レーシングカーに最も近いランボルギーニ、
「STO」の意味とは

  • 写真:Lamborghini Japan
  • 文:多田 潤

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サーキットを走行しているようなエモーションを感じられる、

スーパースポーツカー「ランボルギーニ・ウラカン STO」

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ランボルギーニのチーフデザイナー、ミィティア・ボルケルトは「レースモデルのウラカンが培った技術をあらゆるディテールの美に反映した」と語る。

2020年末に日本でも公開されたランボルギーニ・ウラカンSTO。「STO」とは「Super Trofeo Omologata」の略で、スーパートロフェオとは、ランボルギーニが主催するワンメイクレースのこと、オモロガータはイタリア語の「認定」という意味だから「STO=ロード走行が可能なスーパートロフェオ」ということだろうか。「GT」がグラン・ツーリスモの略だったりと、多くのスポーツカーの略字にはつくり手の情熱や意味が込められている。つまりこのSTOはモータースポーツを意識したモデルということになる。

じつはランボルギーニ、スーパーカーのブランドとして確固たる地位を築いているのと同時に、近年ではモータースポーツの世界でも数多くの輝かしい戦績を残している。そのひとつに毎年アメリカのフロリダ・デイトナサーキットで行われる24時間レースの戦果がある。「デイトナ24時間」はル・マンに並ぶ国際耐久スプリントレースでロレックス社のクロノグラフモデルの名称の語源でもある伝統と格式のあるレース。このレースのGT3カテゴリーでランボルギーニ・ウラカンGT3 EVOは2018年から20年まで3年連続で連覇を成し遂げている。圧倒的な速さと耐久性。そんな性能を色濃く引き継ぐ市販モデルがこの「STO」なのだ。

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モータースポーツで求められる究極の空力効率と軽量化を実現させるために行われたデザインの変更。フロントセクションの開き方はまさにレーシングカーそのもの。

STOが単なる限定モデルや派生モデルでないのはその内容からも伝わってくる。上のデザイン資料を見てもわかるように、通常のウラカンはボンネットとフェンダーが独立した構造となっているのに対し、STOはカーボンを成形し一体化した「Cofango(コファンゴ)」と呼ばれる形状のものに変更されている。空力を大幅に向上させ、ブレーキなどの冷却効率もアップさせるこの構造はトランクを排除し、走りを強化するためのもの。車両の軽量化を計りながら、デザイン資料のように過去の傑作、ランボルギーニ・ミウラとデザインに共通性をもたせるあたりがニクい!

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シートには4点式のシートベルトが標準で装備される。シートは手動の設定となり軽量化。ダッシュボードのステッチが象徴的で美しい。

そして室内はアルカンターラを多く使うことで光の反射を抑え、身体のホールド性を確保している。まさに仕事場といった雰囲気。自然吸気の10気筒エンジンは最大640hpの出力を誇り、ワイドトレッドで固められたサスペンションによりサーキットのタイムをシビアに削ることができるそう。ANIMA(アニマ)と呼ばれる走行モードのセレクターには「Trofeo(トロフェオ)」モードはドライのアスファルトサーキットで最高のラップタイムが出せるようにセッティング。サーキットユースに重点を置きチューニングを施すことによってノーマルとはまったく違うスパルタンな走りを実現しているそうだ。

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リアボンネットはエアスクープ付きのものに変更。シュノーケル部分から大量の気流を導き、排気口の温度の調整も行っている。リアウイングの角度も手動で調整することが可能。

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レーシングモデルならではのドアの内張り。ドアの開閉は赤いストラップで行い、グリップもストラップのような最低限のものに。可動部の軽量化はレーシングモデルにとって必須である。

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エンジンボンネットの取り外しは専用のキー(工具)によって行う。こうしたパーツにもランボルギーニらしいデザインが施されている。

そもそもスポーツカーやスーパーカーは、より速く走りたい願望を具現化するために生まれたもの。究極の姿はレーシングカーということになる。ただし、レーシングカーそのものは法規制もさることながら、公道を走ることはできないほどシビアにセッティングされている。豪華さや快適性を多少犠牲にしてでも、真のスポーツモデルを日常で楽しむならば、ランボルギーニ・ウラカンSTOほど最適なクルマはないだろう。

ランボルギーニ・ウラカンSTO
Lamborghini Huracán STO

サイズ(全長×全幅×全高):4549×1945×1220mm
排気量:5204㎤
エンジン:V型10気筒DOHC
最高出力:640hp/8000rpm
駆動方式:MR(ミドシップ後輪駆動)
車両価格:¥41,250,000~

ランボルギーニカスタマーサービス
TEL:0120-988-889
https://www.lamborghini.com/jp-en

レーシングカーに最も近いランボルギーニ、
「STO」の意味とは

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  • 文:多田 潤

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音楽、映画、文学と分野を交差する、台湾カルチャーの新たな面白さとは?

  • 文:近藤弥生子

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台湾カルチャーといえば台北の印象が強かったが、現在は各地方へと広がり、多様性を見せてきている。

ここ数年、台湾カルチャーへの注目度が高まっている。多様なエスニシティに、日本をはじめ世界各国から受けた影響が混じり合って織りなされるトランスカルチャー。そこには、ひと言では言い表せない魅力があふれている。

2021年に日本で3つの新作が邦訳出版され、2作品が文庫化されるなど、いま最も注目されている現代文学作家のひとり、呉明益(ウー・ミンイー)に、そんな台湾カルチャーについて訊いた。彼は台湾の国立大学で文学について教鞭を執る教授でもある。

「いちばん魅力的なのは、音楽かもしれません。過去に政府に禁止されていた、台湾語や先住民族の歌が甦ってきている。私は母語の客家語で創作活動をするミュージシャン・林生祥(リン・シェンシャン)の作品に文章を寄せたこともあるし、台湾語を用いるバンド『拍謝少年(ソーリー・ユース)』が私に作品を送ってくれたこともある」

もともと映画監督になるのが夢だったという呉は、近年アーティストの創作や交流の幅が広がっている状況についても語った。

「音楽、映画、文学といった分野がトランスされてきているのが、台湾カルチャーの新たな面白さだといえるでしょう。まさに、“台湾カルチャーとはこういうものだ”と型にはめられない自由さこそが魅力です。

映画だと『大佛普拉斯(The Great Buddha)+』を監督した黃信堯(ホアン・シンヤオ)は若い世代の中でも実力が抜きん出ていると思うし、マレーシア籍でありながら台湾を深く理解している蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督も、特別な存在だと思います」

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呉 明益(ウー・ミンイー)●1971 年、台湾・台北生まれ。小説家、エッセイスト。国立東華大学華文文学科教授。邦訳された著書に、台湾人作家として初めてブッカー国際賞にノミネートされた『自転車泥棒(訳:天野健太郎、文藝春秋)』、台湾でドラマ化され大きな話題となった『歩道橋の魔術師(訳:天野健太郎、白水社)』などがある。

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『複眼人(訳:小栗山 智、KADOKAWA)』。傷を負い、愛を求める人間たちの運命が、巨大な「ゴミの島」を前に重なり合い、驚嘆と感動の結末へと向かう──。人間と生物、自然と超自然的存在が交錯する世界を、圧倒的スケールと多元的視点で描く未曾有の物語。

豊かな自然とそこで暮らす人々によって織りなされ、それぞれの場所に息づいた文化も注目に値するという。たとえば、馬祖や金門といった場所では、東南アジア・ヨーロッパ・中国、そして現在の台湾文化が混じり合った雰囲気が建築などにも数多く見られるそうだ。

「私は蝶や野鳥が好きで、海外へ行くと必ず自然保護区や動物園に足を運ぶのですが、台湾にもたくさんの特有種がいます。日本統治時代にも博物学が追求され、日本人によってたくさんの研究が行われていましたから、もしかしたらいまの日本の方々も、こういったところに興味をもってくださるかもしれません」

さらに、日本の文学や漫画から大きな影響を受けているという呉は、登山漫画『神々の山嶺』が非常に好きで、周囲にも薦めている。

「日本人は知識をもとにした繊細な描写をとても大切にされますよね。これは、創作の上でとても大切にしていることでもあります。参考資料もない、見たことがないものを想像して情景を描く時も同じです」

そして代表作である長編小説『複眼人』もそのように創作したと、作品に対する思いを述べた。

「自分も見たことがない“ゴミの渦”が島とぶつかることについて書きました。この作品が出版された2011年に日本で東日本大震災が起こり、読者の中にはそのふたつを関連付けて捉える人もいたようです。そういった意味では、日本とのつながりが強い作品なのかもしれません。台湾も天災が多いですし、政治面での脅威、情報セキュリティの問題など、サステイナブルな発展を遂げるためにはどうしていくのがいいのか、多面的に考えることが必要でしょう。台湾はIT先進国として知られていますが、私にとっては台湾の自然環境こそがなにものにも代え難い唯一無二の存在です。そんな台湾の自然によって育まれた人々とその文化が花開いていくことが、私にとっての夢ですね」

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音楽、映画、文学と分野を交差する、台湾カルチャーの新たな面白さとは?

  • 文:近藤弥生子

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