新型コロナウイルスに関してテレビでデマレベルの誤情報を声高に拡散する医師たちに惑わされず、正しい情報を持っていただきたいと願ってブログを書きました。新型コロナウイルスのPCR検査の精度が40%弱と悪いことに関して、感染研のプローブのせいじゃないのかという質問を受けましたのでお返事します。
みなさま、こんにちわ。
ちゃんとした情報が出回るよう、海外の医学論文も含めて紹介したいと思います。
上昌広さんをはじめとするTVで勝手なことを言う医師たちは、もっと勉強してからにしろっ!!というのが私の忌憚ない意見です。
■ 目次
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新型コロナウイルスはRNAウイルス
RNAの特徴
RNAは一本鎖で、塩基はDNAのチミンの代わりにウラシルを持っているということくらいしかDNAと違わないによく似た分子です。デオキシリボースの代わりに2’が-OHとなっているリボースをもっています。しかし、このことがRNA分子にDNAと決定的に異なる性質を与えているのです。
RNAは不安定
遺伝子として安定なことを要求されるDNA。
それにくらべてRNAは分解されることを運命づけられていてもともと不安定な分子です。
DNAがRNAに転写され、RNAからタンパクに翻訳される、というのがセントラル・ドグマでしたね?
すると。DNAとちがってRNAはできては壊れ、出来ては壊れを繰り返す分子なのです。
だから、壊れやすい性質を持っていないと大変なことになります。
RNAの不安定性の原因
生物の細胞には、RNAを分解する酵素(RNase)がたくさんあります。
その上、RNAは物理化学的に不安定で、RNaseのない状態でも簡単に分解されます。
また、アルカリ状態では速やかに加水分解されてしまうという特徴もあります。
RNAの取り扱いで留意すべきこと
RNAは壊れやすく分解酵素も多いということを念頭に置いて実験手技をすることが必要になります。
1.いたるところにRNaseがあることを意識する。
細胞内には大量のRNaseがあるため、細胞を破壊する時に最も注意する
体液との接触を極力避けて、手袋を常に使用し、唾液が飛散しないようにする
浮遊細菌・ほこり・エアロゾルの混入を避ける(唾液を飛散させないようマスクをする)
2.RNAは不安定だがRNaseには安定なものが多い
タンパク変成剤のSDSやフェノールだけでは完全には失活できない
EDTAのようなキレート試薬では失活しない
熱に安定なものが多くり煮沸だけでは完全には失活できない
3.pH6程度の微酸性で安定。アルカリ性では分解される。
とはいってもコロナウイルスのRNAはキャプシドと呼ばれる入れ物と、その外側のエンベロープという入れ物に二重に包まれていますので、むき出しのRNAのように不安定ではありませんが。。。
BioRxivに投稿された論文より
www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.02.20.958785v1.full.pdf
2019-nCoVの核酸検出は臨床診断の重要な指標の一つである。
しかし、臨床現場における2019-nCoV核酸の偽陰性率は非常に高く、陽性率は30~50%に過ぎない。
中国では、qRT-PCR法の鋳型として核酸が単離される前に検査官がウイルス感染を起こさないようにするために試料を56℃以上にしてウイルスを不活化して検査する。
コロナウイルスの一種である豚流行性下痢ウイルスを用いて、ウイルス不活化処理がそのゲノム完全性を深刻に破壊することを実証した。
結果、56度30分で不活化後に検出可能なウイルスは50.11%、92度5分ではわずか3.36%であった。
ところで、国立感染症研究所のプロトコルは大丈夫なのか?
質問を頂きました
このブログに関する意見を述べてほしいというものです。
にゃにゆえこのブログに対する反論をわたしがしないといけないのか ということは 疑問に思わなくもないのですが、もともと大変なんにでも興味津々な性格なので、素直にお答えしてしまいます!
プライマーとは?
今回は、RNAからDNAを作ってそれを増幅するわけなので、「逆転写」という過程が必要になります。
プライマーの種類もいくつかあるので見ていきましょう。
オリゴ(dT)プライマー
真核生物のmRNAのポリ(A)テール(RNAの最後のほう、つまり3’側はポリ(A)といってAAAAAAとアデニンがいっぱい並んで修飾されているものがあります。全体の1~5%がこの修飾を受けています。)にくっつく12~18個のデオキシチミジン残基です。
ランダムプライマー
ランダムな塩基配列を持ったオリゴヌクレオチド。
しばしば6個のヌクレオチドから成り、通常はランダムヘキサマーと呼ばれる。
ランダムプライマーは、ランダムに結合するため、試料中のいかなるRNA種ともアニールできる可能性があります。
ポリ(A)テールのないRNA(例えば、rRNA、tRNA、ノンコーディングRNA、スモールRNA、原核生物のmRNAなど)や、分解したRNA(例えば、FFPE組織由来など)や、二次構造を持つことが知られているRNA(例えば、ウイルスゲノムなど)の逆転写反応に利用されます。
遺伝子特異的プライマー
遺伝子特異的プライマーは、逆転写において最も特異的プライミングを可能とします。
ターゲットとなるRNAの配列が既知である場合にその情報に基づいて設計されます。
遺伝子特異的プライマーは通常、ワンステップのRT-PCRアプリケーションに使用されます。
このプライマーは設計ミスなのか?
Oligo(dt)12-18Primerについて
まず、コロナウイルスがpoly(A)を持っていないと そもそも これ入れても意味ないよね、ってことで。コロナウイルスの構造を見ていきましょう。
jsv.umin.jp/journal/v61-2pdf/virus61-2_205-210.pdf
から拝借いたします。
このように、コロナウイルスの3’側にはポリ(A)テールがあります。なので、オリゴ(dT)プライマーを選択することは一見間違いではないように思えます。
しかし、しっぽから合成を始めて、本当に増やしたい目的の場所までちゃんと合成されるのか?1分1K (1000塩基)しか合成できないのによ?! 5’側にあるORF1aにたどり着くのに30分もかかるのに10分じゃどだい無理じゃないか。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。
ということを疑問に思われているんですよね?
それでは、目的の場所がどこかを見てみましょう。
www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NC_045512
こちらにあるとおり、COVID-19は29903の塩基を持っていて、ポリ(A)は最後のしっぽのところ。
そして。さっき引用したコロナウイルスの構造を見ていると、ORF1aは5’側と、ポリ(A)から一番遠いところにあります。
伸長時間は標的配列の長さによって異なり、 1kb 以下の場合は 1 分で十分です。それよりも長い配列の場合には、 1kb につき 1 分の割合で長くします。つまり、「運よく」ポリ(A)から開始して途切れずこのプライマーで目的のORF1aにたどり着けるには、30分近く必要とするってことですよね。
しかし。要するにこのOligo(dt)12-18Primerで見ているのは、おしっぽ(3’側なのでしっぽ。わたしたちは おしっぽ と可愛く呼んでいます。リケジョなので💛意外とかわいいんですー。リケジョって。「洋美ちゃんは嫌いでもプライマーは好きでいてほしいの~💛」と割烹着きて言ってみようかな?(笑))の増やしやすいところでとりあえず「コロナちゃんがいるかどうか」だけをみるのに使っているのではないかと思います。
そうすると、このOligo(dt)12-18Primerちゃんで十分💛
Random Hexamersについて
うーん。。。まあ、ちょっとどうして特異的プライマーではなく、ランダムヘキサなのか?については正直、わからないのですが。。。
一つ言えることは、「実験室レベル」ならば特異的プライマーを使用すると思います。
しかし、これは「臨床診断に用いられる」ものなのですよね?
本来ならば、臨床診断に使用するアッセイは、精度などをきちんと臨床試験してから採用されます。ところが、今回、実験室レベルのものが新興感染症であるがゆえに突然一気に臨床に持っていかれる。
そうすると、「いままでやったことのある」やり方を採用したのでは?ということがまず浮かびます。
あと。
GCが多いとプライマーがくっつきやすいため、GCリッチなところが多いととりあえずランダムヘキサマーでってことも考えられます。
なので、望ましいとはいいがたいが、激しく間違っているかと言うとそうではないと思います。
23℃10分について
これはですねえ。。。
あまり他人様のまちがいを 揚げ足取りたくはないのですが。。。。
奥さんが神戸大学でPCR扱うお仕事をしてるって書いてるので、キミは普通に考えたら男性ですね?
キミ。
キミ、はっきりしてもらいたいんだけど、キミの式は -35 か +35 かわからないんだけどね?
おばはんにわかるように教えてくれるかな?
それと。われわれリケジョはこう計算するんだけど。(文句あるならメールくれ)
GC 4度 AT 2度 平均3度 ヘキサマーとかいてあるが、12-18なので3×(12~18)=36~54
というわけで。
23度でも十分。効率悪くてもくっつくよん。
しかも、おしっぽから頭まで作ろうとかそんな無茶しようとているわけではなさそうので10分で十分。
そもそも、最初のRNAからcDNAをつくろうという過程ですよね?これって。
これはもともと2stepなので。
だから、RNAが壊れやすいので23度で10分。別にいいんじゃないかな?
そして、1回cDNAができたら、あとは温度をあげてどんどん増やしていけばいいから。
大体、②とか⑧とかのプライマーのTM値を計算して23度がおかしいと言っているが、②とか⑧とかは、RNAからcDNAを作った後にそれを増やすPCRの過程で使うものであって、23度で使うと誰も書いていないじゃないかと、おばはんの目には見えるが、どうかな?
プライマーの設計ミス、ってぎゃーぎゃーいう前に、サイエンティストの端くれならば、まずは落ち着いて手順書を読め、と言いたい。
思い込んでつっぱしると、ろくなことにならないよ!
わたしも経験ある。
仲田:すごーい珍しい変異だ(*///∇///*) 報告されてない! ←きゃぴっとするものなのです。こういう状況って。
師匠:・・・。仲田、コンタミの可能性もあるので確認するね。
数日後
師匠:俺がやったら出なかったよ。仲田、コンタミさせたな。
仲田:il||li _| ̄|○ il||l
はやるきもちをおさえることができる能力がサイエンティストには必要です!!
以上より
プライマーの設計ミスだ、という指摘に対しては
おちつきのないおかたからのナンクセと認定いたします。
BioRxivからもう1本
www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.02.25.964775v1.full.pdf
【アブストラクト】
COVID-19の分子診断は、現在、中国、ドイツ、香港、日本、タイ、米国の研究所が提案しているプライマーおよびプローブをWHOを通じて掲載するSARS-CoV-2を標的としたワンステップ定量RT-PCR (qRT-PCR)によって行われている。また、2020年2月13日から中国湖北省のCOVID-19症例を同定するために、CTスキャンを含む臨床診断法が利用されている。qRT-PCR法はSARS-CoVやMERS-CoVなどの呼吸器感染性ウイルスを検出するためのゴールドスタンダード法として役立ったが、SARS-CoV-2を標的とした現行のqRT-PCR法には若干の注意が必要である。第一に、SARS-CoV-2がSARS-CoVと高い類似性を有するため、プライマー-プローブセットは交差反応するであろう。第二に、検査法の感度は、入院後早期の時点で疑わしい患者を確認するには不十分である可能性がある。実際、初診時のCTスキャン結果が陽性でRT-PCR結果が陰性であった症例が報告されている。分子診断の性能はプライマー、プローブ、試薬に依存する可能性がある。SARS-CoV-2の分子診断のための現在のqRT-PCR分析の比較結果はない。
本研究では、SARS‐CoV‐2のRdRp/Orf1およびN領域を標的とする既報プライマー‐プローブセットを用いてqRT‐PCR分析を行った。これは、SARS-CoV-2の検査室での確認のための種々のプライマー-プローブセットの最初の比較分析である。― 中略(良い子は自分で英語読んでね💛) ―
【結論】
さまざまなプライマープローブセットが、qRT-PCRアッセイによってSARS-CoV-2を検出するためにすでに報告されている。この検査法の感度は、SARS-CoV-2感染の初期段階で疑わしい患者を確認するには十分ではない可能性がある。それにもかかわらず、SARS-CoV-2の分子診断のための現在のqRT-PCR分析の比較結果はなかった。本研究では、SARS‐CoV‐2のRdRp/Orf1およびN領域を標的とする各種プライマー‐プローブセットの最初の比較分析を、実験室確認のためにqRT‐PCRにより行った。RdRp/Orf1地域を標的とする場合、ORF1ab (中国)セットが他のセットよりも最も感度が高い可能性がある。N領域の高感度qRT-PCR法には2019nCoV_N2,N3(米国)、NIID_2019-nCOV_N(日本)セットが推奨される可能性がある。したがって、ORF1ab (中国)、2019-nCoV_N2、N3(米国)、NIID_2019-nCOV_N(日本)セットからの適切な組み合わせを、SARS-CoV-2の高感度で信頼性の高い検査確認のために選択すべきである。
というわけで、日本のプライマーセットは推奨レベルのものである、と書かれてあるので、よろしく!
てな感じでいいですか?
新型コロナウイルスのPCRは結局のところなぜ感度が悪いのか?
これはですねえ。
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ずっと言っているように
取れる検体の場所とか、取った時期とか、いろんな要因があると思います。
ウイルスがいる、とわかっているものを検査するとPCRは感度いいですが。
それは実験室レベルのことで、あくまでも臨床の検体ですので、PCRの実験室レベルの精度が高いことと、臨床検査に持ってきたときの精度は異なって当たり前なんです。
しかし。
今回は興味が向いたので時間をかけてブログにしましたが
あれもー
これもー
とかという要望には基本的にお答えいたしませんので、あきらめてくださいね!
それでは、みなさま、ごきげんよう (^_^ゞ
※ 文化人放送局に出演させていただきました。
サンプルの取り方が統一されていないのではないでしょうか。韓国のドライブスルーの現場を見ると上咽頭を綿棒で拭っていましたが、
これだと唾液がやたら多かったり、嚥下反射が強い人だったり統一した条件でのサンプル採取が難しい気がします。
いっそうのこと、インフルのように鼻咽頭の方が良いのかなと思ったりしてます。
この感度は中国のものです。鼻のようが咽頭よりいいという論文は出てますね。