ゼロはムリ。
デルタ株でゲームのルールが変わるなか、ベトナム、オーストラリアに続いてシンガポールもゼロコロナの夢を捨て、ウィズコロナに方針転換しました。
リー・シェンロン首相が日曜のナショナルデー(独立記念日)の式典の席で明らかにしたもの。成人の8割が完全接種を済ませ、マルタ(82%)に次ぐ世界第2位のワクチン接種率を誇るシンガポールをもってしても完全撲滅は非現実的との判断です。
ゼロコロナで粘ってきたのはシンガポール(人口約570万人)とニュージーランド(同約500万人)、台湾、中国、ベトナム、オーストラリアの各国ですが、これで残りはニュージーランド・台・中のみとなりました。
リー首相は演説のなかで次のように述べています。
「長期ロックダウンしたところで、もはやCOVID-19の感染をゼロにすることはできない。そこで、次段階ではインフルエンザや水ぼうそうのようなエンデミック(風土病)になる前提でCOVID-19に備える必要がある」
「幸いにもワクチンと予防強化をもってあたればウイルスとの共存は可能。COVIDレジリエント(耐性型)社会になることも可能だ」
迅速なコロナ対策で感染累計約67,000人、死亡わずか55人に抑えてきたシンガポール。今年も感染は1日30人前後で推移してきたのですが、7月から急に増え最近は1日平均150人になっています。
でも首相はゼロをあきらめただけであって、予防をあきらめたわけではない!と強調してますよ。
「その都度ブレーキを踏まなければならないことはあるが、急ブレーキはやめにしたい。そのため次のフェーズではステップ・バイ・ステップで進めていく。一部の国のようにいきなりビッグバンというのではなく、状況が上向く手応えを確かめながら、慎重に少しずつ進めていければ」
ここでいう「ビッグバン」というのはたぶん英国かな…。EU域内最高水準のワクチン接種率を達成し、意気揚々と7月にフリーダムデイ宣言して、コロナ規制を全面解除してノーマスクで浮かれてたら感染・死亡ともにコロナがリターン。ワクチンか感染でもう国民の大多数は抗体ができちゃってる気もするんですが、秋口になって新規感染が1日35,493人(9月1日)という予断を許さない状況が続いています。
ひょえ〜1日約35,000人かあ!!!!と思って米国のを今見たら、いつのまにか1日新規感染21万人(9月1日)になってるし…。日本の10倍。冬が怖いよ…。
ちなみにゼロコロナでがんばってたベトナムも5月からの感染爆発から抜けきれていなくて、現在も1日の新規感染者数は11,434人(同)。最近ゼロコロナを放棄したオーストラリアも6月からの感染爆発で、1日の新規感染者は1,242人(同)。
感染1名で全土ロックダウンのニュージーランドはまだあきらめていません。レベル4の厳戒態勢が9月中旬まで続く見込みです。隣のオーストラリア首相には「デルタ根絶なんてムリムリ、やめたほうがいいよ」と言われてますが、ジャシンダ・アーダーン首相の決断を国民はおおむね支持しており、幽霊のデルタ株とコンタクト・トレーサー(接触追跡者)の熾烈な戦いが世界の注目を集めています。
まあ、シンガポール政府上層部も敗北宣言とは思われたくないようで、首相も勝利のアピールに躍起。日曜のツイートではこう言ってますよ。
「危機はCOVID-19で終わりではない。試練のときはいずれまたくる。シビアなときもあるだろう。そしておのおののジェネレーションがこう問うのだ。『われわれはサバイブできるのか』『シンガポールは乗り切れるのか』。その未来の世代に向けて私はこう言いたい。『われわれも乗り切った。大丈夫だ、また乗り切れる。Majulah Singapura(進めシンガポール)!』」
そう気炎をあげるシンガポールから遠く離れた南アでは、新たなC.1.2変異株が爆誕。年41.8回変異する驚異の変幻スピード(当初推定の1.8倍)で人間界を惑わしそうな勢いです。インドでもデルタ株サブリネージAY.12が確認され、イスラエルでファイザーワクチンの有効性を半減させてブースター投下ですし、まだまだいたちごっこは続きそうですね。
Source: The Straits Times, Business Standard, Twitter