5話 ギルド経営
「本当にロイド様に感謝を伝えれてよかったです」
エリスは涙交じりに、満足げな表情をして言った。
「それにしても、ロイド様が一人で出歩くなんて珍しいですね?」
「ん? 珍しい?」
「いつもは太陽の化身の部下たちと一緒に歩いていて、話しかけられなかったので」
どうやら彼女は今までも何度か僕に話しかけようとしてくれていたらしい。
だが、太陽の化身の幹部ともなれば、そう簡単に接点を持つことが難しいのだ。
そんな僕が何故アレンたち、太陽の化身に所属している冒険者に職業を認知されていなかったのか。
やはり、カイロスの手が回っていたためだろう。
僕が指揮を執っていた部隊は流石に理解しているだろうが、他の部隊の者には他部隊の部隊長程度にしか知られていなかったのだ。
僕は戦闘職でないため、撃破数などのノルマも達成できるはずもない。
皆からの僕の認識は
僕が見つけてきた人材は全てカイロスが見つけてきたことになっているのだろう。
「僕は太陽の化身を追放されたんですよ」
僕は少し悩んだ末に追放されたことを言うことにした。
彼女と僕は出会って一時間も満たない関係である。本来であれば、まだ公になっていない機密事項を僕が口にするはずもない。
だが、どこか彼女とは長い関係になる、そんな気がしたのだ。
彼女は僕の言葉を聞いて、納得できないとでも言いたげに首を傾げていた。
「何故でしょうか? ロイド様ともなる
「それはね……」
エリスについて僕も尋ねたいことは沢山ある。
そのため、僕は僕が知りうる情報を全て彼女に教えることにした。
「そうですか……それは良かったですね!」
「ん? 良かった?」
可哀そうに、ならまだしも、良かったと言われるとは思っていなかったため、僕は戸惑いを隠せなかった。
「だってそんなギルドはロイド様にふさわしくないですよ! ロイド様の力量を見誤るギルドなんて所詮そのレベルです!」
エリスは太陽の化身が国内最強ギルドであるということを承知の上で告げた。
その表情からは一切、冗談を言っている様子も見えない。
「ロイド様ってこれからしたいこととかあります?」
「一応、ソロでダンジョンの上層でモンスターを狩って生きながらえようとは思ってます」
僕には冒険者の素質がない。それは自分自身が
もし、僕が僕に助言を与えるならこう言うだろう。
『君には冒険者は向いていない』
それは彼女も分かっているはずだ。
だから、彼女は首を左右に振る。
「絶対にそれはダメです」
彼女は親切心を持って僕に言ってくれているのだ。僕はその意見を無下にするわけではない。
しかし、僕はまだ夢を追いかけていたい。冒険者の職に就いて夢を見ていたいのだ。
僕は覚悟を持ってエリスに伝えようとする。
「でも、僕は冒険者の職に就いていたいん――」
「ロイド様。ギルドを作りませんか?」
「……え?」
彼女は僕の言葉を遮るようにして告げる。
僕の聞き間違えであろうか。ギルドを自分たちで作る、などと大それたことを言った気がしたのだが。
そんな疑心暗鬼な僕に理解させるようにエリスは言う。
「私とともに、ロイド様のギルドを作りませんか?」