サッカーJ1鳥栖の金明輝(キム・ミョンヒ)監督(40)が選手らに継続的に暴力などパワーハラスメント行為に及んでいる趣旨の告発文が日本サッカー協会に届いていたとスポーツ報知が報じた問題で、スポーツ報知は、金監督が6月の練習中、選手への「足払い」とされた行為でクラブから指揮停止処分を受けた際の映像を入手した。
映像は、クラブが当初下した3試合の指揮停止処分から「さらなる処分は不要」と判断した第三者委員会の調査で使用されたものとみられる。
事案は6月26日午前11時ごろ、鳥栖市北部グラウンドで発生。関係者によると、当時現場には選手30人弱、スタッフ約10人がおり、金監督を中心に11対11の戦術練習をしていた。
金監督は選手Aが不必要なファウルを行ったとして、交代を命じた。選手Aはベンチ付近へと移動し、給水を行っていた。金監督が足早に歩み寄ると、驚いたのか選手Aは1歩ほど後ずさり。その後、胸ぐらや背中付近を両手でつかみ、いったん引き寄せた。選手Aの重心が左に傾いたところを右足で払った。選手Aはバランスを大きく崩し転倒。背中、後頭部の順に地面に打ち付けた。
練習中のため、選手の目撃者は少なかったとみられるが、映像からは複数のスタッフが現場付近におり、倒れた直後の様子を目撃していたことが確認できる。選手Aは数秒後に立ち上がったものの、駆け寄るスタッフはいなかった。金監督が言葉を掛けた様子は確認されず、そのまま指導を続けている。
◆若狭勝弁護士、暴行罪成立する可能性高い
鳥栖・金監督の一連の行為に関し、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「監督側から『指導の一環だった』との弁解が出る可能性はあるが、暴行罪が成立する可能性が高い」と述べた。
暴行罪は一般的に、殴る、蹴るのほか、胸ぐらをつかむ、つばをかけるなど相手がけがをしなかった場合でも適用される。診断書などがある場合は、より重い傷害罪に該当することもある。
今回は、クラブ内で金監督を処分した形となっている。選手側が刑事処分を望む場合、捜査当局に被害届を提出し、刑事告訴をすることができる。
事件化した場合の動きについて、若狭氏は「選手・監督間で示談が成立するなどさまざまなケースが考えられる。警察の捜査が始まった場合、任意で監督らから事情を聞き、書類送検することも想定される」と説明。「一般的に、示談が成立しなくても初犯で情状面が良ければ起訴猶予だろう。捜査過程で他の暴行などが出てくれば罰金に処される可能性もある」との見解を示した。
◆金 明輝(キム・ミョンヒ)1981年5月8日、兵庫・伊丹市出身。40歳。尼崎朝鮮初中級学校、初芝橋本高を経て2000年千葉に加入。甲府や富山などでDFとしてプレーし、11年に現役引退。12年から指導者に転身し、14~15年に鳥栖U―15、16~18年途中まで鳥栖U―18監督。18年途中にトップチーム監督に就任。一度は退任するが、19年途中から再び指揮を執る。J2通算37試合1得点。J1でのプレー経験はなし。186センチ、76キロ。