くじらびとの作品情報・感想・評価

くじらびと2021年製作の映画)

上映日:2021年09月03日

製作国:

上映時間:113分

あらすじ

インドネシア・ラマレラ村。人口1500人の小さな村。住民は互いの和を最も大切なものとし、自然の恵に感謝の祈りをささげ、言い伝えを守りながら生活をしている。中でもラマファと呼ばれるくじらのモリ打ち漁師たちは最も尊敬される存在だ。年間10頭獲れれば村人全員が暮らしていける。ともすれば死と隣り合わせのクジラ漁で、それでも彼らはモリ1本で巨大なマッコウクジラに挑む。子供たちは彼らの姿を見て、自分もラマフ…

インドネシア・ラマレラ村。人口1500人の小さな村。住民は互いの和を最も大切なものとし、自然の恵に感謝の祈りをささげ、言い伝えを守りながら生活をしている。中でもラマファと呼ばれるくじらのモリ打ち漁師たちは最も尊敬される存在だ。年間10頭獲れれば村人全員が暮らしていける。ともすれば死と隣り合わせのクジラ漁で、それでも彼らはモリ1本で巨大なマッコウクジラに挑む。子供たちは彼らの姿を見て、自分もラマファになりたいと夢を見る。そうして400年、ラマレラの人々はここで暮らしてきた。2018年、ラマファのひとり、ベンジャミンが漁の最中に命を落とした。家族も村民も深い悲しみに暮れる中、父で舟作りの名人・イグナシウスはバラバラになりそうな家族の結束の象徴として、伝統の鯨舟を作り直すことを決心。1年後、彼らの新しい舟はまだ見ぬ鯨を目指し大海に漕ぎ出すー。

監督

エグゼクティブプロデューサー

「くじらびと」に投稿された感想・評価

siena

sienaの感想・評価

4.7
もっと大きなスクリーンで観たかった。
可能な限り大きなスクリーンで観た方が良い。まるで自分も一緒に海の上にいるかのように没入できる、圧倒的な作品。

貨幣経済社会が豊かだとも、幸福だとも、文化的に高度だとも決して限らない。

少なくともアミニズムと神道と仏教が同居した世界観で育って暮らしてきた日本人としては、この作品に出てくる人々が語る生活には違和感はなく、むしろ親和性ばかりを覚えた。

文化的な側面だけでなく、もちろん映像も、素晴らしい。
よくこの瞬間を画として捉えることができたな、と思う映像や写真の連続。
漁の最中のあの音、映像、色彩、波の音と船の揺れ。潮の香りがしないことが不思議なくらいだった。
bunroku

bunrokuの感想・評価

-
圧倒的な映像美。村の生活をとらえる撮影は細やかで美しく、後半の鯨漁のシーンになると自分も小船に乗って漁に出ているみたいな迫力に満ちている。捕鯨に賛成か反対か、なんていうありふれた感情的な対立が霞んでしまうような、先祖代々つづいている鯨との命をかけた切っても切れない関係。だから感情的にならないように見ていこうと思いながら見てたんだけど、たくさんの銛を打ち込まれていく鯨を見ているとやはり涙が出そうになりました。なこと言いながら、おでんのコロとかサエズリとかに舌鼓を打つぼくは、村人からも鯨さんからも唾棄すべき存在なんやろね😞
Tagachang

Tagachangの感想・評価

4.7
見終わった後、しばらく波の音が耳に残り、潮の香りが体に染みついているような気がして、さらに、ずっと船に揺られているような気分が続いた。
手作りの船と銛で巨大な鯨を捕まえる。そんな伝統的な鯨漁を続けてきたラマレラの村の人々の生活、絆、信仰、漁、船大工、銛打ち、などなど次々と現れる物語が壮大な鯨漁に全て繋がっていく。
海のそばで育った私は、海を見ると、その大きさに圧倒されることがあるが、この映画では海の大きさや生命の力に圧倒されていく。そして繰り広げられるすさまじい鯨漁。鯨と人との命をかけた戦い。船の上だけでなく、ドローンを駆使して様々な角度から、おそらく人類がいまだかつて見たことのない命の戦いの光景を目にすることができる。感動というよりは興奮だった。思わず、すげえ!と声を出したくなる。気づくと鳥肌が立っていた。
カメラの視線は、村人たちの側だけでなく、鯨の側にも向けられる。真っ赤な血を流す鯨。真っ赤な血とともに潮を吹く鯨。鯨の悲鳴。それは、とても大きな海の中の、とても大きな生命の声。それに比べれば吹けば飛ぶような手作りの船と銛だけで闘いを挑む人々はあまりにちっぽけだ。だが、船も、銛も、銛打ちも、人々はそこで生きている生命の意義を感じることだろう。そして鯨に感謝し、鯨を育む海に感謝する。その村人たちの姿、鯨の姿から、心の中の何かが揺り動かされる。
これはフィクションではない。ドキュメンタリーなのだ。
観終わった時、ラマレラ村に長きにわたり旅に出て帰ってきたような気分だった。
やっぱりドキュメンタリーはスタミナがもたない……。
記憶が途中からありません。


ただ余分な音楽は使わず波音、風を活かした天然の
臨場感やインドネシア周辺の透きとおった真っ青で
蠢く水面は圧倒的。
鯨が登場する前から
海の底知れないエネルギーを最大表現していて
海洋恐怖症の方はお席で溺れてしまうかも。

「鯨は死ぬときに目を閉じる唯一の魚だ」
哺乳類ですけどっていうのは野暮なのよ。
決死隊vsクジラのラストバトルが最高。
銛で刺されたクジラの周りが鮮血で染まってゆく空撮シーンがとても良かった。
真っ赤な海で暴れ回るクジラと手作り木造船のぶつかり合いは手に汗握る大熱戦。
ここ最近で最も血湧き肉躍る海獣映画でした。
これはすごいドキュメンタリだった。
21世紀の現代に、クジラに、銛をもって体当たりしてしとめる決死隊のような漁があるとは、驚いた。
しかも小モーターのみの、ほとんど手漕ぎの小舟数隻で迫るとは。
その模様を、小舟の同乗撮影、さらに見事なドローン撮影もくわえて、あれほど鮮明に、迫力ある映像でとらえたことも、信じられなかった。
カメラが乗っている小舟に、クジラが体当たりしてくる場面など、すごい迫真性だった。
当初は、捕鯨文化を擁護するタイプの内容かと思ったのだが、そんなものは超越した、人間が裸で大自然にぶつかって生きていく姿を描いた、崇高なドキュメンタリだった。
強いていえば、あの村の学校など、漁生活以外の様子も、すこし見たかった。
圧倒的映像美。こういう海外の村社会の文化だったり生活を描いたリアルドキュメントは好物なので見応えがありました。迫力が凄いからせっかくなら映画館で観た方が間違いないかも。
まろ

まろの感想・評価

4.0
2021年日本公開映画で面白かった順位:24/185
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★★★
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★★

これはメチャクチャ面白いドキュメンタリーだった!
いやだって、生身の人間たちが鯨に立ち向かうんだよ?
しかも、シンプルな木製の船に乗って、武器はモリのみという古来の手法で。
あおーいそら、しろーいくも、ひろーいうみで繰り広げられる命がけのバトルは、まさにモンスターハンターそのものだった。
ちなみに、海外の作品かと思いきや、作られたのは日本の方々です。

漁師たちが乗る船はテナと呼ばれてるんだけど、“生きている”という考えから、鉄の釘は一切使わない。
木や植物など、森で採れる素材しか使わないんだ。
しかも計測や設計図もない。
専門の人たちの経験と勘だけで作られる。

その船10隻ほどを使い、鯨を狩りに行く。
1隻あたり10人も乗ってなかったかな。
鯨って海の奥深くにいるイメージしかないんだけど、潮吹きで海面に来たところを狙い撃ち。

このモリを撃つタイミングが難しいらしい。
頃合いを見計らって、ジャンプして鯨の体にグサリ。
大量の出血により、青い海が一気にスイカジュースのごとく真っ赤に。
1本じゃ死なないから、2本3本と撃つことも。
意外なのが、それで死ぬんだよ、鯨。
そんなモリじゃ大したダメージなさそうなんだけど、のたうちまわった後に力尽きる。

人間たちは当然、常に死と隣り合わせ。
鯨が暴れて尾ビレで叩きつけられて亡くなる人もいる。
海中に逃げ込むときに網が絡まっていっしょに引きずり込まれる人もいる。

そんな危険なことを何百年もの間、ずっとこの村の人たちは続けているんだ。
鯨以外の魚を獲ることもあるけど、それでも実際は1ヶ月間収穫なしのときもザラにあるらしい。
彼らにとっての鯨漁は、まさに死活問題なわけだ。

驚くべきなのはやっぱり鯨の大きさ。
浜辺までは船で運ぶけど、そこからは大人40〜50人で陸に引っ張り上げる。
そこで、ゲームに出てくる武器かと思うぐらい大きな包丁で細かく切り分けるんだ。
ダンボールみたいな直方体の肉塊を各家庭に渡すんだよ。
肉だけじゃなく、皮や脂も含めて余すことなく活用するのもラマレラ村ならでは。

この村、貨幣はあるんだろうけど、この映画では使われている様子はなかったな。
週1で開かれるバザーで、海で採れたものと森で採れたものとで物々交換。
鯨の肉は人気らしく、1切れでバナナ12本と交換できるらしい。
その基準はちょっとわからなかったけど(笑)

村人の中には、かつてバリ島で働いて稼いでいた人もいたけど、お金に追われる生活に嫌気がさし、この村に戻ってきたのだとか。
社会生活の仕組みが、先進国の都会とはまるで違うんだよね。
かといって、ラマレラ村の人たちが、未開の地に住む先住民とかではない。
ただ、最新技術や効率化というよりも、伝統や習わしを重んじる文化なんだと思う。

都会に住むと、こういう自然に囲まれ、自然と共に生きることに憧れを持つこともあるだろう。
そんなとき、この映画を観ると、そこに憧れを持つことと、そこで暮らすことの間には埋められない差があることがわかる。
村人たちはお互い協力し合って、笑いながらたくましく生活している。
その一方で、不慮の事故で大切な人を亡くすこともめずらしくはない。

生きるために命がけで鯨と対峙するラマレラ村の人々の勇姿と、広大な海、強大な鯨は、映画館の大きなスクリーンでその目に焼きつけて欲しい。
シソ

シソの感想・評価

-
すごい映像だったな…
鯨の声ってあんな感じなのか。
人が生きようとする様。
鯨などの海洋生物が生きようとする様。
を見せてくれた一作。圧巻。
村にフォーカスしておきながら、あの男の子にもさらにフォーカスしているのはよかった。
先日、幸運なことに監督の石川梵さんとお会いする機会があり、お話しさせていただいた。その時に石川さんが「くじらびとは体験型ドキュメンタリーなんだよ。」と仰っていた。正にその通りだった。

ナレーションや音楽を多用しない。迫力ある鯨漁のシーンばかりを見せたりもしない。ラマレラ村の生活や村民たちの鯨漁への思いを丁寧に映し、その上で映画後半、鯨との命のやり取りをこれでもかと見せてくれる。非常にドラマティックな構成だ。そのおかげで、冒頭の漁のシーンと後半の漁のシーンは全く違ったものに僕の眼には映った。それは祭りや儀式に近いもの。いのちの祭り。波打つスピリチュアリティ。神秘的体験だった。観客に映像だけでそれを感じさせる石川監督の手腕は凄まじい。
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