老親が痴呆状態になると、どの本もどの弁護士も、「成年後見人の申し立てをしましょう。成年後見人が選ばれれば、ご両親が痴呆でも、法律行為を代わって行うことができます。」と説明します。
しかし、実際は、これほど使い勝手が悪い制度はありません。
今から数年前までは、老親の長男や長女が成年後見人になれたのです。ところが、最高裁が調査したところ、親族が成年後見人になると、その約3割が老親のお金を使い込んでいたことが分かったので、それからは、成年後見人は、見ず知らずの弁護士や司法書士などを家庭裁判所が勝手に選任してしまいます。
そして、弁護士や司法書士の成年後見人は、管理している財産から、毎月4万円から5万円を報酬として受け取ることを家庭裁判所が勝手に決めてしまいます。
それら成年後見人は、老親のためのみにしか財産を使わせませんし、どのように使ったかを長男や長女に説明も一切しないのです。
老親が死亡したときに成年後見人も任務が終了しますが、その時でさえも、成年後見人は簡単な残余財産報告書を家庭裁判所に提出するだけで、残った財産をそのまま長男や長女の相続人に引き渡すだけです。
確かに、老親の財産を完璧に守り通すことが目的ならば、この成年後見人制度は意味があります(つまり、相続人予定者のなかで争いが起きる場合は、この成年後見人を選定するのがベストです)。
でも、相続人予定者の中で争いがなく長男が引き継げばよいと皆が思っている場合や、子供1人しか相続人がいない場合などは、この制度は老親と子供たちの幸せな生活の邪魔でしかありません。
老親も、痴呆にならなければ、自分の財産から孫の卒業や入社、結婚のたびに、少なくない金額のお金を渡してやりたいと思っていたはずですし、長男や長女ら家族の食事代や旅行代も喜んで支出していたはずです。
しかし、家庭裁判所や弁護士等の成年後見人は、そのような支出を一切認めません。
では、老親が痴呆になりそうな場合は、どうしたら良いか?
一つの答えは、信託会社にまかせるのではなく、長男や長女が老親の財産について信託を受けて、その名義を長男や長女に変更し、信託契約に基づく支出をしていくことです。
この分野は、平成19年から始まった制度であり、その具体的運用や税務上の問題など、未解決の部分がありますが、成年後見人よりはましだと思います。
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