渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

じげんりゅうの木刀

2021年09月08日 | open

薬丸どんの自顕流の小太刀だ。
野太刀木刀と共に流派の方からの
頂き物。
私は流派が違うので、これで実際に
稽古はしないが、かなり気に入って
いる。木刀の研究にもなる。
野太刀木刀は丸太みたいだ。
武蔵の削った櫂の木刀のように。

一般的な日本剣道形で使う小刀
(しょうとう)木刀との比較。

昔、ある試斬大会に出た。
自由刀法演武の時、ある参加者が、
真剣を蜻蛉(風)に構え(あれは取って
はいない。構えていた)、「チェス
トー」とはっきりした発音でバリト
ンの音階の大声で叫んでドタドタと
走りながら畳表を切った。
会場からは感嘆のどよめきが上がっ
た。

私は思った。
これは自顕流ではなく自己流だ、と。
素人が生半可な知識のコレクション
を貼り合わせてこしらえてやってる、
と。それに対し、会場のこの賛辞の
どよめきとは、みんな腰に刀を差し
ていながら、ど素人大集合なのか?
と。
本物の猿叫は「チェストー」などと
は一切発声しない。「キィーッ!!」
に近い甲高い雄叫びだ。
今目の前で何か大声だしてドタドタ
やってるのは、真っ赤なニセモン
ごわんど、と思った。

そうしたら、その人が大会優勝した。
ああ、物切り大会なんてのはこんな
もんか、と思った。
爾来、そこの大会には出ていない。
今から30年ほど前の話だ。
世の中ナンチャッテは多いし、それ
を見抜けない人も多い。

左:自作木刀。
自分が属する流派の手さばき刀術も
稽古できるように造形に工夫を入れ
た。
中:一般木刀。娘が中学の時に剣道
二段取得の剣道形の稽古で使用。
日本剣道形の稽古は私がつけた。
普段は木刀での稽古だが、一人稽古
では真剣を振らせて刃筋を覚えさせ
た。
右:一般の市販流派木刀。反り強し。


厚みの違い。
左の私の自作木刀は、二天一流の木
刀を参考に新陰流の木刀の工夫点も
採り入れて、土佐英信流の運刀さば
きに適した造形にした。


鋒(きっさき)部分。


土佐いあいの真剣はまっつぐ過ぎる
程にまっつぐだ。長さは定寸で短い。
あれは幕法を守りながらも、土佐の
流儀の抜刀術を駆使できるように設
定しているのだろうと推察する。
これは妄想ではなく、現実的な現象
を見ての推察。

直伝英信流17代宗家大江先生の刀。
現在は高知の英信流後継者の先生が
所持管理している。戊辰戦争での斬
り合いの痕跡がある。
大阪でのフランス兵との揉め事で、
土佐藩士を介錯したのが大江正路
(まさじ)先生だった。切腹の儀は、
次々と潔く果てるあまりに壮絶見事
な土佐藩士たちの割腹ぶりに、これ
では懲罰にはならんとフランス将官
が途中で中止させた。

ちなみに、1970年市ヶ谷自衛隊基地
での三島由紀夫氏の介錯刀は警察か
ら遺族に返却され、うちのMCの者が
遺族より委託されて所有者登録
て本刀を管理している。

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