いわゆる2度目というやつらしい。前世で何度見たかもわからないAtoZ運命のガイアメモリを見て、寝落ちしたと思ったら過労とやらで死んでいて、神様らしい光に転生させてもらった。
まぁ前世の記憶32歳分とかいう大容量データが頭にあるのだから数日間知恵熱を出したが。そのあとは妹も生まれて、かわいい幼馴染もいて、それなりに幸せに暮らせた。気になる怪事件が起きて、それに怖いなーと他人事のように感じながら日々の幸福を謳歌して…
ある日すべてが奪われた。
すべてが凍った、始まりの日。
「父さん!?母さん!?」
「永彦…か…」
ここにはいない妹も、父も母も、すべてを奪われた日。
「何があったの!?」
「アイス…エイジ…」
「アイスエイジ?」
「こうなる前に…そんな音が聞こえたな。…永彦、お前は生きろ。振り返らずに…」
身体が砕け散る。怪事件、アイスエイジ、凍結。これができる下手人を、俺はすでに知っている。
「アイスエイジ・ドーパント…!」
俺はそいつへの復讐を決意して―――
顔に冷たいものがぶちまけられる感覚で目を覚ます。
「もう朝9時ネ。起きるヨ。」
「目覚まし時計は?なにも氷水で起こすこたぁないだろ。」
「ずとなりっぱなしだっタ。」
何度か見た悪夢だろう。てか鼻っ面がいたい。事務所の一階に降りて遅めの飯を食う。俺にとってここは家みたいなものだ。食卓にはおそらく俺と同じく寝坊した隻眼のメンバー…撃鉄がいる。
「遅いっすよ、永!飯食い終わったらメモリ対策課で
「オマエモナー、撃鉄。事件の場所は?」
「まやかし」
「事務所くずれか変質者か…後者のほうが楽なんだけどな」
俺がこんな扱いになっているのにはいろいろと訳がある。過去にいろいろとやらかして、んでもってここ蒼海幇で雇われてるというわけだ。ここには俺の復讐を手伝ってもらった恩もあるし、何より街にはガイアメモリが蔓延っている。何もしてないでも厄介ごとが起きてしまうのだ。
というわけで蒼海幇ガイアメモリ対策課。ホワイトボードに情報をかき出し、貼り付ける。
「建物に入った人間が消えていると…」
「そ、建物の外見はこんなカンジ、見方を変えれば教会みたいねぇ。」
「うげ、ってことはアルテミス。
金髪オールバックのアルテミス(オカマである)からもたらされたのは一番クソな案件だった。ガイアメモリは超常的な力を使用者にもたらす。そこまではまだ地上波で流せるのだけれどこれにカルトがかかわると一気にリアルSANチェック案件になるのだ。そりゃあ教えの神が現実になる行為だけど、たいてい冒涜的構造物が出来上がることになる。俺が見た中で一番ひどかったのは変質した人体組織でできたコンピューターだった。
「まぁ永坊。終わったらジンジャーエールをおごりますからな。」
「おう、メインのドーパント退治にはアッシも加わりますからアッシにもお願いしやす。」
「ほっほっほ。」
「戦車は?」
「ボランティアで出払ってるわぁ~。あーワタシも行きたかった。」
おじいちゃんな執事とも会話して現在移送中。あぁ朝ごはん少なめに抑えてよかったな~。俺以外の対策班のメンバーは30分もしないうちに教会付近に出た。
「みんな~、レジスターは準備したかしら~?」
「準備万端ですぜ!」
「突入するぞ」
どんな惨状になってるか覚悟しながら教会内に入る。意外なことに何もいない。空中に浮かぶ文様のみ…いやこれでも十分異常だが。
「変身ののちこの文様に触れてみる…でどうですかな。」
「それでいこう」
各々がメモリを起動する。ガイアウィスパーが鳴り響く
【LUNA!】 【TRIGGER!】 【DUMMY!】 【ETERNAL】
俺以外の3人は腕に巻いた『ガイアレジスター』にメモリをたたきこみ、それぞれドーパントの姿に形を変える。ガイアレジスターで変化したドーパントは直挿しより能力が劣るが、それは集団行動と…俺が解消している。
「…変、身」
【エターナル】
メモリを『ロストドライバー』に装填し、傾ける。ベルトを中心にエネルギー波が巻き起こり、表れた破片が俺にまとわりつき、炎を模した模様の両手、純白の体、Eの字の角を持つ仮面ライダーエターナルの形となる。持ち込んだ剣を手に取って…
「行くぞ」
文様に突撃した。次の瞬間目に広がるのは奇妙な空間。鉄骨のようなものが乱立し、地面は砂でできている。心なしか少し気分が悪いな。
「なんだここは…」
「みて!あそこなんかいるわ!」
ルナ・ドーパントがさした先には巨大な何かがいた。ドレスの少女を思わせるシルエットではあるがその巨大さ、砂でできたような髪、頭に深々と刺さるスコップが人外の存在であることをはっきりと示している。ドーパントのハイドープでもこんな化け物には…なるか。
「ハイドープかなんかっすかね。」
「固有の次元の展開…これはハイドープにしてもこのようなことは見たことがありませぬ…皆様方、本気でかかるよう。」
「キャ~ッ!ナニコレ、イモムシ!?」
「振り払うぞ!」
気が付くと四方八方からマーブル調の芋虫ともムカデともにつかないものが湧いてきた。ルナがエネルギーをまとわせた腕を伸ばし一気に複数の芋虫を打ち砕く。トリガーは銃を乱射。前にいる芋虫はすべて粉々に。ダミーと俺は背中合わせで芋虫を殲滅していく。まともな生き物なら体液をぶちまけて逝くはずだが代わりにあふれるのは黒いもや。まぁ精神衛生的にはましだろう。
「そろそろデカブツが動いてもっいいはずだけど!」
「あれだけ領域内のものを倒しても全くアッシたちに興味なし…」
「人格があるのかないのかわからんが、まぁ気づかないんならちょうどいい。奴の後ろに行って奇襲する。」
空間内を駆ける。見えるのはデカブツの背中。それぞれ力をため、攻撃開始。鉛玉と光をまとった触腕が飛び交いそれらすべてがデカブツに直撃。そのまま俺に変身したダミーと切りかかる。デカブツがもだえる。声を出していたらものすごい悲鳴が聞こえるだろう。
「縺倥c縺セ縺励↑縺?〒縺医∴縺医∴縺医∴縺医∴縺医∴縺」
「っ砂嵐!?」
風が巻き起こり砂が襲い掛かる。巻き上げられた瞬間出化物の腕にたたきつけられる。全身を小さな刃で切り刻まれ、襲い掛かる衝撃によって吐きそうになるがこらえる。こんなのはドーパントと戦う中で慣れた。
「少し時間を稼ぎますかな」
突然2体目のダミーが表れる。否、そこら中にダミーがいる。
「執事、こいつに人格がないようだから聞くが本体は!?」
「アルテミスの後ろにて!」
執事はどうもハイドープらしい。分身能力もその影響だ。銃弾と光のムチが飛び交う中走りぬく。
デカブツが腕を振るい分身ダミーもろとも俺をつぶそうとするが…残念俺はもうそこにはいない。どこかって?
「一発!」
力いっぱいデカブツの頭上から剣を振り下ろす。デカブツのみならず地面にも斬撃跡が残るほどの威力。しかし光のムチに打たれ銃弾にさらされてなお黒いもやは出ているもののまだ砂嵐を出し続けている。普通死んでるだろ。
「しぶといっすねコイツ!」
「この分じゃあ永ちゃんがマキシマムドライブ打ち込んだら…待って、こいつの様子おかしくなってない?」
まるで見えない何かにたたかれ、切り裂かれているような様子だ。自壊の線は念のため排除。何が起きてもいいよう…いや、余計な何かを起こさないために最大火力で仕留めよう。ドライバーからメモリを抜き取りマキシマムスロットにセット。ボタンを押し剣を構える。
【エターナル・マキシマムドライブ】
全身に力が満ち剣に鈍色の力場が発生。そのまま踏み込んで一突、そして斬撃。これはエターナルメモリの力を引き出した技。相手の特殊能力のたぐいを一切無に帰し確実に大ダメージを与える光の剣、こんなものに当たればデカブツは崩壊する。しかしまだ光の奔流は止まらない。
「ぜぇいっ!」
さらに振り払う。半径50メートルは灰燼に帰さんとぶちまけられた光は大爆発を引き起こす。
「…何もいない、か」
インビジブル系列を警戒して放ったが手ごたえなし。空間が揺らぎ、本来の教会のものと思しきものに変わっていく。さっきまでデカブツがいたところには謎の黒い物体があった。
「ドーパントにしてはおかしすぎるわねぇ。ハイドープで空間展開能力が生えた挙句倒したら負荷で消滅…うん、結構無理あるわ」
「組に伝えるとしましょう。」
「おい、なんか黒いのが…」
「はて永坊。何も見えませぬが?」
は?少し困惑するが執事の言う通り黒い物体は跡形もなく消えていた。まだインビジブルがいるのか?警戒する…が、この状況。狙うには格好の状態だがみんな無事だ。
「帰るっすよ。車はもう呼んでるっす」
車に揺られて事務所に帰り着く。
「ただいま。」
昼下がり。相談がいつ来てもいいように事務所を開放される。猫探しから警察が取り合ってくれない
「息子が突然倒れて…」
「私の家が壊されてしまって…とりあえず見てくれませんか?」
ホワイトボードにこれまでの事件と来た依頼を貼り付ける。こういうのは得意だ。なんせ知った能力がある。前者はナイトメア、後者は破壊跡からみてバイオレンスだろう。ナイトメアのほうは数日は持つ。バイオレンスは毒素にのまれた場合最悪レベルの破壊兵器と化すからそっちを優先して対処。さぁ本日2件目の戦いとしゃれこもう。
~少年事件解決中~
「いや~にしても意外だったわねぇ、近くにいた地上げ屋じゃなくて奥さんが犯人だったなんて!」
「いわゆる痴情のもつれというやつだ。お~怖い怖い」
痴情のもつれで自棄になった挙句ガイアメモリに手を出す。というのは割とあり得る事案だ。二股はしないように気をつけよう。まぁ俺に恋人ができることはないだろうけど。そんなものは復讐のために捨ててきた。
自棄買いで購入できる値段というのもガイアメモリの脅威の一つ。それなりに安価で使えば同額の銃を装備するより凄まじい力を得られるとかちょっとおかしい。なんでテレビ本編まで風都が存続できたのかわからないレベルだ。
「おかえりネ。晩御飯もうできてるヨ。」
「美雨ちゃん、大丈夫っすかその傷?」
青髪で協和語なチャイナっ娘…純美雨。だがその腕には包帯がまかれている…あらかた人助けのために無茶したのだろう。
「いや~ちょっと子供が轢かれそうになててネ。その時に擦りむいたヨ。」
「やっぱり人助けねぇ、優しいわね、美雨ちゃんは。無理はしないでね」
ほらね。飯を食った後は風呂に入って情報を整理して歯を磨いて寝る。これが俺の一日だ。そして、今日こそがまた運命が動き出した日でもあった。
数刻前、少女たちが話していた。
「…彼が永、ですか。この混乱を糺す助けになるやもしれませんね。」
「けど永は堅気アル。たとえななかといえど軽率に私たちの世界に巻き込むのは許さないヨ。」
「ええ、ですが協力とはいえ魔女を倒した実力。魔法少女の世界にも十分適応できる…あなたも見たでしょう?それにこの状況には何者かの悪意を感じます。これこそ彼の得意分野と見えますが。」
「少なくとも永に許可をとり、協力も彼次第にする。これでどうだい。」
「…わかったアル。」
ここに運命は動き出す。彼を巻き込み、本来の
・永/仮面ライダーエターナル
主人公の名前…というよりコードネーム。現在は蒼海幇の対ガイアメモリ最高戦力として扱われている、人生二度目の転生者。ただしまどマギ系は知らない(重要
蒼海幇に拾われる前は杏子も真っ青になるレベルで荒んだ生活を送っていた。
・撃鉄/トリガー・ドーパント
一人称アッシ。援護射撃を得意としている。
・アルテミス/ルナ・ドーパント
オカマ。もろ泉京水である。広域殲滅担当。基本通常のドーパントに劣るレジスター仕様の中でもためを張れるすごいヒト。
・執事/ダミー・ドーパント
蒼海幇傘下のバーを経営している強キャラ老人。ハイドープにより分身能力が生えた。
・ガイアレジスター
ガイアメモリを安全に使用するための腕輪。起動したガイアメモリを挿し込んで使用する。メモリの毒素を除去するが、除去に性能がより過ぎてメモリ出力を下げてしまうという欠点も抱えている。