サッカーJ1鳥栖の金明輝(キム・ミョンヒ)監督(40)が選手らに継続的に暴力などパワーハラスメント行為に及んでいる趣旨の告発文が日本サッカー協会に届いていたとスポーツ報知が報じた問題で、同監督が鳥栖U―18(高校生年代)を率いていた2018年頃から選手を突き飛ばすなどの行為を繰り返していたことが31日、複数の関係者への取材で分かった。
複数の関係者によると、金監督の選手やスタッフに対する暴力行為や暴言、パワーハラスメントの疑いがある行為は、少なくとも同監督が鳥栖U―18を指揮していた2018年頃から続いていたとみられる。
目撃者によれば、U―18監督時代には練習試合が行われた佐賀市内のグラウンドの駐車場で選手を突き飛ばし、選手が自動販売機に激突。証言によると、「ドーン」という大きな衝突音が鳴り、保護者やスタッフの多くが現場を目撃した。また、胸ぐらをつかみながら罵倒(ばとう)し、精神的に追い詰める行為が原因で、精神面で不調を来した選手もいたという。
また、トップチーム(2018年10~12月、19年5月~)でも、同様の行為が継続的に行われていた疑いがある。金監督は激高すると選手らの胸ぐらをつかむことが多く、至近距離でどなり声を浴びせるという。被害を受けた選手やスタッフの中には、こうした言動による精神的苦痛を理由に、退団を選択するケースもあった。
事情を知る関係者は「特定のスタッフへの暴行、暴言は日常的だった」と証言した。「クラブが監督を信頼しているようだ。そのため、(暴力行為などの実態を)報告すれば、自分たちの身が危うくなるため、言えなかった」と明かした。
18年夏から19年夏まで在籍した元スペイン代表FWフェルナンドトーレスも、金監督の指導法に苦言を呈し、改善の必要性を訴えていたという。関係者の一人は「スポーツに厳しさは必要だと思うが、度を越えていた」と語った。
チームは30日に、試合が行われた仙台市から鳥栖市に戻り、31日と9月1日は当初の予定通りオフとなっている。この日はトップチームの選手数人がクラブハウスで自主トレーニングを行ったが、金監督は姿を見せなかった。
既に日本サッカー協会、Jリーグに告発文書は届いている。今後の対応に関し、クラブの広報担当は「まだリーグから連絡が来ていない。事実確認を進めた上で、こちらで情報を把握してから対応したい」と話している。
◆金 明輝(キム・ミョンヒ)1981年5月8日、兵庫・伊丹市出身。40歳。尼崎朝鮮初中級学校、初芝橋本高を経て2000年千葉に加入。甲府や富山などでDFとしてプレーし、11年に現役引退。12年から指導者に転身し、14~15年に鳥栖U―15、16~18年途中まで鳥栖U―18監督。18年途中にトップチーム監督に就任。一度は退任するが、19年途中から再び指揮を執る。J2通算37試合1得点。J1でのプレー経験はなし。186センチ。