個性『RTA』があまりに無慈悲すぎるヒーローアカデミア 作:ばばばばば
ホモ要素はありません
基本ギャグです(ホモは嘘つき)
読む前にタイトルを二度見して♥️
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すん(@sun_1200)様
追記
すん(@sun_1200)様が本作の1話部分を漫画にして下さいました
(他サイト、ツイッターに繋がります)
https://twitter.com/sun_1200/status/1424445424404893697
私の名前は
私は自分の個性が嫌いだ。
私の個性は『成長』
重たい物を持てば力が強く、走れば足が速く、勉強すれば賢く、細かいことをすれば手先が器用になる。
努力すればそれが向上するのは普通の人間も一緒だろうと考えるかもしれないけど、この個性はそんな生易しい物じゃない
私という人間は意思を以って己を鍛えれば人間の上限を大きく超えることができるのだ。
上限は分からない、天井があるかもしれないけど今のところまだ私は成長し続けている。
この個性のおかげで私は人生でほかの人が悩むようなイベントで何かに困ったことはない
自分のこの個性には感謝している。
でもどうしても、
『キャラを作って放置、究極のクソ運ゲーRTA第2部 はぁじまぁるよー!』
この気色悪い宇宙人のような声を消せるなら私は無個性にだってなってもいい
物心ついた3歳の時、私の個性は発現した。
両親が共働きでおばあちゃんの家によく預けられた幼い私は、迎えに来る時間になると家の前が見える窓からその迎えを探すのを日課にしていた。
少し町から離れたおばあちゃんの家の周りは何もなく、そこから家に向かってくる車のライトを見つけては家の玄関まで出て、迎えのお父さんに抱き着く
はじめのうちは暗くて別の車と見間違えたりしたこともあったが、その習慣を繰り返すうちにすぐに見分けられるようになった。
ここで終わればかわいい幼年期の思い出で済むが、私が何キロも離れた暗闇とライトの逆光の中で大きなあくびをしていた父を見たと話すとそうはならない
病院に連れてこられた私はいろいろな検査を受けて、最後に両親に挟まれて座り、医師に自分の個性について説明される。
その直前
『生まれによって全てが決まる。世の無常を精巧に表した名作リセマラゲー、僕のヒーローアカデミアRTA、 はぁじまぁるよー!』
まるで宇宙人のようで抑揚のないその声が急に頭の中に響く。
私は驚きながらあたりを見回すがそこには両親と医者以外誰もいない
『主人公の名前は入力速度を考慮してホモ、しかしゲーム内の不可思議な力で禁止ワードには修正がかかります。ホモが禁止ワードって差別ですかね、もう許せるぞオイッ!』
「君の個性は『成長』、めずらしい個性だよ。この個性は……」
『リセマラで親の顔より見た医者が表示された瞬間から測定開始、コイツいっつも個性を解説してんな』
どうしてみんな平然としているのだろうか、この声は何? そう思って私は口を開こうとするが一切動かなかった。
『今作ではノーマルエンド、雄英を卒業しプロヒーローになるまでのタイムを測定します。それはSpeedrunじゃないかって? えっそんなの関係ないでしょ(威圧)』
私はパニックになりながらなんとか口を開こうとするがなぜか体が固まってしまう
『今回の個性は強いですね、まずスタートする時点で有能な個性を引き当てるために114人ほど犠牲になってます。
しかしここを妥協すれば序盤中盤となすすべもなく詰むので、ひたすら死んだ魚の目で厳選する必要があります』
詰む? なにを言っているのか何一つ理解できない。
『ここですぐさま主人公を確認、ちょっと自信なさげでやさしそうな顔、いいですね、おそらく性格が臆病、素直のどちらかです。
あとは男であれば完璧でしたがそれを差し引いても全体的に優秀ですね、これは期待の新人だ~↑』
見られているの? どこから?
『本作は戦闘シーン以外のシナリオパートは非常にランダム性が高く大まかな指示しか出せません、その指示通り行動してくれるかも運ですが114514人いる攻略班によると性格が素直、臆病だと指示が通りやすいそうです。
逆に強気、頑固は相当な強個性でなければリセット案件です。
主人公ですら適当な指示しかできないとかDQ4以下じゃねーかお前ん家(憤怒)』
もはや目の前で行われている私の個性の説明なんて耳に入らない、そんなものより私を見ている何かが頭の中にいるのだ。
そこから私の中にいるコイツに悩まされる人生が始まる。
『このゲームで最速クリアをするために何をすればいいかと言いますと、とにかく個性を育てて道中を安定させ、人と関わらないでイベントをおこさない、これにつきます。
なので序盤はイベントを乗り越えられるだけの身体機能と個性を上げてから家に引きこもるのが理想です。
ですが今回の個性の「成長」のおかげで体を鍛えれば個性も強くなるため、かなりタイムの短縮を期待できます。
やっぱり才能マンの……、個性を……、最高やな!
では早速指示を出しましょう、「個性を育てよう」』
しばらくして分かったことはこの謎の声を他者に伝えることはできない。
声や絵に描こうとしたりすることは不可能、その存在を匂わせるような不審な動きすらできない
だがこの声の内容からこいつの大まかな目的が見えてきた。
1つ、声の主は自身のことをRTA走者あるいはRTA投稿者と名乗る。自分の個性なのかそうじゃないのか謎の存在である。
2つ、この世をゲームのようなものと思っており、この世界を何度も繰り返しているらしい。
3つ、ヒーローにさせることが声の主の目的であるらしく、その目標は早ければ早いほどいいらしい
4つ、私を主人公と呼び、私がヒーローになるために個性を強くし、人と関わらないように指示を出している。
独特な話し方や、わからない単語が多いなか、頭の中の声が話していることを信じるならこうなる。
やることなすことに口を出すこの声は私をヒーローにさせたいらしい、もちろんあこがれる気持ちもあるが自分が本当にそうなれるなんて思ってはいない、そして人間関係を絶てと命令する頭の声を私は当然無視した。
『個性を育てよう』
私はその声を無視して過ごした。
『個性を育てよう』
無視し続けたことが効いたのか、2年も経てば、声を聴くことが少なくなり、大抵は週の初めに私がすべきこととやらを指示してきて、その週いっぱいは聞こえなくなるということが続いている。
『個性を育てよう』
次第に私はこの声を気にすることもなくなり、6歳となって、小学校に上がることになる。
『個性を育てよう』
私は新しい友達がたくさんできて毎日が楽しかった。自分のもう一つの個性? である謎の声は不気味ではあるが何をしてくるわけでもない、人間の成長は恐ろしいものですぐに慣れてしまったのだ。
『個性を育てよう』
こうして私が小学二年に上がった時、いつもの声で私に個性を鍛えるように指示が聞こえるが、今の私にはそんなことより女の子同士の付き合いのほうがよっぽど大事だった。
『うーん、困りましたね』
いつもならそこで終わるはずの声であるが、今日は珍しくまだ何かをしゃべり続けている。
『個性を鍛えるように指示をしていますが、友達と遊んでばかりでなかなか個性を使ってくれませんね、これは厳しいです。人と接しすぎて魅力が上がるとイベント発生率や好感度上昇でフラグが立ってタイムが伸びてしまうのでうま味ではないです』
私はその声に満足する。
『このままだと魅力が上がりすぎたせいで確率で起きるイベントで氏んでしまいますので、主人公が自分の体を鍛えるように祈りましょう、いい個性が出て流れるようにここで氏ぬ、そんな繰り返しですね(白目)』
え? 死ぬ?
『イベントを見たいあまり、魅力を上げたはいいものの、イベントを乱発して戦闘に巻き込まれるがステが足りないなんてこのゲームをプレイしたならだれもが経験したことがあると思います。このゲーム、イベントさえ起こさなければ戦闘はクッソ少ないですからね』
私は固まってその声を聴いた。
今日は学校で一番の親友のあみちゃんとオシャレをして遊ぶ予定だったのでそのまま出かけたが頭の声の内容に後ろ髪をひかれて気が気ではなかった。
謎の声は時々、荒唐無稽だがまるで未来を予言したような内容を話す時がある。それは先のこと過ぎて嘘か本当かはわからない、だけど、もしそれが本当なら
なら私は近い将来で本当に死んでしまうような危機が訪れてしまうのだろうか
『個性を育てよう』
その無機質な声に恐怖し、私は個性の練習を始めた。
『いいですね、いい感じにデレてます。これはギリギリで何とかなるかもしれません(何とかなるとは言っていない)』
私は少しずつ声に従うようになった。不安なのもそうだったのだが、この声の言っているイベントが本当にくるのか確かめることにしたのだ。
とはいっても体をめいいっぱい動かして遊ぶだけだ。男の子たちの中に混じって駆けっこ、野球、川遊びなど、何でもやった。
はじめは女のくせにと見られていたが、私が男顔負けの剛速球や俊足を見せるようになると次第に仲間の一人に認めてくれるようになった。
「よし! ホモ子、今日は隣町の奴らと試合だぜ! お前の鉄壁のショートを見せてやれ」
「うん!」
特に男の子の中では一番に自分を認めてくれたリキ君と仲良くなった。そのいかつい顔に似合わず甘党で、彼のお勧めするお菓子屋さんは絶対にはずれがない
ついでに説明するとホモ子とは私のあだ名だ。
本条 桃子で縮めてホモ子、はじめはモモと呼ばれていたのだが男の子たちからはホモ子とあだ名され、もともとあったあだ名が駆逐され、今は女の子からもホモ子と呼ばれるようになっていた。
今では昔からのモモちゃんのほうのあだ名を使ってくれるのはあみちゃんくらいだ
『本作は原作キャラの幼馴染になることが可能です。
幼馴染イベントが発生するので誰とも顔見知りでないことが理想ですが難しいでしょう、クソ下水煮込みとかファッキンデクのぼうと幼馴染になると爆発的にイベントが増えますのでこの二人とは絶対に幼馴染にならないでください。
というか今作はこの主役どもと関わらないことが主眼となりますのでこいつら二人はRTAにおける大戦犯、鎖マンです。
なので佐藤君はベターと言えるでしょう、何より佐藤君関連のイベントは筋力値が上がりやすいのがうま味』
この声は時々、全く知らない人たちのことを話す時がある。彼らは将来ヒーローになる人物であったり、ヴィランだったりの名前らしい、木偶の棒? 下水煮込み? という人が主人公だと話すが、この声は以前、私も主人公だとも話した時もあるので整合性が取れない、一体どういうことなのだろうか……
「どうしたホモ子、行こうぜ!」
「リキ君って将来大物になるかも……、きっとヒーローとか」
「急になんだよ、けどそうだな! 俺の夢はヒーローだ!!」
それにしても目の前のリキ君がもしかして将来、あの有名な雄英高校に入るかもしれないなんてすごすぎる。今のうちにサインをもらっておいたほうがいいのかもしれない
こうして私は体と個性を鍛えながら楽しい日々を過ごせば、いつの間にか小学五年生になっていた。今の私は小学生ながら大人顔負けどころかそれを大きく超えた身体機能を得ることができた。
『おぉ~えぇやん、なんぼなん?(身体強度) クォレは強い(確信)そんだけ体鍛えてれば 自信あるでしょ?』
頭の中の声を聴くにこれで最低ラインはクリアしたらしい。
『ここで、確率イベントが入るか入らないかが決まりますが…』
そうして体を鍛え続ける日々、いつものように家に帰る途中、親友のあみちゃんに偶然出会う
「モモちゃん久しぶり!」
「あみちゃん!! 最近遊べなくってごめんね!!」
最近は体を鍛えることに集中しすぎて会えない時があったので私の気分は一気に上がる。
『あー入ってしまいました。変質者イベント
一定以上の魅力値がある場合、確率で起こります。内容は変質者が絡んでくるという内容です。
このロリコンどもめ!!
撃退すると経験値が稼げるのですが乙る可能性があるので序盤はあまり発生させたくないイベントです。しかし今回はそれなりに個性が育っているので問題はなさそうです。
出現する敵は大抵は変態おじさんか一般個性持ち犯罪者ですが噂によると極まれに……』
私たちの目の前に影が差す。
頭を上げた瞬間、私たちは恐怖で固まった。
「にく……小さな肉の中身……、ピンクの肉……見せて……?」
同じ人間じゃない、人は人をあんな目で見たりはしない
目の前のモノはきっと私たちの常識なんて一欠けらも通じない化け物だと、子供ながらに直感した。
『ムーンフィッシュとか うっそだろお前!(全ギレ)バカじゃねぇ?(現実逃避)笑っちゃうぜ(諦め)
ムーンフィッシュ、人を切り裂きその断面に美しさを見出すサイコ野郎でかなり強いです、序盤じゃどうあがいても殺されます』
私たちは目の前の化け物に対して一歩も動くことができなかった。
「子供の…断面は……、丁寧に切らないと…すぐこぼれる……一人ずつ丁寧に……丁寧に……見せて?」
『う~ん、正直リセット案件ですが、ここでオリチャー発動です』
「えっ?」
瞬間私の体が勝手に動き出す。
それは頭の声を周りに伝えようとするときと同じような感覚で私の体の自由を奪った。
私は一歩その場から飛び去り、すかさず右手を押し出した。
「モモちゃん……?」
あみちゃんの背中にむかって手をつき出すとその細い体はあっさりと体勢を崩してペタンと地面に腰をついた。
その瞬間、自分の体は反転し、小さな体を活かしてモノに隠れながら全力で駆け出した。
勝手に動く自分の体をまるで他人事のように呆然と見ていた私は、背後から聞こえる……、親友の……、いや違うあみちゃんはあんな声出さない……、あんな大きな声……、あんなのかわいい声をしたあみちゃんじゃない、違う……
私が……、私が………、私のせい?
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
きがつくとわたしはひーろーにほごされていた。
『いやーこのイベント生命の危機がある場合の救済処置として、親友を犠牲にして自分が生き残るという選択があるんです』
■■ちゃんのそうしきで■■ちゃんのおとうさんとおかあさんはすごいないてた。
『これをすると性格がロウからカオス寄りになりますし、特性で「トラウマ」が入っちゃうんですけどまだ挽回の余地はあります』
わたしのおとうさんとおかあさんはなきながらわたしがいきていてよかったっていってる。わたしは■■ちゃんのぶんもいきたほうがいいらしい
『実はヒロアカのRTAのランキング上位にはトラウマ持ちルートがチラホラいたりするんですよ』
■■ちゃんはわるいひとにころされたらしい、わるいひとってだれだろう
『人と関わることを極端に恐れるせいでうまく嵌ればほとんどのイベントをスルーすることができます(安定するとは言ってない)』
わるいひと、わるいひと、わるいひと
それって■■ちゃんをころしたわたしなの?
『それにしても幼女を犠牲にしたのは心苦しかったですね』
ちがう、わたしがころしたんじゃない!!!!!!!
「おまぇぇぇぇぇぇえぇぇ!!!!!!!! お前のせいだぁッ!!!! お前が私の体をのっとってっぇぇぇぇぇえぇ!!!!!!!!」
「桃子! どうしたの!! 落ち着いて」
「止めるんだ桃子!!」
おとうさんとおかあさんがわたしをつかむけど、わたしはつよいからずっとじぶんのあたまをわろうとした。でもまわりのひとのこせいをつかわれてわたしはうごけなくなって
『ちがうんや! これもホモ子が個性を上げずに人と遊びまくるのがいけないんや! そもそも主人公に近しい人間に平穏なんて訪れないから(震え声)』
あぁ、そうか
全部私のせいなんだ。
私のせいであの子は死んだんだ。
この声におとなしく従えばよかったのに……
目が覚めたとき、そこはベッドだった。
そこで私の頭の中に声が響く
『個性を育てよう』
「あぁ……、個性を強くしなきゃ……」
この日、私は自分で考えることをやめた。
正直主人公の過去とかどうでもいいから1話にまとめました。
ギャグを書こうとしていたらいつの間にかホラーになっていた。
頭の中に正解をささやき続ける悪魔がいたらその誘惑に勝てる人間はいないと思います。
まぁ声の主はガバなんですけどね初見さん