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“セクハラ大魔王”河村たかしに直撃100分

「週刊文春」編集部
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SKEのリーダーを抱きよせる河村氏(2013年)
SKEのリーダーを抱きよせる河村氏(2013年)

 8月16日。給料3カ月分(約150万円)の返上を会見で発表した直後、名古屋市長の河村たかし氏(72)が小誌の取材に応じた。自宅兼事務所に入ると、虚ろな目をした河村氏が座っている。第一声は、

「情けないですわ。72歳にもなって」

金メダルをガブリ
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 事件が起きたのは8月4日。名古屋市出身の東京五輪ソフトボール日本代表・後藤希友(みう)選手(20、トヨタ自動車)から表敬訪問を受けた河村氏は、「(金メダルを)かけてちょうだい」と要求し、首からかけられると突然、「こうやって」と言いながらガブリと金メダルに噛みついた。カチッと音をたてて噛んだ後は満面の笑みで、「焼酎飲むのなら、わしも金メダルもらえるけど」などと意味不明な発言を連発。その後も暴走は止まらず、「旦那はええかね? 恋愛禁止かね?」などと発言。カメラマンが顔写真を撮っていると、後藤選手に向かって「アップに堪えれるかな」と言い放ったのだった――。

 衆院議員だった河村氏が名古屋市長になったのは09年のこと。「庶民派」をウリに自転車で街を練り歩く選挙戦を展開した河村氏は、当時過去最高の51万票を得て圧勝。今年4月に行われた市長選も制して4期目に突入している。

 今回の一件を受け、河村氏はハラスメント講習を受けたというが、市政関係者は、こう呆れる。

「講習で直る次元ではない。無礼で下品な言動は枚挙に暇がなく、いくら注意されても直らないんですわ。皇族の方々に対しても、です」

「かてゃ~こと言うな」

 地元の名門ホテルとして名高い名古屋観光ホテル。19年6月1日、同ホテル18階の広間では、植樹祭のために愛知県を訪れていた天皇と雅子さまとの昼食会が開かれていた。天皇の左側には河村市長が座り、宮内庁長官や警察庁長官など13名は、緊張の面持ちで席についていた。

天皇の隣で会食

「陛下が1人ずつ、名古屋の状況などについてご質問されるのですが、市長の番になり、その場が凍り付いたのです」(出席者)

 名古屋の経済について天皇が質問されると、河村氏は待ってましたとばかりに名古屋弁で「よ~聞いてちょった」と話し始め、「東京は、クソ威張っとるけども」などと、東京より名古屋が日本経済の中心だという主旨の話を続けたというのだ。

「陛下に向かって“クソ”という単語を使うなど余りに非常識で言語道断。その場で出席者から、『お言葉遣いにもう少しご配慮ください』と注意されていましたが、市長は聞く耳を持ちませんでした」(同前)

 別の関係者も、河村氏は、天皇が名古屋に到着された時から失礼極まりなかったと証言する。

「知事や政界関係者、県警本部長などが駅まで陛下をお出迎えに行ったときのこと。お召し列車の扉が開くと、みんな立礼をします。ところが市長は『よ~お越しくだしゃりました』などと勝手に喋りかけたのです。お見送りの際も、全員で黙礼し、目を合わせないよう頭を下げていました。ところが市長は、陛下に大きく手を振っていたんです。陛下も、思わず手をあげそうな雰囲気でした。後で市議会議長から、『そんなことしたらダメだ!』と注意されていましたが、市長は『喜んでらっしゃったがや。かてゃ~こと言うな』と意に介しませんでした」

 直前の5月29日にも、河村氏は同じホテルで秋篠宮との昼食会に参加。総勢12名の前に並んだ豪華なフランス料理を見た河村氏は、こう発言した。

「あんたが来たもんで、こんなうみゃーもんが食べれるぎゃあ」

 TPOを弁(わきま)えない言動は数多い。夏に行われた防災訓練では、猛暑の中、消防服を身にまとった隊員らが集まっているところに、シャツのボタンを3つほど開けて登場した河村氏。何を思ったかこう言い放った。

「おい、ビールあるか?」

 国際的に波紋を呼んだこともあった。

「2010年に、姉妹都市であるオーストラリアのシドニーへ、式典出席のために渡航した際、女性市長が河村市長のために手作りのバースデーケーキを焼いてくれたんです。ケーキは後で切り分けてお皿にサーブする流れだったのですが、河村市長は『センキュー、センキュー』と言いながら、そのままフォークでグサッと突き刺して食べちゃった。先方も怒っていました」(前出・市政関係者)

 目下、市役所には1万3000件以上の苦情の電話が入り、辞職を求める声もある。河村氏に聞いた。

――なんでメダルを噛んだのですか?

「彼女の善意でメダル持ちますか、と言われて。金メダルって本当に重いんですわ。それで嬉しなった。(噛んだのは)とっさですよ、まったく。本当に申し訳ないことです。不徳の致すところというか。選手にとってメダルは、愛の印だでね。あんとき、とっさに、『噛んでもええきゃ?』と言っときゃ、どうだったかなあ」

――後藤選手へのセクハラ発言もあった。

「僕は確かにバカなんです。調子に乗ってよ。時代は本当に変わってるんだなと。そういう面に気付かなんだ。昔だったら、三条河原で斬首ですか……」

 言葉によるセクハラだけではない。ボディタッチも常習的に行われていると話すのは市役所関係者だ。

「写真を撮る際など、とにかく女性と密着したがる市長を“セクハラ大魔王”と揶揄する職員もいます」

 ネット上では肩を寄せる河村氏の写真が出回るが、代表例が13年のもの。地元のアイドルグループSKE48の公演で、突如舞台袖から登場した河村氏が、当時リーダーだった高柳明音(あかね)の肩に手を回して強引に抱き寄せ、頬を寄せるという行為に及んだのだ。こうした例は数多ある。

“生きた化石だった”

――市長にとってセクハラとは何ですか?

「それは触ったりということですよ。『俺とキスせよ』と迫ったりとか、後ろから押し倒そうとしたりとか。ま、嫌がらせですわ。写真撮影の時に肩に手を回すのは、これは私、親愛の情ですわ。特に子供は100%緊張とれて和みます。女性には『触ってもええかね』と聞いて、今まで『嫌です』と断られたのは石川さゆりぐらいです」

 ただし、天皇のことになると河村氏は強く否定する。

「クソ威張っとるとは、しょっちゅう言っとることだで。でも、僕はそんな失礼なことは(天皇に)言わんということです。秋篠宮さんについては分からんけど、殿下と言ったと思いますよ。もう覚えてないけど、そんな失礼なことは言いません。言ったら大問題になりますよ。一定の礼儀は、心得てます」

 最後まで「秋篠宮さん」と呼ぶのが気になったが、天皇や皇族方に失礼なことはしていない、と再三強調する河村氏。複数の同席者が証言しているが、「それを書いたら名誉毀損で訴える」と息巻くのだ。

 政界では「恐妻家」としてつとに知られるが、その夫人にも話を聞いた。

――すぐに女性と肩を組んだり密着するのはセクハラだとの声がある。

「私からもお詫びを申し上げます。やめときゃいいのにと思うこともありました。主人も自分は“生きた化石だった”と言っています。最初は講習も『この年になって』と言っていましたが、謙虚な姿勢で学びなさいと行かせると、本人も受けてよかったと申しています」

 金メダルかじりの代償はあまりに大きかった。

source : 週刊文春 2021年8月26日号

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