袁術　仲の皇帝を名のるも、蜂蜜も得られずに最期を迎える

2018.10.10

孫堅を傘下におさめる

この頃の孫堅はたたき上げの武将として名をあげていましたが、まだ基盤は安定しておらず、後ろ盾を必要としていました。

このため、孫堅は袁術の傘下におさまりましたが、これによって袁術は強力な手駒を手に入れたことになります。

このあたりの流れは、袁術の実力というよりも、左将軍の地位と、名門の権威が孫堅に影響を与えたのでしょう。

やがて袁紹や曹操たちが反董卓連合軍を結成すると、袁術もこれに参加して董卓と戦いました。

そして上表し、孫堅を豫州刺史に任命して董卓と戦わせ、191年には洛陽にまで攻め込む功績を立てさせています。

しかし、この時の洛陽はすでに董卓によって焼き払われており、戦略的な価値は乏しくなっていました。

【この頃の勢力図 袁術は後漢の中央に位置する荊州北部を占拠していた】

袁紹と不仲になる

その後、連合軍は董卓を打倒しきれないまま解散状態となり、互いに覇権を巡って争う関係になります。

そうした中で、袁紹は「董卓に擁立された献帝ではなく、人望が厚い幽州牧（長官）の劉虞《りゅうぐ》を皇帝に擁立すべきでは」と主張しました。

そして袁術にも使者を送って賛同を求めますが、袁術はこれを批判して拒絶します。

このため、それまではなんとか協調していた両者の関係にヒビが入り、決裂することになりました。

袁術が袁紹の提案を拒否したのは、献帝に忠誠心を持っていたからではなく、乱世となったので、あわよくば自分が皇帝になりたいと野心を抱いたためです。

袁術の「皇帝になりたい」という思いは夢や願望ではなく、より具体的な欲望として袁術の心を支配し、やがては彼を衰運に突き落としていくことになります。

公孫瓚と同盟を結ぶ

こうして袁紹と不仲になった袁術は、袁紹を攻撃させるため、北方に勢力をもつ公孫瓚《こうそんさん》と同盟を結びました。

すると袁紹は対抗措置として、袁術の南に勢力を持つ劉表と同盟を結び、互いに牽制しあうようになります。

こうして袁氏の勢力は二つに分裂し、周辺の勢力を巻き込み、戦いに明け暮れることとになりました。

もしも彼らが協力体制を築いて天下を掌握しようとしていたら、後漢末期の動乱の流れは、ずいぶんと変わったものになっていたでしょう。

孫堅に劉表を攻撃させるも、敗北する

袁術は敵対した劉表から荊州を奪うため、孫堅に命じて襄陽《じょうよう》城を襲撃させました。

これに対し、劉表は武将の黄祖《こうそ》を送って防衛させますが、孫堅の激しい攻勢によって、襄陽の前衛にあたる樊《はん》城を失います。

黄祖は襄陽に撤退してさらに抵抗を続けますが、こちらも孫堅によって討ち破られそうになりました。

すると黄祖は劉表の命令に従って、夜間に城から抜け出て、近隣の村々から徴兵し、兵力の増強を図ります。

孫堅はそんな黄祖の動きを見抜いており、途中で待ち伏せをして黄祖を襲撃し、散々に討ち破りました。

そして黄祖が山すそに逃げ込むと、孫堅は自ら先頭に立って追撃をかけ、黄祖を討ち取ろうとします。

しかしそこで黄祖の部下が放った弓矢が命中し、孫堅はあっけなく戦死してしまいました。

こうして孫堅は圧倒的に優勢だったにもかかわらず、不運にも返り討ちにあい、袁術の荊州奪取の野心は潰えることとなります。

袁術は自身が兵を率いて戦うことはなく、常に配下の将軍に任せて侵攻を行わせていました。

このために、優秀な将軍が戦死すると、勢力が拡大できなくなってしまうのでした。

陳留に攻め込むも、大敗する

その後、袁術は曹操の支配地域である陳留《ちんりゅう》に攻め込みますが、袁紹の支援を受けた曹操に撃破され、大敗を喫します。

袁術と曹操では戦術能力に大きな差があり、まったく歯が立ちませんでした。

そして袁術は曹操に包囲されそうになりますが、素早く逃げ出し、九江《きゅうこう》を経由して揚《よう》州にまで流れていきます。

すると今度は揚州を奪取することを計画し、刺史の陳瑀《ちんう》を攻撃して追い払いました。

こうして新たな拠点を手に入れましたが、袁術の活動は、さながら流賊が各地を荒らし回っているかのような趣がありました。

李確から左将軍に任じられる

こうして袁術が揚州に流れて行った頃、朝廷では政変が発生していました。

董卓は諸侯の圧力を受けた結果、洛陽から長安に逃れていたのですが、そこで臣下の呂布に裏切られ、殺害されます。

しかしそれでも情勢は大きくは変わらず、董卓の部下だった李確が長安を襲撃して呂布を討ち破り、朝廷を支配するようになりました。

董卓に代わって権力を握った李確は、各地の群雄たちに使者を送り、高い地位を与えることで味方につけようとします。

このため、袁術の元にも使者が訪れ、左将軍に任じ、陽翟《ようてき》候に取り立てると告げられました。

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