「アストラゼネカの血栓」怖がる人が知らない事実

「2回目はmRNAワクチン」がなぜできないのか?

ファイザーやモデルナの新型コロナワクチン(mRNAワクチン)では、接種後に血栓症のリスクが上がるとの報告はない。

アストラゼネカのワクチンは、「ウイルスベクターワクチン」といって、人体に無害な遺伝子組み換えウイルスを「運び屋」(ベクター)として使用する。新型コロナウイルスの目印タンパク質の設計図となる遺伝子を組み込んで、ヒトの細胞へと運ばせ、認識させるのだ。

目印タンパク質を細胞に認識させる点はmRNAワクチンと共通だが、その設計図をどうやって細胞に届けるかが異なる。そのために副反応にも多少の違いが生じるらしい。

とはいえ、実は局所反応や血栓症以外の全身反応については、mRNAワクチンとアストラゼネカで大差ない。アナフィラキシーも含めて、だ。むしろアストラゼネカは2回目接種のほうが、副反応は初回接種よりも少なく、軽いとされている。

血栓症の発症頻度は?

ならば気になるのは、アストラゼネカでの血栓症の発症頻度だ。まずは同社のお膝元、英国政府の発表(8月19日付)を確認しておこう。

英国では2021年8月11日までに、アストラゼネカ初回接種が約2480万回、2回目接種も約2390万回行われた。

そうした中で、医薬品・医療製品規制庁(MHRA)には、接種後の血小板減少を伴う血栓症が412例(18~93歳)報告された。うち147例は、脳静脈血栓症だった。全体の過半数にあたる210件が女性で、発症者のうち73人(18%)が亡くなった。

血栓症の9割は1回目接種後に発生しており、100万接種あたり14.9例の計算だ。

だが、年齢で2つに分けてみると、若年層で倍増する。50歳以上では100万接種あたり11.0例なのに対し、18~49歳では100万人あたり20.2例だった。

なお、2回目接種後の発生率は、全体で100万回あたり1.8例と大きく減少。しかも、若年層のほうが半分の頻度となった。50歳以上では100万接種あたり1.8例、18~49歳では100万接種あたり0.9例だった。

接種後の血栓症は他の欧州諸国やアジアからも報告されている。

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