ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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IF HAGE

こんばんは、浅井虎徹です。試験2日目が終わったつもりだったけど、忘れてたよこの夜の暇っぷり。まーじでやることが何も無い。引くほど暇だ……。

 

日中そこまで肉体労働してないから20時前に眠れる訳も無い。ホントに龍園と話すしかないな。テント内で相変わらずカッコつけてるアホの同居人に声をかける。

 

「そうだ龍園、アルベルトがカロリー不足で倒れかけてたって」

 

ちょっと過剰に言っちゃお。

 

「……どういうことだ」

 

「交換食料のアレだと、俺らでもメシちょっと足りないじゃん?アルベルトなら言わずもがなって感じだったみたい。今はバナナとか食って大丈夫とは言ってたけど、これからは1回2食分ずつ食っていいはずって伝えといたよ」

 

「そうか……」

 

「いやはや、気付かなかったね」

 

「あぁ。……アルベルトだけじゃなく、他の奴らも下手したらアレを1日2食分だと足りなくなるな。今日持ってきてた分もあるが、明日の午前は普通に食料を取ってこさせるか」

 

「良いと思う」

 

破壊活動じゃなくて、他クラスもやってる無人島生活。本来の姿だな。

 

「俺からも好きなだけ食えと言っておく。……助かった」

 

なんだ?デレた?

 

「ん、まぁ……。あ、いやでも気付いたのは石崎だよ。アイツ意外と良いヤツだ、頭悪いけど。もうちょい優しくしたら?」

 

「……。」

 

……なんで黙るんだよ!

 

 

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「あとアレだ、龍園、他クラスのリーダーだけど、見抜けたのが1人だけとかだったらどうすんの?」

 

本来であれば、何も考えずに『Cクラスのリーダーをリタイア交代させて、指名失敗させて、わーい!』だったけど、ハゲのせいで選択肢を考える必要が出てきてしまった。

 

当初の予定では、

 

Cクラスのリーダー情報を他クラスに売る

(CP50×3クラス=CP150相当のppをもらう契約を結ぶ)

Cクラスがリーダーをリタイアさせて交代する

他クラスはCクラスのリーダー指名に失敗してSP50ずつ減点される

 

Cクラスは他クラスからの指名を回避する

他3クラスのリーダーを見抜く

最終日の他クラスのリーダー指名で成功させる

(最大でSP150=CP150のプラス)

 

これでCP150相当のppを振り込ませる契約と、実際にCP150を増やす……というCP300ゲットに等しい夢のあるプランだったけど、これが無理になっちゃってる。なぜなら、Aクラスが『リーダーを交代していた場合は無効』っていう条件入れちゃったからね。

 

その点、Bクラスはリーダー交代をしても、交代しなくても金くれる契約だから神だ。大好き一之瀬、愛してるよ。

 

「……1人も見抜けなかった場合は、リーダーを交代しない」

 

「そりゃそうでしょ。なんでわざわざ言うのさ」

 

アホなん?交代したらAクラスからppもらえなくなるだけじゃん。

 

「俺らの利益が減ったとしても、他3クラスに指名失敗させることは出来るだろが。敵のCP50削れるというメリットはある」

 

「あ~~~、確かにそっか」

 

リーダー指名に失敗するとSP50減点される、っていうの忘れてた。

 

「ハゲの付けた条件のせいで利益が減るのは事実だが、明確に敵の獲得CPを削れるというのもまた事実だ。正直悩む所だが……俺らの利益を優先する」

 

「悩むか?他クラスのCP減らしなんてどうでも良いじゃん」

 

得られる利益が変わらないってならやっても良いけど、月々20万ppを捨てるのはアホらしく思える。

 

「フン……。ウチのクラスのアホ共が『自分達だけCPを増やせなかった』と勝手に敗北感を持つのは面白くねぇ。統治に支障が出たら腹が立つ」

 

あー、他クラスがCP100ずつとか増やしてて、Cクラスだけ何も増えてなかったら、そりゃまぁ不満も出そうかな……。

 

「あれ?契約で得られるppって龍園が総取りしちゃうの?」

 

「……そのつもりだ。文句あるか?」

 

配分するってなら文句出ないだろうけど、それだったら不満に思われても仕方ないな。

 

「何に使うのさ?」

 

「勝つためだ」

 

は?

 

「いや説明になってないっての。アホ?」

 

「チッ……。情報の入手、他クラス妨害、離反工作、いくらでも金は必要だろうが」

 

相変わらず分かってんなぁコイツ、どこで覚えてきたんだ。完全同意だよ。けど、

 

「最初からそう言えっての」

 

「……。」

 

「だからコミュ障って言われるんだよ」

 

「うるせぇよボケ」

 

 

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あとはAクラスについて気になる事あるんだよな。

 

「リーダー指名に失敗したらSP50減点されるっての忘れてたけどさ、そう考えると葛城が契約にもうちょいなんか付け足してても良かったんじゃないかと思えるんだよね……」

 

「あァ?……それが『リーダー交代時は契約無効』ってヤツだろうが」

 

「いやまぁそうなんだけど、なんか……引っかかるんだよね……」

 

「何が言いたい」

 

Cクラスがリーダー交代したら、Cクラスは月々20万ppをもらえなくなる。けど、Aクラスは……

 

「Cがリーダー交代して契約破棄になっても、Aがリーダー指名に失敗したらSP50減点ってのは変わりないよね。Cが利益捨てることになるのは事実だけど、Aも損する……」

 

「契約に……条件にペナルティを加えててもおかしくなかったってか」

 

「あっ、それだ」

 

やっべ、契約違反時の罰則について詰めて考えてなかった。ウチの教育係の菅原にこれがバレたら、すっげぇ小言もらいそう……。『なぜ契約前に思考を巡らすのを途中で辞めて満足したのですか』とか言ってくる顔が目に浮かぶ。はい、すいません……。

 

「確かに、取引条件に加えられててもおかしくなかったかもしれねぇな」

 

なんか冷や汗が出てきた。いやー、そういうの言われてなくて良かった。マジで。あっぶねぇ……。

 

「龍園がもしハゲだったら何を条件にした?」

 

「そうだな……。リーダーを交代された場合は、『契約無効』の上で『罰金400万pp』」

 

「んははは!ふっかけるねぇ!」

 

400万ppってCP1000のクラスでも40人がもらえる1ヶ月分の総額か。……そう考えると高すぎもしないか?

 

「フッ……嫌なら言われた通りにしろってだけだ。ただ、そうか、契約違反時のペナルティを用意しておけば相手の行動を制限出来るのか……」

 

約束通りにすれば良いだけだろ?って、普通に相手に要求出来る話ではあるかもだね。

 

「ペナルティ目当てに相手にわざと契約破棄させるとかもアリだね。ペナルティを大きくして、わざと違反させる。今回の試験ではやり方は思いつかないけど……」

 

他クラスのリーダーをリタイアさせる方法、普通にボコすくらいしか思いつかん。けど暴行事件を起こしたらクラスが失格になっちゃうもんなぁ……。毒盛るとか?いやそれも暴行判定を食らっちゃいそうだな。

 

「ククク……」

 

いやー、しかしこう考えると、

 

「葛城はルールを考える賢さあったけど、なんていうか……『悪意』みたいなのが足りなかったかもね。敵を潰して自分達が利益を得よう、みたいな。文字通り『敵意』というか」

 

「まぁ……そうかもな」

 

いやまぁ、島の食料を燃やしまくりながら取引を持ちかけたけど、葛城はそこから3,4時間くらいでクラスの賛同を得て来たし、加えてリーダー交代の危険性にまで気付いた。食料処分され続けてても焦らず、思考を巡らせた。そう考えると尊敬できるほど優秀だと言えそうなんだけどね……。

 

「龍園は他クラスへの『悪意』とかしっかりあって良いリーダーなのかもね。味方で良かった的な」

 

「……。」

 

「『図々しさ』というか、『非情さ』『冷酷さ』というか。競争社会は敵を叩き潰してナンボ、みたいな精神。他に言い換えるとしたら……『殺意』かな」

 

葛城には足りなかったけど、Aクラスのリードを保つことばっかり考えてたとかなのかもしれない。あとまぁ、普通の高校1年生だもんなぁ……。普通は『相手をぶっ潰すぜ精神』とか無いのが当然なのかもね。そう考えるとこのロン毛はどうなってんだよ?ちょっとおかしいな?

 

「……テメェにもあるだろ」

 

はぁ?

 

「俺はもっと金が欲しいだけだっつうの。良い子だよ」

 

「ほざけ」

 

なんだその反応、微妙にムカつくな。あと俺の事はどうでもいいよ。

 

「けど、もし坂柳だったら……これくらい一瞬で気付けてたかもしれないね」

 

「……。」

 

「そう考えると絶望感あるわな」

 

「チッ……」

 

俺らは1日目の昼に取引を思い付いてから、2日目夜までの30時間以上をかけて気付けたけど……あの訳分からんほど思考速度が早いAクラスの白い少女だったらどうなってたか分かったもんじゃない。怖すぎる。

 

「龍園も敵を潰すことばっかり考えてないで、『もし俺が敵だったら』も考えなきゃダメだよ。頭悪くないのにもったいないぞ。相手をハメようとか自分の好きなことばっかり考えるのも良いけど、ちゃんと脳みそ使え。坂柳に負けちゃうぞ」

 

「……うっせぇよ」

 

まぁ俺はリーダーでもないから好きなことだけ考えるけどな。やられても龍園の責任だし。

 

 

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色々話して20時過ぎなのに、まだまだ寝れそうにないぞこれ……。いくら早起きしようが朝5時を過ぎないと日が昇らないんだし、今からそんなに寝る必要も無いんだよなぁ。

 

「暑いし……眠れる訳無いじゃん……」

 

本当に帰りたい。夜眠れるようにするため昼はちゃんと肉体労働しておいた方が良かったかもなこれ。

 

「おい浅井、俺は深夜まで偵察してくる予定だが……ついて来るか?」

 

真っ暗闇の中、龍園が話しかけてきた。

 

「えっ?なんか楽しそうじゃん」

 

「……楽しくはねぇだろ」

 

「それって、もしかして昨日もやってた?それで眠そうにしてたとか?」

 

今日の午前なぜかテントで寝てたもんな。

 

「いや、昨日はここに居た」

 

「は?じゃあなんで眠そうだったのさ」

 

「……うるせぇ」

 

「はぁ?」

 

コイツたまに本気で訳分からんな。

 

「テメェのせいだ」

 

「いや意味が分からん。もしかして、イビキうるさかったとか?それだったら、まぁ、ごめんだけど……」

 

あんまり他の人にイビキについて言われた事はないけども、無意識だからなぁ。

 

「チッ……。曲がりなりにも、俺を殺しかけた相手を警戒しないで眠れる訳ねぇだろうが……」

 

はぁ?いつの話をしとんねんこのロン毛、めっちゃ前の事じゃん。あとなんかすげぇ小さい声だったな……。

 

「だったら他のヤツと一緒のテントにすりゃ良かったのに」

 

「……お前はバカなことも多いが、役に立つ発想をするのは認めてる。夜、漏らせねぇ会話が出来るメリットが上だと判断した」

 

「あ、そう……」

 

これは喜んで良いのか?けどバカってなんだよ、心当たりが無い。

 

「で?ついて来るか?」

 

「ん、行く。凄まじく暇だからね」

 

「そうか。……なら行くぞ」

 

「オッケー!」

 

よっしゃ、夜遊びだぜ。




1日だけでもいいから、評価☆8.00以上を見たいです……(泣)

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