ようこそ邪悪な教室へ   作:マトナカ

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原作そのままでも死ぬほど有能な龍園くん。


錬金術

こんにちは、Cクラスの特別奴隷メンバーの1人、浅井虎徹です。真夏の炎天下、死にそうになりながら今日も龍園氏に調教されています。既に体操着は体液でビチョビチョです。

 

Cクラス生徒の大半から少し離れ、声が届かないくらいの位置。そして他のクラスが来てもすぐ分かるような視界の良い場所に来ると龍園が話し始めた。

 

「小宮、近藤。お前ら2人で今すぐ他クラスの調査、ベースキャンプの場所とか調べてこい。水は持っていけ」

 

「はい」

 

「了解っす」

 

まずは完全調教されてる舎弟を調査に向かわせた。確かに大事だけど……俺達のベースキャンプまだ決めなくてええんか?

 

「さて、既に作戦はあるが、とりあえずお前らが何を考えてるか言ってみろ。まずは……金田」

 

「はい。……何よりも水の確保だと思います、生き延びるため必要な最優先事項かと。水の確保さえ出来れば、意外とかなり多くのポイント消費を抑えられるのではないかとも考えています」

 

水が最優先、ってのは俺も賛成だな。

 

「食料に関しては……島の規模が大きいことや、試験として用意されている島ということから、ある程度の食料は現地調達出来るよう環境自体に手を加えられているのではないかと推察します」

 

なるほど。学校側が島で食料の現地調達を出来るようにしてそう……ってのは想定外だった。でも確かにありそう。もし普通の木があるだけの森で何も食べるものが無かったら……ただひたらすらポイント使って節約生活するだけだもんな。もしそうだったら試験としても生活としてもクソつまんなすぎて笑うしかない。

 

「後は、クラス内にまずサバイバル経験がある人が居ないか確かめるのはどうでしょうか。恥ずかしながら、自分にはそうした知識が不足してますので……」

 

良いアイデアだ。サバイバル術とか知ってるヤツが居たらそいつから色々聞いたり、場合によってはその生徒の指示で動いた方が効率良さそう。

 

「分かった。次は……伊吹、言いたいことがあるなら言え」

 

「別に……まだ島がどういう感じなのか、歩いて見てないから分かんないし。でも、ポイントを大きく増やすチャンスだってことは分かる」

 

「フン。……椎名はどう思う」

 

「そうですね~……私もサバイバルの知識は不足していますので、金田くんが言うようにクラス内に経験者が居ないか確認するのに賛成です。またサバイバルブックがマニュアルの交換対象にあるなら、多少高くても手に入れていいと思います」

 

サバイバルのハウツー本か。あるかな?ちょっとバランスブレイカーっぽいし、自分達だけで考えろ的に用意されてない気もする。あってもめっちゃ高そうだな。

 

「あとは……他クラスのリーダーを言い当てることが出来たら素晴らしいというのは分かりますが、失敗した時の減点50が大きいので……指名しない方が良いかも、と。それだったら他クラスに違う生徒を指名させるよう誘導する方が簡単かもしれないと思いました」

 

「なるほどな。……浅井、お前はどう考える」

 

「水を最優先はめっちゃ同意、んで食料を学校側がある程度用意して島に配置してそう……って可能性は考えてなかったけど、それまた同意。金田、頭ええな」

 

「……ありがとうございます、浅井氏」

 

なんかそう呼ばれると戦国武将になったような気分になるね。初めて呼ばれた、新鮮だ。

 

「で?……他になんかねぇのか」

 

「俺もある程度は島に食料あると思ってたけど、かなり数が限られると思ってたんだよね。だから少しでも早く、少しでも多く先に確保したら、それだけ他クラスが飢える……と思ってた。そのためにポイントでリュックとか交換出来るなら、それ使って確保して運んだら良いかなって」

 

「フン……なるほどな」

 

「もし仮に取りすぎて無駄になったとしても、料理に失敗したという名目で燃やし尽くせば他クラスに渡さず食料を減らせたってことになるだろうし。野菜とかがあったら、ちょっと腐らせて他クラスに渡せばギリギリ暴行じゃない判定で他クラスから体調不良者出せるんじゃないかな、とかも思った。食中毒なら異変に気付きやすいし、リタイアしやすいだろうからね」

 

周りに人が居なかったら助けを呼べず重症になるかもしれないけど、集団生活してる時だったまず大丈夫でしょ。誰かが体調悪化してたら死ぬ前に気付くだろうし。かなり平和的な攻撃だと思う。

 

「……ククク」

 

あれ?龍園のウケは良いけど他のメンバーは妙に冷たい視線だ……。なんでだよ、俺達のポイント確保も大事だけど、同じくらい他クラスのポイント減らすのも大事なんちゃうの?そんな目で見られるの心外だぞ……。

 

「まぁ参考にはなった。だが今回の試験、俺はポイントをすべて使うつもりだ」

 

はい?何言ってんの?

 

「はぁ!?アンタ馬鹿ぁ!?」

 

「本気ですか龍園氏!?」

 

伊吹と金田が思わず大きな声で反応し、椎名は何も言わず龍園の意図を考えるような顔、石崎とアルベルトはこういう発言に慣れてるのか、あまり表情を変えてない。……石崎は話についてこれてない可能性もちょっとだけある。

 

「クク……うるせぇよ。これはほぼ決定事項だ」

 

「せっかくのチャンスをどういうつもり!?」

 

「ギャーギャー騒ぐな。……聞いておくが、普通にやってどれだけポイントを確保出来ると思ってるんだ?なぁ伊吹」

 

「そ、そんなの……200、とか?」

 

「金田はどう考える」

 

「そうですね……。先程の食料と水のセットが1食分10ポイント、今日から最終日の朝までおよそ18食分。1日2食だとしても12食。全部をポイントでまかなったらマイナス120。現地調達で半分用意出来たとしても、マイナス60……。さらには生徒達が生活するための追加テントは必須でしょうし、あとは賛否が分かれるかもですが40人でダンボールトイレ1つだけというのは無理がありますし、衛生状態のためにも仮設トイレなどは必要でしょう……。200残すのは、恐らく無理です。スポット占有での獲得ポイントを入れても、最高に良くて残せるのは150ほどだと考えます。厳しく見ると、100前後くらいに思っておくのが妥当かもしれません」

 

うーん金田の説明分かりやすいな。俺もコイツ気に入った、そりゃ龍園も重宝するわ。

 

「あぁ、そんなもんだろう。だが、ククク……もっと遥かに多くの見返りを俺は得るのさ。具体的には……まだ言えねぇが」

 

なぜかチラリと俺の方を見る龍園。なんでだよ。

 

「……納得出来ないんだけど」

 

伊吹の怒り、当たり前の反応なんだろうけど龍園に従うばかりのCクラスだと、いつだって新鮮に見えてしまう。

 

「後で説明してやる。今は言いたくないんじゃなく、言えないんだと分かれ」

 

おっ?龍園にしては真面目で優しいんじゃない?「黙ってろザ~コ」とか言いそうなのに。

 

「……チッ」

 

「まずは先にAクラスと接触する、話の続きはその後だ。小宮近藤が戻ってきたら行くぞ、石崎、アルベルト……浅井も来い」

 

別に良いけど、何すんだ?水確保どうすんねん。

 

 

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小宮近藤のコンビがそこそこ息を切らして泥と葉っぱまみれになって帰ってきた。須藤事件で下手こいた罪滅ぼしとして、早く帰ってこれるよう頑張ったのかね。

 

Bの拠点位置、Aがどっちの方に向かったか、そしてDクラスは数人単位で探索している最中というのを確認し、戻ってきたという。

 

「ご苦労、休んでろ。……マニュアルは見ていいが、ポイントはまだ一切使わせるな。お前らが監視しとけ」

 

「はい」

 

「了解です」

 

なんとなく重宝してやってる感を出す龍園、でもまぁ使い勝手の良い労働力として確かに評価出来るもんな。

 

「さて、行くぞ」

 

そう言ってさっさと歩き出してしまう龍園。暑すぎて面倒だな……さりげなく逃げちゃおうかな……。

 

「オイ、浅井。さっさと来い。急ぐぞ」

 

「……はいはい」

 

大して動いてないのにもう汗でビチョビチョだぞ……。

 

 

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森の中に入ったら木陰でまだマシかと思ったけど、あまりにもモワモワした熱気ある湿度で全然駄目だ。慣れない大自然を歩くのだけでも結構疲れるし……。もぉー!ヤダー!!

 

めちゃくちゃ帰りたい、特別試験とかどうでもいい……なんて思い始めていると、なぜか周囲をチラチラ確認しまくってる龍園が突然立ち止まり、話しかけてきた。

 

「俺はこれから200ポイント分の物資をAクラスに売り付けるつもりだ。プライベートポイントとの交換としてな」

 

ん?なんだいきなり。物資をppにする……?

 

「あ~?……なるほどね。なるほどなるほど……それでポイント全部使うってことか」

 

「さ、流石龍園さんっす!」

 

「……。」

 

信じられないくらい賢いなコイツ……。それだったらサバイバルなんかで苦労せず、確実にSP200を確保出来るようなもんってことか。やべぇな。ルールの穴とかいう話じゃなく、ルールを完全無視する作戦だな。

 

「あぁ。CPの代わりに、それに相当するppをもらう」

 

「えーっと、CP200相当ってことは……毎月、いくらだ?」

 

なんか、暑さで頭の回転が鈍い。暑い暑い暑い……。ジメジメしててクソ暑い。帰りたい。

 

「月々80万だ。それを交換条件にする」

 

「なーるほどね……。ええんちゃう?」

 

AクラスならCP1000くらいだったはずだし、ちゃんと支払い能力あるでしょ。

 

「浅井……お前は言いたい事ねぇのか?」

 

「えっ?……まさか褒めて欲しいの?いや、まぁ……確かにめっちゃ頭良い作戦だと思うけど……」

 

どんなおねだりだよ、お前におねだりされてもなんも嬉しくねぇわボケ。素直に感心した俺の心を返せ。

 

「CPだけ見たら、圧倒的にAクラスに負けるだろうが」

 

「……あっ!」

 

そうだったそうだった、坂柳との勝負があったんだ。いやでも、うーん……。

 

「いくらかpp払ってやる。……その代わり邪魔すんな」

 

なんで俺が邪魔するんだよ。

 

「そりゃ困るけど、そこまで上手くポイント使えるなら、まぁ……別に良いよ」

 

「坂柳との勝負は諦めると?」

 

「うーん、まぁ、仕方ないでしょ……。そもそも『貸し1ですよ』ってなんかヤバい事をやらされそうになっても、やりたくなかったら無視するもん。損が無いと言えば無いよ」

 

その場合は、残念ながら坂柳からの『虎徹くん』呼びを諦めることになるだろうけど……。別に高校3年だけの付き合いだろうし、『約束を守らない男』ってレッテル貼られても言うほど痛くないしなぁ。「彼は約束を守りませんでした」とか言われたって、「ここでは言えないようなムチャクチャな要求されたんだ!」「性奴隷にされそうになったんだ!」「不能にされかけた!」とか他の生徒に言いまくればいいもん。……坂柳の性奴隷ならアリ寄りのアリだけどな。

 

「そうか。……分かった」

 

「ついでに言えば、さっさとリタイアして客船戻りたい気もするし……。暑すぎる、マジで。死んじゃうよ」

 

虫もめっちゃ居るし。ここは地獄か?

 

「……他クラス妨害はどうすんだ?」

 

「あれはアイデアとして言ったのであって、どうしてもやりたいって程じゃないけど……。面倒だし」

 

「そうかよ」

 

「てかもしAクラスと取引が上手くいったら、ポイント残りどうすんの?」

 

「あぁ、それは……クク、俺達が遊びまくってるのを見せて、他クラスには試験を放棄したと思わせるのさ。そこで、そんな俺の方針に異を唱えた2人として痛めつけた伊吹と金田を他クラスに送り込む……。スパイとしてリーダーを誰か探らせ、リーダー指名で喰ってやる」

 

周りに誰も居ないのを再び確認しながら龍園はそう言った。

 

「はー、なるほどなぁ……」

 

「ついでに、その2人がリーダーの証拠を得たら、その情報を葛城に売りつけるつもりだ」

 

「……なんで?」

 

「不満か?」

 

なんでわざわざトップ独走してるAクラスにさらにプラスになるように……だったらDクラスの情報をBに売るとか……いや、ダメか。その2クラスにスパイを送り込む以上、そういう交渉をBとD相手にする訳にはいかないのか。

 

「いやしょうがないのか。まぁええんちゃう?SP200を疑似CPのpp振り込み契約として変換。SP100くらいは他クラスを騙すことに使い、他クラスのリーダー当てでのプラスCP150を狙うってこと?」

 

「あぁ、そうなる」

 

死ぬほど頭ええなコイツ。SP300をどれだけ減らさないかの戦いを、CP200相当のpp、BとDのリーダー情報でCP100相当のpp、んでもって3クラスのリーダー当てでプラスCP150狙い。合計したらCP450相当。神か?

 

「大賛成だよ。……でもリーダー当てるのは難しいんじゃないの?裏情報を知ってて油断しないであろうA相手とかは特に」

 

「そこは俺らが脱落したと思わせた後、俺1人だけが島に残りAクラスに混じって潜伏する。その間に見つけ出してやろうかと思ってたが、他クラス妨害を考えると……。いや、考えるのは葛城と契約してからだ」

 

「うん、まぁそうね。頑張って月80万契約しっかり成立させて来てよ。……退学者が出たらCPより得ってことになるもんね」

 

CP200で、40人いたら1クラスあたり月80万。けど39人なら月78万pp。微妙な差だけど退学者が何人出るか分からないから、意外と良いメリットになるのかも。

 

「あぁそうだな。……行くぞ」

 

そうしてまた歩き出し、ジャングルのような森を踏破するのだった。

 

 

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途中、探索してるAクラス生徒に場所を聞いたりして、なんとか辿りついたのは洞窟だった。既に入り口にはブルーシートを使った目隠しがされており、中が見えなくなっていた。良いなぁ、リーダー絶対バレないだろうし、テント買う費用も節約できるスポットっぽい。涼しそうだし一番の当たりスポットっぽいな。

 

「葛城ィ!Cクラスの龍園だ。交渉しに来た!出てこい!」

 

大声で呼び出そうとする龍園。もし居なかったらめっちゃ恥ずかしくない?大丈夫かよ。

 

「……何の用だ」

 

おっ、出てきた。ハゲだ~!久しぶりのハゲ、本物のハゲだ。テンション上がるな。

 

「交渉だ、葛城。リーダー2人だけで話すぞ」

 

じゃあなんで俺とアルベルトと石崎まで呼んだんだよ……。いやまぁ意見聞いてもらえたのは良かったし、リーダー同士の交渉に参加したくもないけど、だったら途中で帰らせてくれても良かったじゃん……。

 

「良いだろう、こちらに来い。他の者は待っててくれ」

 

「ちょ、待ってハ……葛城。少しでいいから水くれない?頼むよ」

 

ここに来る時に龍園が急いでたせいで水を持ってき忘れた。そのせいでノドがカラカラに乾いてる。そういえばバスの中でハゲは席譲ってた優しそうなヤツだったというのを思い出しながら、試しに聞いてみると、

 

「仕方ない……。これからは必ず水を持ち歩くようにしたまえ。脱水症状を甘く見るな」

 

そう言うと洞窟に入って、持ってきたペットボトル水を3本も渡してくれた。

 

「サンキュー!」

 

やっぱ良いハゲだ。正義感だろか、良いヤツだ。

 

「では龍園、こちらに来い」

 

そうして良いハゲと悪いロン毛は洞窟の中に入っていった。交渉上手くいきますように、と。

 

 

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石崎、アルベルトと一緒に近くの木陰で休みながら、たまに通り過ぎるAクラスメンバーに『何だコイツら?』という目で見られまくること約15分、龍園が洞窟から出てきた。

 

「どうだった?」

 

「ククク、契約成立だ」

 

「おぉ、良かった良かった」

 

「やりましたね龍園さん!」

 

「……。」

 

アルベルトですらちょっと嬉しそうな雰囲気を出してる。……嘘だ、分からん。気のせいかも。表情筋あるのかな。

 

「確認だけど、契約は形が残るようにしてあんの?」

 

「Aクラス担任真嶋が立会人となって契約した。……流石に、教師が騙すことはないと思う、が……」

 

俺も流石に大丈夫だと思うけど……、

 

「一応、後で坂上先生にも来てもらって、教師2人が立会人として契約確認すればええんちゃう?……それまでまだポイント交換しないでおこうよ。一応ね、一応」

 

「……そうだな」

 

って、こんな話は正直どうでもいい!

 

水を飲みながら日陰で休んでた間に、色々考え、ちょっとしたことを思い付いてた。考えれば考えるほど龍園の『SPゼロ戦略』に惚れ惚れするが、それを踏まえてだったらもっとやれることがある。

 

「龍園、とりあえず戻ろう。ちょっと思い付いた事あるんだよね」

 

「……あぁ」

 

洞窟の近くだとあまりにも場所が悪いので、Cクラスの皆が居る所へ帰る途中で話したい、というのを一瞬で察してくれた龍園がすぐさま歩き出す。

 

 

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10分ほど歩き、ほぼ森の中。周りに人影が全く見えない場所で話し始めた。

 

「もう大丈夫かな?」

 

「あぁ。……石崎とアルベルトは周りを警戒して誰か居そうだったらすぐ知らせろ」

 

「了解です」

 

「OK, BOSS」

 

「で、なんだ、浅井」

 

「ポイントゼロ戦略はめちゃくちゃ素晴らしいと思う。けど、だったら……『俺達Cクラスのリーダーはコイツ』って情報を他の3クラスに売っても良いと思ったんだよね。……それだけでCP50×3で150相当じゃん?」

 

「フッ……。クク、良いアイデアだ。リーダー指名は無意味になるが、契約で堂々とppを巻き上げてやろうってか。ククク、確実性ならそっちの方が遥かに上だと言えそうだ……。悪くねぇ」

 

お、反応良いね。そりゃスパイ送り込んで見抜くって、出来たら良いけどそこまで上手くいくもんでもないだろうからねぇ……。

 

「まぁその、Aクラスにもリーダー情報売るってならスパイさせなきゃだろうけど、Cクラスはスパイ当てなくてもSP150相当をppでゲットしちゃえばいいもんね。戦わずして勝つというか」

 

他クラスで同じようにポイント放棄作戦をしてるクラスは無いだろ……。『しっかりポイント残してCPをゲットしよう!』って説明受けて1時間も経たず何を思いついてんだこのロン毛。良くも悪くも頭おかしいよ。

 

「……さらに言えば、リーダーは交代出来るはずだ。リタイアのペナルティ減点30ってのもSPがゼロなら関係ない」

 

「えっ、マジで?」

 

でも、言われてみればそうか……。減点されてもどうでもいいんだから、リーダーもリタイアしちゃえば済むってことか。んでリーダーは1人居なくちゃいけないって言ってたし、普通に考えて他の人を選べるだろう。

 

「そうだ。リーダーが誰か教えて、その見返りとしてpp契約をして、その後でリーダーを変えりゃいい。ククク……指名失敗して絶望するザコ共の顔が目に浮かぶぜ……」

 

こいつエグいこと思い付くなぁ……。

 

「はー、なるほど。契約自体を『Cクラスのリーダー指名に成功したら』とかじゃなく、『カードキーに刻印されているリーダーの名前を見せる』とかにしたらいいのか。その契約の後でリーダー変えちゃえばいいと」

 

「ククククク……やるじゃねぇか浅井。リーダーを見抜かずに、3クラスのリーダー指名に成功したのと同じ状況に出来るってこった。使えるぜ」

 

そういえばそうなるか。それぞれのクラスからCP+50相当と、CP-50相当。確かに指名成功と同じだ。

 

「リーダーを変更したら、リーダー指名で言い当てられることがないし、SP減点もされない。そうなると、こっちが普通に他クラスのリーダー指名に成功したらプラスにも出来るってことか」

 

そうなるとやっぱスパイ大事だな。

 

「……あぁ、そうなる。……ククク」

 

そこそこ自信あるアイデアだったし、ここまで喜んでくれるのは悪い気分じゃないな。

 

 

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「何にせよ、まずはAクラスとの契約をちゃんと締結しないとね」

 

「そうだな」

 

そうしてまたCクラスが居る場所への道を歩き出した。気温が少しだけ下がったのもあるだろうけど、行きの道より遥かに足取りが軽い。

 

いやはや、ほんの1時間くらい前まで『1秒でも早く豪華客船に帰りたい、リタイアしたい』と思ってたけど……なんか、めちゃくちゃ楽しくなってきたんじゃないの!?

 

『1週間頑張って耐え抜いてCP100くらい増やせるかも?』だったのが、

 

『Aクラスに物資供給でCP200相当のppゲット』

 

『Cクラスのリーダー情報をA,B,Dに売ることで合計CP150相当のppゲット』

 

『B,Dクラスのリーダーを見抜き、その情報をAクラスに売りつけてCP100相当のppゲット』

 

『Cクラスのリーダーを試験終了前にリタイアして変えることで、他クラスに指名失敗させSP50ずつのダメージ』

 

『普通に他クラスのリーダー指名を成功してSP獲得、3クラス正解でCP150獲得』

 

まだ契約締結出来たと言えるのはAへの物資供給だけだし、まだまだこれからだけど……こうやって考えるとめちゃくちゃポイント動かせそう。

 

すべてが上手くいったら、CP600相当のプラス?

 

やばい、流石にテンション上がってきたぞ。CPを倍に増やすようなもんじゃんこれ。しかも他クラスの点を減らすように妨害する作戦なんてまだまだまだまだあるし……。

 

なんか、めちゃくちゃ試験を荒らすことになりそうだな……。これだけ大規模に島とか用意しておいて、最初からサバイバル放棄してるクラスがボロ勝ちしたら学校側の管理者達は泣くんじゃないの……?

 

ま、ええか。

 

無人島生活……頑張ってみようじゃんか!

 


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