差別的投稿の経緯・問題点・今後の方針

令和3年9月2日

当協会公式アカウントによるTwitterにおける多数の差別的投稿に関して

 

尾瀬ガイド協会

会長 石塚 照久

 

このたびは、尾瀬ガイド協会(以下「当協会」といいます。)の公式Twitterアカウント(「[公式]尾瀬ガイド協会」@ozekouhou。以下「本件アカウント」といいます。)が複数の差別的な投稿を行った件及びその後の当協会の不適切な対応につきまして、衷心よりお詫び申し上げます。

 本件につきまして、当協会として調査を行い、弁護士関与の下、これらの投稿の問題点を改めて明らかにするとともに、このような事態を生じさせてしまった原因を明確にし、担当者の処分、全会員の研修等を含む、信頼回復のための今後の取組の予定等について検討いたしましたので、以下のとおりご報告させていただきます。

 

第1 本件の経緯について

     当協会は、2019年(平成31年・令和元年)より、当協会内に設置された広報委員会でホームページの管理を行うとともに、2020年(令和2年)より、広報委員会の中でSNS担当者(広報委員長・Twitter投稿者)を決め、投稿を始めました。投稿前に投稿内容を確認する仕組みはありませんでした。

     SNS担当者が、本年8月21日、本件アカウントより、「例え、都市部がほぼほぼロックダウン状態になったとしても、貴方の心と尾瀬の湿原は広大です。アフガニスタンやミャンマー、ロヒンギャに比べれば幸せです」という投稿を行いました。

それをご覧になった方が当協会のホームページのお問い合わせフォームに「不適切なので削除した方が良い」とのメールを送信してくださいました。

当協会専務理事が、そのメールを受けてツイッターを確認したところ、確かにそのような投稿がなされていることを確認しました。

また、同時に、本件アカウントは、過去には

「現在、たくさんのお花が開花中!まるで、女性専用車です たくさんの『とってもいい香り』思わず、息を吸い込みます」

「貴方だけにこっそりお伝えします ベラルーシの女性の平均身長は 166cmです。ベラルーシはロシアやウクライナ、ポーランド、リトアニアに囲まれた国です。このあたりは美人が多い国で有名です」

「貴方だけにこっそりお伝えします なぜ、『ベラルーシは美人が多いのか?』お母さんもお父さんも美人(イケメン)が多いからです」

などの投稿(以下あわせて「本件各投稿」といいます。)をしていたことも確認できました。

     令和3年8月21日の投稿後、お問い合わせフォームからの指摘を受けて、当協会は、上記Twitter運営担当広報委員長(投稿者)に対し、本件アカウントとしてTwitter上に謝罪文を掲載させました。

謝罪文掲載は、当協会が本件を把握した約4時間後でした。

しかし、この謝罪文は、誤字があるのみならず、本件各投稿の問題の所在が的確に把握されているとは到底いえない不十分極まりないものでした。

     8月22日、Twitter上に再度、謝罪文を掲載させ、本件の対応を担当者から当協会役員会に変更しました。

     8月23日、Twitterの本件アカウントを停止しました。また、役員会を開催して関係者への報告を行うとともに、ホームページ上に会長名で謝罪文を掲載しました。

なお、このときホームページ上に掲載した謝罪文にも「人種差別だと受け取られかねない」と、問題を矮小化するような表現を使っておりました。

     8月24日、前日に掲載した謝罪文に批判をいただいたことから「人権侵害の表現を含む不適切な内容」と表現を訂正しました。また、役員会を開催し、今後の対応を協議しました。

 

第2 本件各投稿の問題点について

     本件アカウントは、尾瀬ガイド協会という任意団体の公式アカウントです。そして、尾瀬ガイド協会は、日本の宝である国立公園「尾瀬」の自然を守りながら、尾瀬の魅力を発信すること、尾瀬を訪れる方々に、尾瀬の素晴らしさ、環境の素晴らしさ、エコツーリズムの素晴らしさ等を余すところなくお伝えする「ガイド」の認定や育成等を行う団体です。

尾瀬に訪れてくださる、あるいは尾瀬に関心を持って下さる方々は、年齢も、性別も、国籍も、思想信条も全く関係ありません。

当協会及び当協会所属ガイドは、そのような様々なバックグラウンドを持つ方々全員に、尾瀬の素晴らしさ、自然の素晴らしさ等をお伝えする責務があります。

それにもかかわらず、本件各投稿は、以下に述べるように、様々な観点から見て差別的であり、人を傷つけるものであって、到底許されるものではないといわざるを得ません。

     「例え、都市部がほぼほぼロックダウン状態になったとしても、貴方の心と尾瀬の湿原は広大です。アフガニスタンやミャンマー、ロヒンギャに比べれば幸せです」との投稿について

居住する場所がロックダウンされて精神的にも経済的にも苦境に立たされている方々は世界中にたくさんいらっしゃいます。日本においてもロックダウンの必要性が叫ばれ始めている中、日常生活や生業等不安に思われる方々が多くいらっしゃると思います。そのような方々を揶揄するような投稿は、適切ではありません。

また、アフガニスタンやミャンマー、ロヒンギャの皆さんの中には、現に苦痛を強いられ、日常の生活ができず、必死で命をつないでいる方々が多数いらっしゃいます。

その方々の苦境を尾瀬の素晴らしさを引き立たせるための引き合いに出すことなど、言語道断です。極めて差別的な投稿であるといわざるを得ません。

     「現在、たくさんのお花が開花中!まるで、女性専用車です たくさんの『とってもいい香り』思わず、息を吸い込みます」との投稿について

現在多くの公共交通機関において採用されている女性専用車は、歴史的に見て、車内における迷惑行為や痴漢行為等、女性の尊厳を蹂躙するような行為から女性を守り、女性が安心して乗車できるために導入されたものです。

この投稿は、男性の立場から、女性専用車に入り、とってもいい香りがするとして、思わず息を吸い込むかのような行為を示唆しています。

多くの女性に嫌悪感を与えるセクシャルハラスメント的投稿、女性差別的投稿であると同時に、性犯罪で苦しむ女性を守る場の一つである女性専用車を揶揄するかのような投稿であって、不適切極まりないものといわざるを得ません。

     「貴方だけにこっそりお伝えします ベラルーシの女性の平均身長は 166cmです。ベラルーシはロシアやウクライナ、ポーランド、リトアニアに囲まれた国です。このあたりは美人が多い国で有名です」「貴方だけにこっそりお伝えします なぜ、『ベラルーシは美人が多いのか?』お母さんもお父さんも美人(イケメン)が多いからです」との投稿について

これらの投稿は、特定の人種・国籍は高身長で美しい人間が多いという、典型的な人種差別・民族差別的投稿です。また、美しくない人間よりも美しい人間の方が価値が高いという、外見差別(ルッキズム)の発露でもあります。

     このほかにも、本件アカウントによる投稿には、不適切なものが複数存在しており、閲覧する方々を傷つけ、あるいは嫌悪感を与える極めて不適当な投稿であったことは明らかです。

前述のとおり、当協会及び当協会所属ガイドは、多様なバックグラウンドを持つ方々皆様に、尾瀬の素晴らしさ、自然の素晴らしさ等をお伝えする責務があります。そのような責務を放棄して、このような差別的な投稿を行い、閲覧者の方々を傷つけ、苦しませ、不快な思いをさせ、人権を侵害することは、到底許されるものではありません。

このような投稿をご覧になって、当協会所属ガイドの利用に不安を覚える方々も多数いらっしゃると思います。これは「『あなた』と創る『みんな』の尾瀬」という、すべての人たちで協調して尾瀬をめざす姿に創りあげるという新・尾瀬ビジョンの理念に反するものでもあります。

当協会として、すべての皆様に対し、改めて衷心よりお詫び申し上げます。

誠に申し訳ございませんでした。

 

第3 このような事態を生じさせた原因について

     今般、当協会の公式アカウントがこのような投稿を行い、その後においても不適切な対応をしてしまったことの原因は、以下のとおりであると考えております。

        投稿者はもちろん、当協会の役員も、人権感覚や差別に関する意識が低かったこと

 投稿者自身に人権感覚や差別に関する意識が低かったことはいうまでもありません。しかしながら、これは投稿者だけの問題ではありません。当協会の役員も、豊かな人権感覚を有していれば、そもそもSNSの運用を特定の一人に任せておくというような危険な取り扱いを是とするはずがありませんでした。

また、本件各投稿の問題点が指摘された後、当協会専務理事が担当者にそのまま謝罪文を書かせたこと、その謝罪文の内容もチェックしていなかったこと、同役員がホームページ上に掲載した謝罪文の内容も不十分なものであったこと、身内をかばうような投稿を行ってしまったこと等からすれば、当協会の役員自体、豊かな人権感覚を有していたとは到底いえるものではありませんでした。

        SNSの運用を担当者のみに任せ、他の者のチェックがなかったこと

SNSは何億人という利用者がいるものも多く、全世界に向けて発信されるものです。当協会の公式アカウントから発信される情報というのは、いわば当協会の構成員全体の総意として発信されているものと受け取られることが通常です。

そうであれば、投稿内容については、しかるべき立場の複数名で慎重に精査する必要がありました。

これを怠り、一人の人間が、何のチェックも受けずに自由に投稿させていたという当協会の体制自体が問題でした。

        SNSの影響等の知識が乏しかったこと

SNSは、全世界に向けて魅力等を発信できるという素晴らしいツールである一方、使い方を間違えると、今回のように多くの方々を傷つけ、自分たちが最も守ろうとしているもの(当協会でいうと尾瀬の魅力等がこれにあたります。)の価値をも毀損させてしまう危険性のあるものです。

 様々な企業や団体では、SNSの運用について自ら研鑽を積んだり、専門的な研修を受けたりして、知識を得た方々が運用に関与していると伺っております。

そのような知識を持たずに、自らと同じ価値観を持った仲間うちでの閉鎖的な会話と同じように、公式アカウントを用いて、極めて不適切な運用を行ったことも大きな問題でした。

        協会としての危機管理が準備できていなかったこと

問題発覚後、当協会は統一的な対応ができず、投稿者に継続対応を委ねて謝罪文を出させ、問題が拡大するや、当協会執行部で引き取り、別の謝罪文を出すなど、対応が二転三転しました。このことは、当協会の信用を大いに失墜させ、傷ついた方々をさらに苦しめることになってしまいました。

本件は当協会にとって緊急事態でもありました。

このような緊急時にどのような動きをするのかを規律する組織体制が準備できておらず、それぞれの役員が場当たり的に動いたことで、尾瀬を毀損し、人々をさらに苦しめてしまいました。

        小括

本件の原因はこれらの他にも多く挙げられるところですが、大きな問題点としては大要、これらの4つに分類いたしました。

 

第4 今後の取り組み予定

     当協会構成員の人権意識の向上のために講習会や勉強会を開催します。

今回の一番の問題点は、投稿者のみならず当協会の運営に携わる役員らについて、人権感覚や差別に関する意識が低かったことが挙げられます。

私たちは、豊かな人権感覚を学ぶ必要があります。当協会役員や理事のみならず、この機会に会員全体を対象とする、人権に関する講習会や勉強会を開催します。

     SNSやホームページ等の投稿については、複数名でチェックする体制を構築します。

SNSやホームページを取り扱う専門部署を設立し、複数名による共同管理とします。

     SNSやホームページの運用について、専門的な研修を実施します。

前述したSNSやホームページを取り扱う専門部署に所属する会員及び希望者に対し、これらを扱うにあたって必要不可欠な知識を持ってもらうべく、必要な研修を実施します。

     外部専門家に関与していただき組織形態を見直します。

コンプライアンス(規範遵守)やガバナンス(管理体制)の知識に長けた専門家に関与していただき、組織形態の抜本的な見直しを行います。

     関係者の処分を行います。

今回、このような事態を引き起こした責任のある人間を、厳正に処分します。

 

第5 関係者の人事について

     今回の事態に関して責任を有する者について、以下のとおり処分等する予定です。

        投稿者(会員・理事・広報委員長)について

・理事会において、会員資格を剥奪(除名)する。

・理事会において、理事を解任する。

・理事会において、広報委員長を解任する。

        会長について

当協会の最高責任者として本件の責任を取り、会長職を辞任する。

今後、新たな会長が決まるまでは、副会長が会長の職務を代理する。

        専務理事について

本件への対応を含む事務を総括する専務理事は、本件を矮小化して身内をかばうかのような謝罪文を作成・掲載したことも含めて本件の責任を取り、専務理事職を辞任する。

        広報委員会の解散と新組織の設立について

今回の事態を受けて、Twitterやホームページなどの管理運営体制が全く体をなしていなかった広報委員会は、理事会において運営細則を改訂し、解散します。

その上で、当面の間、SNSは休止、ホームページについては副会長を中心とする理事複数名にて運営に必要な最低限の更新のみ行うこととします。

外部専門家に関与していただき、専門の部署を構築し、メンバーに対して必要な研修等を受講させた後、SNSの運営を順次再開します。

 

第6 最後に

当協会は、今回の不祥事により、たくさんの方々を傷付け、ご迷惑をおかけしてしまいました。

当協会として、できる限りの取り組みを行ってまいりますが、失われた信頼・信用は一朝一夕で戻るものではありません。

ゼロからではなくマイナスからのスタートであること、信頼回復への道のりは極めて厳しいものであることを当協会全体として重く受け止め、信頼回復に努める所存です。

このたびは本当に申し訳ございませんでした。