赤い公園 シングル「風が知ってる」インタビュー –
なんて素敵で危険な曲なんだろう! こんな曲を作り、こんなふうに演奏できるのは赤い公園しかいない。唯一無二の魅力が凝縮された新シングルに収録されるのは、この3曲。「風が知ってる」はテレビ・アニメ「とある飛空士への恋歌」エンディング・テーマとして、「ひつじ屋さん」は映画「呪報2405 ワタシが死ぬ理由 劇場版」主題歌に、書き下ろされたニュー・ソング。そして平井 堅「POP STAR」のカバーで、ガールズ・バンドならではの愛と強さを見せつける。ミニ・アルバム『透明なのか黒なのか』でメジャー・デビューして2年、赤い公園の快進撃は止まらない。
INTERVIEW & TEXT BY 今井智子
この曲はまさにごちゃ混ぜ
──新曲は2曲とも映像作品とのタイアップですけど、どんなふうに生まれたんでしょう?
津野米咲 書き下ろしは初めてなんですけど、「とある飛空士への恋歌」のエンディング・テーマになった「風が知ってる」のほうが先で。飛空士の群像劇なんですけど、恋愛もありつつ闘いにいくところもありつつ、というところがRPGっぽい。「ゼルダの伝説」とかの感じがあって。現代音楽寄りのアニメ音楽のコード進行というのを出したいなと思って、イントロあたりから作り始めて。サビのメロディは最初は全然違ってたんです。もっと暗かったんですよ、中島みゆきさんぐらいの(笑)。だけどデモ音源を作っていく段階で、そのコード進行を全部1回なくして、穏やかに感じに作ろうと思って。で、出来ました。
──複雑でドラマチックな展開の曲になってますね。
津野 そうですね。構成を、引き算するのは今までたくさんやってきたんですけど、パートを増やしていくというのは、あまりやったことのない感じでしたね。
──今までにないぐらい、遠慮なく大胆な感じがします。
津野 挑戦しましたね。逆に自由になってる。自由になったのち、メロディがめちゃめちゃポップになってる気がしますね、自分でも。
──そう、メロディがすごく綺麗で、佐藤さんの声が生きてる。その一方で重層的に音を入れて、暗さとかノイズ感とかの配合が面白いし。
津野 ごちゃ混ぜのことをやってるバンドだとずっと思ってましたけど、それでも曲毎にジャンル分けができる。この曲はまさにごちゃ混ぜだと思うんですよね。ベースがやってることとドラムがやってることと、ギターがやってることが全然違うし。歌は完全にJ-POPだし(笑)。ちーちゃん(佐藤千明)の歌だけでも成り立つような。それがひとつにまとまったときに、今までに聴いたことないカッコいい感じになるなと思って。
──アレンジは曲を作りながら考えるんですか?
津野 メロディがこれだけ強いし、言葉も強いし大丈夫だろうというので、楽器隊は、厳密に言うともうちょっとポスト・ロックっぽい。実際、ポスト・ロックって自分たちのことを言われても、何がポスト・ロックかわからなくて(笑)。でも自分たちの思うポスト・ロックっぽいものになってる。ギターはさておき、ドラムとかベースはそっちに寄せてる感じです。
──複雑なのでライブで合わせるのが大変そう。
津野 初めて同期を使いまして。ライブでもやるんですけど、自分たちでやってても、同期でもダサくないっすね。みんな複雑なことやってるんですけど、パッと聴きにはピアノとギターと歌が占めてる割合が大きいから。歌とギターが生で、その印象が強いんで、成り立ってる気がします。
──歌詞は、「とある飛空士への恋歌」のストーリーに合わせて?
津野 そうですね。最後の“その体温は僕と/風が知ってる”というところがまず出来て、それまでを書くということをやりましたね。
──佐藤さん、歌って意識したところとかありますか?
佐藤千明 この歌は、すごくイメージが沸いてきますし、私も脚本を読ませていただいて、暗い物語のように見えてすごく希望に溢れてるなあと思ったので、その感じが歌の中で出せたら良いなあと思って。最後のサビで、バーン! と歌う感じにして、ほかはちょっと抑えて、淡々と歌うようなボーカルになりましたね。
”お前ら変態好きだって言うけど、これだよ変態は”っていう曲
──次の「ひつじ屋さん」はまったく違うテイストで、「のぞき穴」に通じる雰囲気もあって赤い公園らしいと思ったんですけど。
津野 うれしい。『黒盤』(『透明なのか黒なのか』)というミニ・アルバムと、シングル「のぞき穴」みたいなものを感じてもらえたらなと思って作ってるんですけど。「のぞき穴」より全然ポップだと思いますね。成長したなって(笑)いちばん感じてもらえるんじゃないかな。
──もちろん感じます(笑)。楽器それぞれがバラバラに動きながらカチッと合う感じが、ルービック・キューブみたい。
津野 私の大好きなルービック・キューブ!
佐藤 早いよね。しかも変なところ負けず嫌いで。
津野 The SALOVERSのボーカル(古舘佑太郎)に負けて、負けるぐらいならやめるって(笑)。
──(笑)そんなイメージが沸くほど面白い演奏なのは、みんなが津野さんが作る曲を理解してるからかなと思いますけど。
津野 「ひつじ屋さん」は「風が知ってる」より、演奏するにあたってみんなが得意な分野の曲で。それがほかのバンドと逆だと思うんですけど、変な曲ばかりやりすぎて、普通のリズムやメロディが苦手っていうバンドになってしまったので(笑)、すごくナチュラルに出来ましたね。歌詞もメロディも一切の迷いなく最後まで出来ました。私これ、めちゃめちゃポップだと思うんですけど。変ななかにもポップさがないと。このバンド変態だよねって喜んでる人はそのポップな上での変態を言ってますから。それはすごく難しいところで。私たちはその範囲内でやってきたつもりなんですけど、これはちょっと、”お前ら変態好きだって言うけど、これだよ変態は”っていう曲になってると思います(笑)。
自分の中の、もっとドロッとした部分とかとかを掻き混ぜて出した
──これこそポップの現在形と私は思うけど(笑)。
津野 そうなんですよね、あまりにイクとひっくり返るんですよね。だから「ひつじ屋さん」は、かえって言葉に耳がいくようになりますからね。
──演奏も十分耳に残りますよ(笑)。映画の怖い感じが出てるし。
津野 私のアタマの中で、ベースの歪み具合とかギターの感じとかドラムの感じとか、ちょっとシステム・オブ・ア・ダウンとか、あのあたりを思い浮かべてて。自分の中の、もっとドロッとした部分とかとかを掻き混ぜて出した感じはあります。
──歌詞が妙にリアルだし。
津野 そうなんです、妙にストーリーになってるというか。ホラーって、何が起こるかわからないときがいちばん怖いですよね、その感じ。一応、恋愛の歌になってるんですけどね。恋愛の対象がひつじ屋さんという、人なのかなんなのかわからない。
──ひつじを連れてくるわけじゃないですよね。
津野 ひつじ屋さんは、私を眠らせてくれるんですね、お駄賃と引き換えに。
──お駄賃は何?
津野 なんでしょうね(笑)。ただ、ひつじ屋さんは眠らせに来る人ですから、心に触れたい気持ちも鎮めてくれるし、一緒に朝ご飯食べてデートしたいなんて夢をみても、朝には“毎度あり”ってメモがあるだけっていう(笑)。最後の“めーめー”は意味ないです。オマケです。
──“ママでもパパでもない”というところは、アルバム『公園デビュー』の曲でも歌ってた、子供の頃への思いとかですか?
津野 そうですね。寂しいと書くのではなく、それを代弁してるんですけど。寂しいと感じるところで思い出すのは家族だったりとか。そういう子供心が、満足しないまま大人になってしまっている感じですかね。
──佐藤さんは、どんなイメージで歌ったんでしょう?
佐藤 「風が知ってる」よりは今までどおりの感じで、歌い方は掴みやすい感じだったんですけど。徐々に壊れていく感じというのが、なかなか掴み難かったところがありましたね。わりと、かわいい感じの、無邪気な感じの声で歌うことの怖さとかは、ちゃんとAメロとかに出てるかなと思ってて。徐々に壊れていく感じは、私この日すっごく歯が痛かったから、最初からちょっと壊れてたんですよね(笑)。
──(笑)。この2曲はそれぞれ作品があって、それに応えながらテーマを凌駕してるところがすごいと思います。
津野 この2曲に関しては、先方の懐の深さを感じますね。ここまで好きにやらせていただけてるというのは。「風が知ってる」だって、そんなにわかりやすい曲ではないと思うし、「ひつじ屋さん」なんて、シングルになること自体意味わかんないですけど(笑)。それを最高だよと言ってくださっているので。出会って良かったなと思います。
──期待されているという感触もあった?
津野 どういうものを期待されてるかは、書き下ろしって初めてだったのでわかんなかったですけど。自分ひとりで、津野米咲としてやるとしたら、もっと従順で、もっとありきたりなものになってしまったと思うので、そうはいかなかったところがよかったと思います。
──赤い公園は従順ではないんですか(笑)。
津野 赤い公園、ホントに言うこときかないですからね。コントロールできないところが良いんだと思います。赤い公園というのが何処に向かうべきかという正解がきっとないなと思うんで。やっていって、出来たものが最高だったら、それでいいんじゃないかなって。未来に正解を求めるのをやめました(笑)。
アンバランスさの美しさを知ってるのが亀田さん
──もう1曲は平井 堅さんの「POP STAR」のカバーですけど、これを選んだ理由は?
津野 最高の曲じゃないですか! 完璧ですよ! ずっとやりたくて、前回のシングル「今更/交信/さよならは言わない」で小田和正さんの「さよならは言わない」をカバーしたときから「POP STAR」か「さよならは言わない」かって候補に挙がってて。満を持して出来た。
──ここでは津野さんのギターが光ってますね。
津野 自分の曲で、作りながらギターが弾き狂うのが考えられないんですよ。作りながらってなってくると。原型がある状態だと私も目立ちたいというのが出て来ちゃったのか、すごい弾いちゃいました。この曲、「風が知ってる」のプロデューサー・亀田(誠治)さんが、「POP STAR」(原曲)をプロデュースしてて。同じCDに入るってことで、亀田さんが絶対やらないアレンジをしようって。
──亀田さんとのレコーディングはどうでした?
津野 面白いですね。すっごい。無邪気な方で、「風が知ってる」のデモを聴いたときに、作業しながら泣いたらしいです。こんなに美しい曲は久しぶりに聴いたって言ってくれました。
──ちょっと椎名林檎さんっぽい感じもあるのは亀田さんの影響ですか?
津野 亀田さんにやってもらって、よりそれっぽい感じになりましたね。私がやったら、もっと毒のない感じで終わりそうだったけど、ちょっと毒の部分を補っていただいたというか。
佐藤 ミックスなんかも、今までの赤い公園では絶対ないような新しい感じになってますね。
津野 きれいな音で録らないっていう。ちーちゃんの声なんて単体で聴いたら歪みまくってる。聴いていくとちーちゃんだなと思うんですけど、最初は今までとあまりに違いすぎて戸惑いを隠せなかった(笑)。そのアンバランスさの美しさを知ってるのが亀田さん。すごく面白かったです。
──3月に出る「絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く」も亀田さんのプロデュースですね。
津野 そうなんです。とっ散らからないよう頑張ります。
DISC INFORMATION
SINGLE 2014.2.12 release
「風が知ってる/ひつじ屋さん」
EMI R
初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>
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赤い公園
あかいこうえん/佐藤千明(vo)、津野米咲(g)、藤本ひかり(b)、歌川菜穂(ds)。高校の軽音部の先輩後輩により’10年に結成されたバンド。2012年2月と5月のミニ盤『透明なのか黒なのか』『ランドリーで漂白を』でメジャー・デビューを果たす。約半年の活動休止期間を経て2013年7月3日に復帰第一弾作となるシングル「今更/交信/さよならは言わない」をリリースし、同年8月に1stフル・アルバム『公園デビュー』を発表している。発売されたばかりの「風が知ってる/ひつじ屋さん」に続き、3月12日にはこちらも亀田誠治がプロデュースを手がけた「絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く」をリリースすることも決定している。
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かめだせいじ/‘64年、アメリカ、ニューヨーク生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。‘89年、音楽プロデューサー、ベースプレイヤーとして活動を始める。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツをはじめ、スガ シカオ、アンジェラ・アキ、JUJU、秦 基博、いきものがかり、チャットモンチー、MIYAVIなど数多くのアーティストのプロデュース、アレンジを手がける。椎名林檎らと東京事変を結成し‘12年閏日に解散。‘07年、第49回日本レコード大賞、編曲賞を受賞。昨年には4年ぶり2度目となる自身の主催ライブイベント「亀の恩返し」を武道館にて開催。映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の音楽監督を務めるなど、様々なかたちで作品を届けている。また、オフィシャルサイトなどで、自身の知識をフリーでシェアし、新しい才能を応援する「恩返し」プロジェクトを展開中。
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