ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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なんかちょっと平均評価上がって☆8.00以上の赤ゲージいきそう?
評価してくれた方々ありがとうございます。


誰が為に島巡る

こんにちは、いきなり意思確認もされず無人島7日間サバイバルに放り込まれたかと思えば、裏取引をしたことでサバイバルをしなくて済むことになり、けれどサバイバルするための調査をしている浅井虎徹です。こう言うと訳分からんな?

 

歩き回ってる移動時間がなんとなく暇なので、ちょっと色々考えてる。

 

葛城はなんで『SP200の物資』と『CP200相当のpp』という交換条件を飲んだんだろうか。普通に考えて今回の試験でSP200以上残すのは無理じゃん?だからCP200分のppを払ったら損することになると思うんだけど……。

 

うーん、もしかしたら『CP100と月40万ppは等価値』って俺は思ってるけど、普通の生徒は『Aクラスに上がりたい』ってことで『CPの方が欲しい』ってことなのかな。そういえば『CPが一番多いクラスになりたい』『Aクラスになりたい』とかいう話だったっけ。

 

だから葛城はSPとppの交換に応じてくれて、かといって流石にCPでもらえるコスト以上のppは渡せない……って感じか。葛城としては多少の損があろうと、

 

初の特別試験で確実にCPを積み上げる

実績になる

リーダーとして有能だとアピールできる

葛城派が優勢になる

坂柳派の影響力を大きく低下させることが出来る

自分がリーダーになってクラスを率いていくことが出来る

 

だから嬉しい契約だった、って事かな。

 

現時点でAクラスが結構抜けて他クラスを突き放してるのに、もっともっとCP積み上げて他クラスを離したいっていうのは……正しいだろうけど、なんかつまんねぇなぁ。せっかくならもっとクラス競争っぽく拮抗させたらいいのに。

 

これ俺がAクラスじゃないからそう思うのかもしれないけど、坂柳もそういう事思ってそう。『圧倒的勝利なんてつまらないです』とか言いそう。世が世なら、強敵を作り上げるために意味もなく配下の家族を殺したりしてそう。

 

龍園と接してたり、そういう葛城の行動原理を見たり、坂柳のメンタリティみたいなのを見て思ったけど、俺にはそういう『俺がトップだ!リーダーだ!』みたいなプライドとか『俺が勝つ!』みたいな精神性が不足してるかもなぁ……ってちょっと羨ましく思ったりする。一之瀬ですら『みんなのため』と動機は少し違うかもだけど、『勝ちたい』という目的はしっかり持ってるみたいだし。

 

いや……みんなの感情が普通なのか?

 

俺はなんだかんだ満ち足りた人生だったせいで欲が無いのかも。楽しけりゃいいって思っちゃう。家が裕福だからなのかな……。「リーダーになりたい!」なんてカケラも思わないし、「勝ちたい!」ともそれほど思わない。

 

『勝たないといけない』という状況があることは当然しっかり分かってるけど、こんな学校でそこまでシビアに思える訳ないじゃん……。言っちゃなんだけど、お遊びじゃんこれ。誰も死なないし、誰も殺さないで済むんだから。

 

『Aクラス以外は卒業時に殺します』とかいう話じゃないでしょ?

 

俺だって自分の生命危機になるなら死ぬ気で動くし、外敵が居たら容赦なく消すつもりだけど……だからといって「勝ちたい!」「上に行きたい!」「勢力拡大したい!」とかは思えない。

 

けど、この学校に入って、色んな人間を見て、他人の熱意みたいなものを知れたのは良かったかな。ああやって熱中して頑張れるのは良いな~って。

 

まぁ……だからといって「俺もAクラスになりたい!なろう!頑張ろう!」とは嘘でも思わないけど。メリットが無い、興味も無い。行きたい大学も企業も無い。「Aクラスで卒業したら1億円あげるよ!」とか言われたら、まぁちょっとやる気出るかもしれないけどさ。

 

でも、せっかくの機会だから色々経験してみよう。豪華客船で遊ぶとか、無人島でサバイバルなんて、やろうと思ってすぐ簡単にやれるものでもないだろうし。せっかくやるならそこそこ全力でやろう。

 

龍園の邪魔する気は無いし、龍園の役に立ちたいという気もそれほど無いし、積極的にAクラスを目指すつもりもないけど、せっかくだから色々やってみよう。ポイント稼ぎ考えるのは楽しかったし。

 

自分が経験するために、そしてついでにクラスのために動いてみよう。

 

 

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つらつらと同学年のリーダー達のことを考えて前向きになっていた俺の現在地は、ずっと変わらず森の中だ。もうこれ熱帯林でしょ多分。フルーツの木っぽいのも結構あったし。

 

なぜこんなことしてるかと言えば、龍園はAクラスと契約締結&物資引き渡しをしているが、その間に島の探索を頼まれた。まぁ暇だし全然ええよと。他にも何人かの男子が頼まれてた。

 

「2時間以内には戻れ」って言われてるのは忘れないようにしないとね。

 

1人じゃ迷ったりして危ないと2人1組として石崎と一緒に行動してるが、なぜかコイツと一緒になること多い。別に不満じゃないけど、なんだか不思議だ。「こいつ何勝手に名前呼びしとんねん!」が最初みたいなものだったのに、気付けば一番仲良いヤツなのかも。……いや、その前の「なんでコイツらに勉強教えなアカンのじゃ!死ね!退学しろ!」が最初だったかも。そこから仲良くなるとは不思議だ。友達ってそういうもんなのかもね、最初のキッカケほぼ覚えてないっていう。

 

「なぁ虎徹、こういうキャンプ経験あるのか?」

 

キャンプて……。いやまぁそうかもだけど。

 

「アウトドア系は登山したくらいだなぁ、それも日帰りだったし。山に行った経験は他に……無いね」

 

深夜の山奥、何も見えない暗闇の中で穴を掘って物を埋めるのを手伝わされた経験はあるけど……うん、あれは宝探しの準備だったかもしれないからなんでもないね。ちょっと大きい荷物、妙に重かったし、弾力があったけど……。変な宝物だったなぁ!

 

「そうか。俺は割と都会の方に住んでたから、こういう自然のあるとこなんて来たことねーや。ってか、船に乗ったのも初めてだ」

 

「あ、言われてみれば俺も船は初めて」

 

「お?マジか。俺なんか南の方に来たのも初めてだから、あの海の透明さはビックリしたぜ。すげーなあれ!その……ちょっと普通に遊びたかったぜ……」

 

流石の龍園舎弟1号でもちょっと弱音が漏れるか。そらまぁ、あの透き通ってる青い海とゴミ1つ無い綺麗な砂浜を見たらそう思ってもしゃーないわな。

 

「まぁまぁ、少なくとも他クラスよりはポイント稼げるんだから頑張ろうじゃん」

 

「そう、だな……。それにしても龍園さんはすげーよなぁ……」

 

「気持ち分からなくもないけど、試験終了まで取引のことは誰にも言っちゃダメだぞ」

 

なんで俺が口止めする側にならなきゃいけないんだよ。どう考えてもついつい言っちゃうキャラは俺だろ。

 

「おう、分かってる。ホントに龍園さんのクラスで良かったよマジで。……あの人のためならなんでもやるぜ!」

 

楽しそうやんね。体力あるから元気なのか、アホだから元気なのか。

 

「……っと、この辺りがBクラスの拠点か。石崎ちょい静かにして」

 

「おぅ」

 

2人で黙ってみると、遠くの方から楽しそうな集団の声が聞こえる。その声の方に近付いてみると……

 

「テントはちゃんと風で飛ばないようにしようねー!あまり良く分からなかったら、もう出来てる人に聞いてね!もうしっかり出来てる人は、他の人を助けてあげて!」

 

おぉ、天使一之瀬が居た。龍園とかいう害虫が一緒に居ない本来の姿は元気いっぱいで良いね。

 

それにしても、なんか水の音がするかと思ったら……めっちゃしっかりした川じゃねーかこれ。マジかよ、水の心配まったく必要ないじゃん。試験として成り立つのか?

 

ただ、よく見ると木が無くてしっかり踏み固められた地面で、川に接してすぐ水汲めそうなのはこの拠点周辺だけみたいかな……。少し外れると川沿いも草だらけ、木だらけ、場所によっては小さい崖になってるっぽい。水を汲むのも一苦労しそう。だから川へのアクセスが抜群に良いこの周辺が1つのスポットになってるという事なんだろう。

 

ちょっと、恵まれ過ぎてるスポットに見えてムカつくな……。台風が来て川が氾濫して全員流されたりしないかな……。

 

 

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なんて物騒な事も考えていると、Bクラスの生徒数人に見つかって指を差されたり「どうしよう」みたいな会話をされたりし始めてしまった。別にしっかり隠れてた訳じゃないけどさ。……せっかくだし挨拶しとくか。

 

「おいーっす。どもども」

 

森から抜けて広場に出ていくと……おっと、ちょうど一之瀬と神崎がやって来た。夫婦かな?

 

「誰……って浅井くんか。そしてもう1人は……石崎、くん?」

 

「一之瀬、おひさ~。ポーカー以来だね」

 

なんか石崎への反応が悪いな。……須藤事件あったからかな?

 

「どうした、浅井。偵察か?」

 

「そんな感じ。……めっちゃええやんココ、水飲み放題、使い放題じゃん。いいなー!」

 

本気で羨ましそうに言う。いいないいなー!……考えてみると水浴びとか洗濯もしなきゃいけないもんな。マジで羨ましくなってきたぞ……。

 

「あぁ。一之瀬がすぐクラスをまとめ、すぐにみんなで探し始めたから見つけることが出来た場所だ」

 

「なーるほど……」

 

「えーっと、じゃあ神崎くん、お相手よろしくね。私はちょっとみんなの所行かなきゃ!」

 

「任された」

 

あっ、天使が消え去ってしまった……。逃げられてはないよね!?

 

「……なんか忙しそうだね」

 

「あぁ、誰もが一之瀬に声をかけてしまうからな。……もうちょっとクラスメイト同士で助け合うべきなんだが」

 

そう言う割には悪く思ってなさそう、かな。

 

「まぁ気持ちは分かるよ。あんな美少女居たらそりゃ声かけたくなるでしょ。……と、それはいいとして、石崎は知ってる?」

 

「例の、CとDの騒動に居たヤツだろ?」

 

「……。」

 

なんとなく紹介してみたけど印象悪いなぁ。自業自得だけど。

 

「そうそう。石崎、このイケメンは神崎、良いヤツだよ」

 

今気付いた。2人でザキザキじゃん。

 

「っす。よろしく……」

 

「……あぁ」

 

うわっ、雰囲気わっる。須藤事件のせいでそんなに印象悪いのか。

 

「まぁいいや。石崎は多分だけど龍園に一番殴られてる人間だよ。んはは!」

 

「いや、虎徹、そうかもしれねぇけど……」

 

「……。」

 

微妙に疑わしい目で見てくる神崎。俺と石崎が仲良さそうだからかな?

 

「神崎、せっかくだからちょっと教えて欲しいんだけど、なんかポイント交換しちゃって良かったものとか後悔したものとかある?」

 

「お前、そんなに堂々と聞かれても……」

 

「ええやんええやん」

 

「一応クラス対抗戦だぞ。これ」

 

「ちょっとでいいから」

 

「……まぁ、俺達もまだそれほどポイントを使ってはいない。どうしても必要なテントの増設と、水食料だけってとこだ」

 

水も?

 

「えっ?すぐ近くに川があるのに水も頼んだの?」

 

「容器が無いからな。……いちいち川から直接って訳にもいかないだろう」

 

「あぁ、そりゃそっか」

 

なるほどなるほど……。そりゃ確かにペットボトル必要だったな。

 

「食料に関しては……何も言えない。以上だ」

 

食べ物はクラスで取り合いになりそうだから何も言えないか。本来なら160人での取り合いだもんな。

 

「おっけ、ありがと。参考になった……かも」

 

「そうか」

 

「川に近い場所で、他に水汲めそうな所とかあるかな?」

 

「どうかな……。この場所に着いてから、俺はずっとここに居たから分からない」

 

情報を隠してる可能性もあるけど、本当っぽいかな。まぁどっちにしろ自分の足で確かめるからいいか。

 

「ん、了解。調べてみるよ」

 

「じゃあ、そろそろ俺も作業に戻らせてもらうぞ。……健闘を祈る」

 

「ありがと~」

 

超クサいセリフなのに、性格が良いイケメンが言うから何の違和感も無いな……。もし龍園が「健闘を祈るぜ」なんて言ってたら、あまりにも怪しすぎて背を向けられなくなるし、夜も眠れなくなるな。これが信頼の差だな。

 

 

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神崎と別れてから川沿いを探索してみると、やはりスポットになっている所じゃないと草とか木が多すぎたり斜面や崖になってて川を使いにくそう、行き来するのも大変そうだというのが分かった。

 

それでも数人で使うくらいなら草を踏みならしておけば平気そうな場所もあり、そういう所から水を使うだけなら平気そうだ。キャンプ地にするスペースは無いけど。

 

せっかくなので空になったペットボトルに水を補給して軽く舐めてみたけど……分からん。飲める水だとは思うんだけど、舌が繊細な訳でもないし分かる訳ない。多分大丈夫だと思うけど念の為に少し飲んで毒味をしておく。後で腹が痛くなったアウトということだ。その時はもう諦めよう、みんなで船に帰ろう。

 

ちなみに石崎は川から直接ガバガバと飲みまくり、頭を突っ込みプチ水浴びしていた。怖くないんかお前は。やっぱアホだな。

 

まぁいいや、そろそろ戻ろう。結構歩き回って疲れたし、森の中だからなおさら疲れた。

 

「石崎、そろそろ戻るよ」

 

AクラスとBクラスの様子を確認したんだから、Dクラスも確認しようかな……とも思ったけど、めんどくさいからいいや。

 

「おぅ!……っしゃ、スッキリしたぜ」

 

うーん、当たり前だけど濡れまくった頭のせいで上半身ビショビショになってるな。こんな男の濡れて透けかけた服を見てもなーんも嬉しくない。その見えかけてる乳首をむしり取ってやろかアホめ。

 

問題は水の運搬かな。ペットボトルに入れて運ぶにしても、ベースキャンプはなるべく近くにして欲しい……。実際に飲料水としてだけじゃなく、今の石崎みたいに水を浴びたり、服を軽く洗ったりするためにも川を使う必要ありあそうだし。

 

そんな有意義な情報収集が出来た達成感と共に、船の近くのCクラスメンバー達の居る場所に戻ってきた。

 


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