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この作品「ウェットスーツ」は「transfur」「シークエンス」等のタグがつけられた作品です。
ウェットスーツ/定峰の小説

ウェットスーツ

11,307 文字(読了目安: 23分)

なんとなく思いついたので今回は短めに書こうとしましたが
相変わらずの文字量になってしまいました。
書き始めた時はまだ雨の日が多くここまで暑くなる前だったので
こんなに早く梅雨が明けるとは思いませんでしたね。
しばらく忙しい状態が続くので次は間が開くと思います。
7/18~24の小説オリジナルウィークリーランキング10位に入りました
大変ありがとうございます。

シリーズnovel/series/1269176
novel/15231291

2021年7月21日 15:17
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潮風と波が打ち寄せる音が響く朝の海岸は良い。
朝のまだ海開き前且つあまり知られていないこの小さな砂浜海岸には
海水浴に来る人もいなければ、海を見に来る家族連れやカップルなどもおらず
いるとするなら、とある練習に車で来た俺と
熱心な地元らしき十台後半位の若い男性サーファーが何人かいる位だ。


夏になると俺が趣味で参加しているの社会人トライアスロンの大会がやってくる。
この大会は毎年優勝とは行かないまでも、入賞を連続して取っていて
今年こそ表彰台、あわよくば優勝を狙ってこれまでずっと努力してきたが
俺には一つ弱点があった。
俺はトライアスロンを構成する3つの種目の内の1つスイムが遅い。
速くないスイムで序盤に他の選手にリードを取られ、バイクとランで追い上げるも
トップまでは巻き返せないというのがお決まりで、
この展開に俺ははもう嫌気が差すほど繰り返されていた。

今年こそはそうなるまいと、スイムの練習を例年より早めにし始めようと
スイム道具の準備をしていたつい先日、使っているトライアスロン用のフルスーツの
ウェットスーツに修復出来そうにない程の大きな裂けが出来ているのを
見つけてしまった。
長年共にした相棒に寿命が来たのも悲しかったが、それよりも
スーツを買い直す必要が出てしまったというのが痛い。
大会に向けてバイクやランの方にも前々から費用の使う予定があって
あまり金銭的余裕は無かったからだ。

予定外の出費に安く、出来れば同じフルスーツのウェットスーツを
インターネットで探し始めて丸1日、予想通りどこも同じような
数万円の値段で安定している安く良いスーツ探しを半ば諦めかけていた所に
今では名前も覚えていない一つの新参メーカーらしいウェットスーツを見つけた。
そこでは一般的なスーツの半額以下で買え、しかも即日発送という
今の俺の希望条件をすべて満たしていて、品質に一抹の不安はあったが
背に腹は代ええられずこれを購入し昨日届いてこうして海へ来た。


車から降り、荷台に乗せた買ったばかりのウェットスーツを広げて
周りに女性が居ないのを良い事に服を全て脱いで着替え始める。
本番を意識して練習するなら、トランジット練習も兼ねて
中にトライウェアを着た方が良いかもしれないが
まだ大会まで余裕があるのと、久しぶりで訛った泳ぎの勘を取り戻しながら
この怪しいウェットスーツの感触を確かめるのが主体としていた為
今日は何も着ないというのもある。

「ぐっ…新品だから臭いもだがスーツも硬くてキツイな…」

独特のゴムの匂いのする上と下が一体化しているワンピースで出来た
長袖長裾のスーツを、背中のファスナーを最大まで下ろし
着ぐるみのように開いたスーツの中に右足を入れ進める。
裾の先へと進む右足の爪先が出た所で引っかかった足先を
足首が出るまで力強く引っ張って穿き、同様に左足も通して引っ張る。
両足を通し股下の余っている空間を尻付近のスーツを引き上げて
たるみや隙間が無いように持ち上げ、腕を片方ずつ入れ足と同様に
スーツを引きながら通し着終わると、背中のファスナーを上げ
全身の具合を確かめる。

「着る時はキツイ感じだったがファスナーを閉めたら
 そんなに締め付けるようには感じないな。
 しかもこのスーツ、ハイネックタイプしか無かったから仕方無かったが
 首を絞めるような感じも無くて、体を動かした感じも今の所良い感じだし
 スーツの柄も鮫っぽくって意外とカッコいいな」

スーツの具合を肩を回したり股上げをしたり体を捻ったりしながら確かめつつ
股下から腹、胸、首までの前面が白く、それ以外は暗い青色の模様をしていて
その他に顎下まで首全体を覆うハイネックの左右に、水を入れる用なのか
サメみたいな5本のエラを想像とする筋状の謎の切れ込みが入っている
キュッと体を護っているスーツを見回す。

「じゃあやるか」

一番の不安であった最初からどこかスーツが破けたり壊れたりしていないか
確認し終わると、入念に準備運動をしてから愛用しているミラーゴーグル片手に
海へと歩んで行くと足先と海水が触れた瞬間、声を上げた。

「つめてえ!」



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