための特別独立委員会、最高裁判所からなる「暫定政権」が12月22日に発足する。
  • 暫定政権発足後6か月以内に緊急ロヤジルガを招集し、「移行政権」の詳細を決定。
  • 移行政権発足後18か月以内に憲法制定ロヤジルガを招集。
  • 緊急ロヤジルガ開催から2年以内に新憲法に基づく選挙を経て、国民を完全に代表する政権を樹立。
12月22日 暫定政権が発足。暫定行政機構はカルザイ議長以下、副議長5名を含む30名の閣僚で構成。
2002年 6月11日~19日 緊急ロヤジルガ開催。カルザイ議長が移行政権の首班(大統領)に選出され、主要閣僚等の人事が承認。
2003年 12月14日~1月4日 憲法制定ロヤジルガ開催。民主的な手続を通じて新憲法が採択(2004年1月26日発布)。新国名は「アフガニスタン・イスラム共和国」。
2004年 10月9日 第1回大統領選挙。11月3日、カルザイ大統領当選(得票率55.4%)。
2005年 9月18日 第1回下院議会・県議会選挙。12月19日、議会開会(ボン・プロセスの完了)。
2009年 8月20日 第2回大統領選挙。11月2日、カルザイ大統領再選(得票率49.7%。対立候補のアブドッラー元外相が決選投票を辞退)。
2010年 9月18日 第2回下院議会選挙。2011年1月26日、議会開会。
2014年 4月5日 第3回大統領選挙(第2回県議会選挙も同日実施)。5月15日、1位アブドッラー元外相(得票率45.0%)、2位ガーニ元財務相(31.6%)との結果が発表され、上位2候補による決選投票へ。
6月14日 大統領選挙決選投票。7月7日、1位ガーニ元財務相(得票率56.4%)、2位アブドッラー元外相(43.6%)との暫定結果が発表されるが、投票不正疑惑を巡り混乱。ケリー米国務長官による仲介等を経て、9月21日、ガーニ候補の当選が確定。アブドッラー候補は行政長官に就任し、国家統一政府が成立。
2017年 6月6日 アフガニスタン政府主導で、和平について話し合う「カブール・プロセス」会合開催。2018年2月28日、第2回会合開催。タリバーンに対し無条件の和平対話を呼びかけ。
2018年 6月15日~17日 イスラム教の祝祭(断食明け祭)の機会にアフガニスタン政府とタリバーンが初の停戦を実施。
10月20日 第3回下院議会選挙(1県除く)。2019年4月26日、議会開会。
2019年 4月29日~5月3日 和平諮問ロヤジルガ開催。ガーニ大統領はタリバーンに停戦を呼びかけ。
9月28日 第4回大統領選挙。12月22日、1位ガーニ大統領(得票率50.6%)、2位アブドッラー行政長官(39.5%)との暫定結果が発表。アブドッラー候補は選挙の不正を主張し、結果受入れを拒否。
2020年 2月29日 米国とタリバーンの間で、アフガニスタン駐留米軍の条件付き撤退やアフガニスタン人同士の和平交渉開始等を内容とする合意が成立。同日、アフガニスタン及び米国両政府は、米国・タリバーン合意の内容を踏まえた共同宣言を発出。
3月9日 2月18日のガーニ大統領再選確定を受け、同大統領が二期目の就任式を行うが、アブドッラー候補も独自に「大統領」就任を宣言。
5月17日 ガーニ大統領とアブドッラー前行政長官の間で、包摂的な政府形成のための政治合意が成立。アブドッラー氏は国民和解高等評議会議長に就任。
9月12日 アフガニスタン政府とタリバーンの間の囚人解放プロセスの完了を受け、両者による和平交渉がカタールで開始。

外交・国防

1 外交基本方針

 欧米諸国や日本等の主要ドナーとの関係を基盤に、中国、インド、中央アジア諸国等周辺国との関係強化を推進。隣国パキスタンとの間では近年要人往来が活発化。

2 軍事力

  • (1)予算 19.1億ドル(2019年 ミリタリー・バランス)
  • (2)兵役 志願制
  • (3)兵力 18.1万人(陸軍:17.4万人、空軍:0.7万人)(同上)
  • (4)2015年以降、国際治安支援部隊(ISAF)の後継であるNATOの「確固たる支援任務」(RSM)がアフガニスタン治安部隊への訓練・助言・支援を実施。2021年4月、米国及びNATOは9月11日までの駐留部隊撤収を決定。

経済

1 主要産業

サービス産業、農業、建設業、鉱業・採石業等(2018年 アフガニスタン統計年鑑)

2 GDP

192.9億ドル(2019年 世界銀行、一人当たりGNIは530ドル)

3 経済成長率

3.9%(同上)

4 物価上昇率

2.3%(同上)

5 失業率

11.2%(2017年 ILO)

6 総貿易額

  • (輸出) 8.75億ドル(2018年 アフガニスタン統計年鑑)
  • (輸入) 74.06億ドル(同上)

7 主要貿易品

  • (輸出) ドライフルーツ(35%)、薬草(15%)、果物(11%)、鉱物(11%)、野菜(8%)等(2018年 アフガニスタン統計年鑑)
  • (輸入) 食品(31%)、石油(13%)、機械類(11%)、金属類(8%)等(同上)

8 主要貿易相手国

  • (輸出) パキスタン、インド、中国、トルコ、イラン、UAE、イラク等(2018年 アフガニスタン統計年鑑)
  • (輸入) イラン、中国、パキスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、日本、トルクメニスタン、インド、マレーシア、ロシア、UAE、タジキスタン等(同上)

9 通貨

アフガニー(AFN)

10 為替レート

1$=約79アフガニー(2021年5月時点)

11 経済概況

 アフガニスタン国内の不安定な治安状況が経済成長や投資等にも大きな影響を及ぼしている。2020年の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年の経済成長率は1.9%減(世銀)となり、2021年に人道支援を必要とする人口は1,840万人に上ると見込まれる(2021年1月国連OCHA)等、国内経済は引き続き非常に厳しい状況にある。

経済協力

  • (1)日本は、対アフガニスタン主要支援国として、2002年及び2012年に東京で支援国会合を開催する等、アフガニスタンの復興プロセスに積極的に貢献してきた。2001年以降の累計支援実績は約69億米ドルに達する。
  • (2)対アフガニスタン国別開発協力方針(2018年9月改定)において、日本の重点支援分野として、ア アフガニスタン政府の治安維持能力向上のための支援、イ 開発支援(持続的・自立発展のための支援)を定めており、引き続きアフガニスタン及び周辺地域・国際社会の平和と安定のため貢献していく考え。
  • (3)2020年11月にオンライン形式で開催された「アフガニスタンに関するジュネーブ会合」では、茂木外務大臣から、アフガニスタン政府自身の改革努力を前提に、年間1.8億ドル規模の過去4年間と同水準の支援を、2021年から2024年も維持するように努める旨表明した。

二国間関係

1 政治関係

  • (1)1930年11月19日、修好条約署名(1931年7月26日発効)。1979年12月以降アフガニスタンの累次政権を政府として承認していなかったが、2001年12月22日、アフガニスタン暫定政権への政府承認を行った。
  • (2)1934年11月、在カブール日本国公使館開設(1955年12月、大使館に昇格)。1979年12月以降臨時代理大使レベルであったが、1989年2月より一時閉鎖。2002年2月19日再開(駒野臨時代理大使、4月26日大使に昇格)。
  • (3)1933年10月、在京アフガニスタン公使館開設(1956年5月、大使館に昇格)。1997年より事実上閉館状態にあったが、2002年12月16日再開。

2 経済関係

  • (1)日本への輸出 0.2億円(2020年 財務省貿易統計)
  • (2)日本からの輸入 39.8億円(同上)

3 文化・スポーツ関係

  • (1)日本は、アフガニスタンの文化財保護に高い関心を有しており、ユネスコを通じ、2003年に世界文化遺産に登録されたバーミヤン遺跡(「危機遺産」に指定)の保護支援を継続的に実施している。また、2016年には外務省後援の下、福岡及び東京において、アフガニスタンの秘宝を展示する「黄金のアフガニスタン」展が開催され、来場者数が22万を超える等好評を博した。
  • (2)文科省奨学金やJICA事業を通じ、アフガニスタン人の日本の大学院等への受入れが活発に行われている。
  • (3)2021年1月、中村哲医師(2019年アフガニスタンで逝去)と縁のある福岡県大牟田市が、アフガニスタンを相手国として東京2020オリンピック・パラリンピックのホストタウンに登録された。

4 要人往来

(1)往訪
年月 要人名
1971年6月 皇太子同妃両殿下(当時)
2001年12月 植竹外務副大臣(暫定政権発足式)
2002年1月、6月 緒方アフガニスタン支援総理特別代表
2002年4月、8月 松浪外務大臣政務官
2002年5月 川口外務大臣
2002年5月 岸田文部科学副大臣
2002年8月 渡部衆議院副議長
2002年9月 杉浦外務副大臣
2002年12月 新藤外務大臣政務官(カブール善隣友好会議)
2003年7月 緒方アフガニスタン支援総理特別代表
2003年11月 田中外務大臣政務官
2004年7月 逢沢外務副大臣
2004年12月 逢沢外務副大臣、緒方JICA理事長兼アフガニスタン支援総理特別代表(大統領就任式)
2005年4月 町村外務大臣
2006年11月 関口外務大臣政務官(総理特使)
2007年7月 松浪政府特派大使(ザーヒル・シャー元国王葬儀)
2007年12月 緒方JICA理事長
2008年5月 高村外務大臣
2008年11月 緒方JICA理事長(総理特使)
2009年3月 山崎衆議院議員(総理特使)
2009年10月 岡田外務大臣
2009年11月 福山外務副大臣(大統領就任式)
2010年3月 緒方JICA理事長
2010年7月 岡田外務大臣(カブール国際会議)
2012年1月 玄葉外務大臣
2012年5月 山根外務副大臣
2012年6月 山根外務副大臣(イスタンブール・プロセス閣僚級会合)
2014年1月 牧野外務大臣政務官
2017年1月 薗浦外務副大臣
2018年4月 佐藤外務副大臣
(2)来訪
年月 要人名
1969年4月 ザーヒル・シャー国王王妃両陛下
1970年5月 アーマッド・シャー皇太子同妃両殿下
1972年11月 ビルキス王女同夫君両殿下
2002年1月 カルザイ議長、モハッケク副議長、アルサラ副議長、アブドッラー外相、シディーク公衆衛生相、ファルハング復興相(アフガニスタン復興支援国際会議)
2002年4月 アミン教育相
2002年7月 ラヒーン情報文化相
2002年10月 アブドッラー外相
2003年2月 カルザイ大統領、アブドッラー外相(「平和の定着」東京会議)
2003年3月 アブドッラー外相
2004年2月 ワルダック殉教者障害者相
2004年3月 カヌニ教育相
2004年3月 ガーニ財務相
2004年8月 ファエズ高等教育相
2005年5月 アブドッラー外相
2005年10月 ラヒーン情報文化相
2006年1月 アハディ財務相
2006年6月 スバンタ外相(「中央アジア+日本」対話外相会合)
2006年7月 カルザイ大統領、ジア農村開発復興相(「平和の定着」東京会議)
2006年11月 ムジャディディ上院議長
2007年2月 スタネクザイ大統領顧問
2007年5月 アトマル教育相
2007年6月 ハリリ副大統領、ジア農村開発復興相、スタネクザイ大統領顧問(アフガニスタンの安定に向けたDIAG会議)
2007年11月 アハディ財務相
2008年2月 スパンタ外相他閣僚計13名(共同調整モニタリングボード(JCMB)会合)
2008年11月 アルサラ筆頭相
2009年3月 スタネクザイ大統領顧問
2009年3月 ポパル独立地方行政局長官
2010年3月 ラヒーミー農業灌漑牧畜相
2010年3月 ワルダック教育相
2010年6月 カルザイ大統領、ラスール外相、ザヒルワル財務相、
スパンタ大統領顧問、スタネクザイ大統領顧問
2010年12月 ハキミ外務副大臣(日アフガニスタン政策協議)
2011年2月 ダウドザイ大統領府官房長官
2011年12月 ガーニ大統領顧問
2012年2月 ルーディン外務副大臣
2012年7月 カルザイ大統領、ラスール外相、ザヒルワル財務相、スタネクザイ大統領顧問(アフガニスタンに関する東京会合)
2012年10月 ザヒルワル財務相
2012年11月 ナジャフィ運輸民間航空相
2013年10月 サンギーン通信相
2014年2月 ザヒルワル財務相
2014年5月 ザヒルワル財務相(国際コンタクト・グループ(ICG)会合)
2015年3月 ドゥラニ農村復興開発相
2015年7月 ムラド国軍副参謀長
2015年8月 ルラ・ガーニ大統領夫人(WAW!2015)
2015年12月 ジア・マスード行革担当大統領特別代表
2018年2月 アンディシャ外務副大臣
2019年10月 ガーニ大統領(即位の礼)
2020年1月 カユミ財務相(IMF・JICA国際会議)
2021年3月 マナウィ法務相(京都コングレス)

5 外交使節

  • (1)日本側:岡田 隆 駐アフガニスタン特命全権大使
  • (2)アフガニスタン側:シャイダ・モハマド・アブダリ次期駐日大使
アフガニスタン・イスラム共和国へ戻る