2096年7月2日
「花音、誤解だ!僕は中条さんを慰めていただけなんだ!」
風紀委員の巡回も終わろうとしている放課後。何故か風紀委員会本部で生徒会役員であるはずの五十里が居て、しかも椅子に縛られていた。そんな状態で五十里は何かしらの潔白を千代田へ抗議し続けている。
「何、あれ」
「俺に聞かないでくれ」
今しがた巡回から帰ってきた雫が先に帰ってきた俺に状況説明を求めるが、俺が帰ってきた時にはすでにこうなっていた。
「いつものバカップル、とは違うみたいだね」
「痴話喧嘩、とも言いづらいな。一方が縛られてるんだし」
無駄に丁度帰ってきた幹比古と共に、俺はあの惨状を呆れながらも分析する。
千代田と五十里のイチャつきはこの風紀委員会本部でも、およそこの学校に在学する限り、見慣れなければならないモノである。そんなカップルであるから痴話喧嘩すら珍しいのだが、五十里が縛られている光景は痴話喧嘩程度で収まらないだろう。百歩譲ってそういうプレイだというなら、校内では控えてもらいたい。
「へぇー……。慰める、ねぇ」
「ち、違う!そういう意味じゃない!」
「ふぅん、啓は今の「慰める」って言葉が変な意味に聞こえたんだぁ……」
「うぐっ」
誘導尋問のような、意味深長に聞こえるトーンでの千代田の発言に五十里は過剰反応し、千代田が抱える疑惑の真実味を後押ししてしまった。
「助けてあげた方が良さそう?」
「……そうだな。このままだと業務も滞る」
なんだか可哀想になってきたし、イチャつきの延長線上に思えてきて非常に鬱陶しくなってきた。雫も憐れんでいるようだし、幹比古からも視線で訴えかけているし、俺は仕方なく五十里を助ける方向で介入する。
「千代田委員長、婚約者の不倫でも目撃してしまいましたか?」
「そうなの」
「違う!」
不倫疑惑を千代田は確定させるが、もちろん五十里は間髪入れずに否定した。
「僕は落ち込んでいる中条さんを励まそうとしてたんだ。机に突っ伏している彼女を一生懸命励まそうとした結果、彼女に覆いかぶさっているかのように見える体勢になっただけ。僕に疚しい気持ちはない!」
どうやらそう千代田に見られた事で不倫疑惑が浮上したらしい。しかし、五十里曰く、それは親身に中条を励まそうとしていただけ、との事だ。
事実確認は中条にするしかないのだが、その中条が落ち込んでいるらしく。しかも、もし中条も五十里の不倫に協力していた場合、事実の隠蔽を図るかもしれない。中条が隠蔽していなくても、千代田がそう勘ぐって信じない、というのはあり得る話だ。
「では、中条生徒会長が机に突っ伏す程落ち込んでいた原因は?」
ならば、五十里が吐いた嘘かもしれない部分を追求すれば良い。言い淀むようなら黒濃厚、言い切るようなら白濃厚だ。
「九校戦の種目が3種目も変更になって、早めにしてきた準備が全て水の泡になってしまったんだ!」
五十里は言い切った。それに、中条が突っ伏す程落ち込み理由としては凄く妥当なモノである。すぐさまそんな理由をでっち上げられたのなら、五十里は中々の嘘吐きだ。だが、彼の人となりからしてそれはないだろう。そも、不倫するような人となりでもないだろうが。
「なるほど、中条さんの頑張りが全部裏目になっちゃったと。3種目も変更となると、選手選考からやり直し。選手に内々定してた人たちから恨まれるやつね」
部活連選任枠だけあって、千代田は九校戦選手内々定の取り消しにまつわる諸問題をしっかりと理解していた。
これで彼女も五十里を信じ、不倫疑惑は解消で一件落着となったのだった。
風紀委員の活動も終わった後、達也一団が行きつけの喫茶店で一堂に会していた。
「達也、九校戦の種目が変更になったって本当かい?」
「随分と耳が早いな」
風紀委員会本部での不倫騒動時点で気になっていたのだろう、幹比古がそう切り出し、達也は苦笑交じりの一言を挿んでから肯定する。
そこから九校戦の種目についてが今回の議題となった。
達也が詳しい種目の変更、スピード・シューティング、クラウド・ボール、バトル・ボードが外れ、ロアー・アンド・ガンナー、シールド・ダウン、スティープルチェース・クロスカントリーが加わった事を開示し、その競技内容を説明する。
説明された競技内容に、エリカはエキサイティングさに注目して肯定的、美月とほのかは危険性に注目して否定的な意見を発した。そこから深雪が競技の危険性を掘り下げ、達也が補足していく。達也の補足に対し、レオと幹比古が正当性を認める。
「なぁ、達也。今回加わった種目って、やけに軍事色が強い気がすんだけど」
「そうだな。十六夜はどう思う?」
軍隊の訓練じみている事にレオが気付き、達也は同意すると共に俺へ意見を求めた。俺の勘か、四葉の情報か、どちらが訊きたいのか分からないが、仄めかす程度はしておこう。
「横浜事変の影響だろうね。普段から魔法の勉強をしていても、あの窮地に早急な対応ができた魔法科学生は少なかった。有事の際では学校の教育なんてほぼ意味を成さないのだと、証明されてしまった訳だ」
「つまり、今回の新競技は有事に対応できる魔法師を育てるモノだと」
軍の関与を俺は迂遠に仄めかし、達也は一瞬で濾過して本題を抽出した。見事すぎて、俺は思わず驚愕と称賛の混ざった曖昧な笑みを浮かべてしまう。
「……何にせよ、時期が悪いな。反魔法主義のマスコミに餌を与えかねない。どうしてこんな変更をしてしまったのか……。現下の国際情勢で焦る必要はないと思うんだがな」
「何処にでもせっかちな人間ってのは居るものさ」
達也が疑問を抱いたところで、都合が良いだろうと俺はついでに軍内部に強硬派が居る事を匂わせておいた。これで達也も強硬派の存在を考慮してくれるだろう。
「とにかく。しばらくは忙しくなるよ、達也」
他の皆には九校戦の準備で忙しくなるかの如く伝わるように、だが達也にはまた荒事が起こると勘付いてもらえるように、俺はそうこの議題を締め括った。
◇◇◇
2096年7月3日
九校戦の種目変更により、生徒会はとても忙しそうだった。正直に言えば、風紀委員はそれ程忙しくならなかったのだ。「忙しくなる」なんて明言した手前、達也と深雪にほのかの達也一団内生徒会面子に、俺は若干罪悪感を抱いた。
選手の再選考という事で学校全体が多少騒がしくなったが、間違っても生徒会を非難する者は出なかった。競技が大きく変更となったのだから止む無しと割り切った者がほとんどだったのだろう。中条が全部活に謝りに行くという、誠意を態度に表したのも功を奏したかもしれない。申し訳なさそうな顔で謝り回っていたのだ。そんな対応をした中条率いる生徒会へ非難を向けられる奴はそうそう居ない。
「とても真面目ですね、中条先輩。ご自身は悪くないのですから、謝りに行く必要はないでしょうに」
「そんなとっても真面目なあーちゃんだったから、私は安心して後を任せる事ができたのよ」
俺の自宅でお茶会中の泉美がそう眉根を寄せていたが、同じくお茶会中の真由美は得意げな顔だった。
余談だが、俺宅でのお茶会は泉美の要請で度々開かれている。『十六夜お兄さま分』が足りないと煩いらしく、真由美も香澄も押し切られてしまったようだ。こうして実際開かれている以上、俺も押し切られている訳だが。
そして『十六夜お兄さま分』についてだが、俺はツッコまないでおく。それにツッコむと、真夜の『十六夜分』にもツッコまなければいけない。おそらく前者と後者は同じ成分だろう。
「お姉ちゃん、案外中条先輩を信頼してるんだ。ボクはちょっと頼りない気がしたけど。服部先輩の方が生徒会長は向いてたと思うなぁ。服部先輩、生徒会副会長だったんでしょ?」
「はんぞーくんは会頭の方が適しているわよ。それに、十文字くんの後任ってなると、本当にはんぞーくんくらいしか居ないだろうし」
「あー、確かにそっかぁ」
香澄はより適した人材を指摘したが、真由美の適した配分である説明を受け、納得を示した。
「俺から見ても、服部会頭が後任として相応しいと思います。それでも、力不足を感じてか、部活連の組織改革を行っているようですが」
ほぼ十文字のワンマンでどうにか回せていたような部活連。課外活動において様々な取り決めを行うような組織でありながら、その仕事はかなりの部分が曖昧になっていた。
「部活連の実態があれほどまでに克人さんありきだったとは。全く以って驚きでしたよ」
「……十文字くん、他人に任せるのが下手だったから」
真由美曰く他人に任せるのが下手だった克人は、さらになまじ一人でなんでもできるせいもあって事態が悪化したのだろう。克人が仕事を全てやってしまい、他の役員が仕事を覚えず、それ故に仕事のやり方に多くのブラックボックスを生んでしまった。
それでも全く仕事を任せていなかった訳ではない。事実、去年は服部が部活連の手伝いに行っていた。一応、克人なりに後進育成していたのかもしれない。そのように得ていた経験も踏まえ、足りない部分は克人の仕事、その足跡を解析。そうして現在、服部は部活連を再編しようとしている。
分かりやすいのが部活連執行部か。課外活動中に問題を起こした生徒の取り締まりに関して、実は風紀委員会だけでなく部活連にもその権限があったのだ。その権限を再編し、取り締まる部隊を執行部として立ち上げた。しかし、風紀委員会と部活連の取り締まりはその領分までも曖昧になっており、おかげで今年の新入部員勧誘週間の際に香澄と七宝が争ってしまったのだ。
服部はそんな諸問題の改善に取り組みつつ、後進育成にもしっかり励んでいる。
「意外と、負の遺産を一番残してるのって十文字くんじゃないかしら……」
真由美は振り返る事で問題だったと認識を改め、そうした色々な問題を残した克人に頭痛を覚えていた。
「まぁ、服部会頭は上手くやれていますので。本当に、よくやっています」
「はんぞーくんが頑張ってくれているようで何よりだわ。後で労いの品でも送りましょうか」
最後に服部へ俺と真由美が賞賛を送り、部活連の話題は終了となる。
「それにしても、九校戦の種目変更ねぇ。追加されたのはどれもなんだか荒っぽいし。また狸親父が何か企んでるのかしら」
「すぐに弘一さんを疑うのは止めてあげてください」
実の娘に不穏なモノを全てが彼の策謀とされる弘一には、さすがの俺も同情を禁じ得なかった。彼の日頃の行いが悪いのはあるが、それにしたってこんなに娘に邪険にされていたら不憫だ。
「でもねぇ、十六夜くん。こんな見るからに軍事訓練みたいな競技を追加するのなんて、九校戦実行委員会がするかしら。ようやく反魔法主義的な報道が下火になってきたのに、これではまた油を注ぐようなものよ?誰かの陰謀を疑うなって方が無理だわ」
「陰謀を疑ってしまうのは分かりますが……」
真由美も新競技追加の問題、対外的なそれがしっかり見えているようで、裏で糸を引く者の存在を感じていた。だからって陰謀は全て弘一の手によるモノではない。弁護したいところだが、パラサイドールに弘一が関わっている可能性が高いので、実際弘一が糸を引いている可能性も否めない。それ故に、俺は弘一を弁護する弁論が構築できなかった。
言葉を迷っているところで、俺の携帯端末が震え出す。
「ん?達也からか。……すみません、ちょっと電話に出てきます」
俺はお茶会から席を外し、書斎に入ってから着信を受ける。
「もしもし、達也」
〈十六夜、今は構わないか?〉
「ああ、構わないけど。何かあったかい?」
ヴィジホンに繋いで俺の傍に誰も居ない事を表し、密談の準備が万端である事を伝えた。
〈俺の下に差出人不明のメールが届いた。内容は、情報のリーク。九校戦の種目変更は国防軍の圧力によるものである事、九島家がそれに乗じて秘密裏に開発した兵器の試験運用を企てている事、その舞台がとなるのがスティープルチェース・クロスカントリーである事。その3つが記されていた〉
今回の事件に関するかなり重要な情報を、達也は不審なメールで得たらしい。不審さがあるから鵜呑みにする事ができず、達也は俺へと相談に来たようだ。
〈十六夜も何か情報を得ていないか〉
「そうだな……」
情報の確度を上げるために俺の持つ情報と照らし合わせたいようだが、俺はどう応えるかで迷った。
真夜は今回の事件について、事前の解決を望んでいない。実際事件が起こってから解決する事で、犯人たちへ脅す材料にする予定だった。ならば、達也に全部教えてしまうのは良くない。
「……」
〈……十六夜?〉
「すまない、達也。俺は動くなと、母上から厳命されているんだ」
俺は、全て教えない事を選択した。
〈叔母上が?どういう事だ〉
「俺も不穏な空気を嗅ぎつけてはいたんだ。だから、母上を頼った。だけど、下されたのは不干渉の命令だ」
不干渉という命令の理由を問う達也に、俺はその命令が下された時の大雑把な顛末を語り、問いへは答えをぼかす。
〈……十六夜が動くと何か不都合がある?〉
「俺の注目を懸念しているようではあった。いや、俺が動く事で皆の注目が事件に集まる事を、か?」
〈今回の事件を公にしたくはない、という事か〉
達也は俺が伝えたい事をしっかり導き出してくれた。答え合わせをすると情報を隠しているのが露呈しそうなので、俺は目を伏せて否定も肯定もしない。
〈事情は分かった。俺の力でどうにかしてみよう〉
「力になれなくてすまない」
〈お前のせいではないさ、十六夜〉
達也は俺に優しく微笑みかけた。俺は罪悪感が必要以上に顔に出ていないか、心配するのだった。
◇◇◇
2096年7月4日
「俺の出場種目が決まらない、ですか?」
「そうだ」
放課後。急に生徒会から呼び出されてみれば、問題事ではなく、選手選考に関する事だった。
服部曰く、俺の魔法実技の成績を鑑み、どの競技種目でも好成績は間違いなしだそうだ。その万能さが
「ロアー・アンド・ガンナーもシールド・ダウンも十六夜は優勝を望める。選手選考が全てやり直しになったために、既存競技も改めて考えなければならない」
「ああ、俺一人が決まらないだけで全競技の選手が決まらないのか……」
俺という存在だけで選手選考が進まない、そんな珍事が起こっていた事を達也より明かされた。達也たちの苦い思いにはとても共感できる、俺も今苦い思いをしているのだから。
「そう、ですね……。希望できるのであれば、ロアー・アンド・ガンナーが良いでしょうか」
「前回がスピード・シューティングでしたから妥当でしょうが、どうしてロアー・アンド・ガンナーを?」
選考のひと押しをするために希望を述べてみれば、あずさが興味本位で追及してきた。
「仮想敵を視野に入れた判断です。まず、アイス・ピラーズ・ブレイクでは、俺は一条将輝に勝てません」
一条家の秘術『爆裂』。対象物内部を気化させて破裂させる強力な効果に反し、それを秘術としてきたためか、発動速度がとても早い。それ故、アイス・ピラーズ・ブレイクでは勝てない。魔法演算領域が増設されている俺なら、もしかしたら何か策があるかもしれないが、そんな賭けに出たくはない。
「次に、ロアー・アンド・ガンナーでは、俺は吉祥寺真紅郎に勝てます」
ロアー・アンド・ガンナーには、アイス・ピラーズ・ブレイクでの一条といった優勝必至な程の組み合わせがない。『カーディナル・ジョージ』という異名を持つ吉祥寺でも、さすがにそこまでの域には達していない。なら、俺には十全の勝機がある。
「なるほど。勝てない競技は避け、かつ第三高に2冠を許さない戦略か」
「そういう事だ」
一条と吉祥寺を野放しにすれば、第三高に2種目も優勝を渡してしまう可能性が高い。それは達也も推測していたようで、俺の意図を読み取ってくれた。まぁ、実際原作において、吉祥寺は確か優勝しないんだが。とりあえず、吉祥寺の上を取るとなると、俺以外の第一高選手では怪しい。だから俺が確実に上を取りに行くのだ。
「戦略については把握した。しかし、まだ勝手の分からない新競技で『カーディナル・ジョージ』を相手にするんだ。勝ちを確信するのは早いぞ、四葉。それとも、すでにお前は必勝の策が浮かんでいるのか?」
「必勝、と大言壮語するつもりはありませんが。策はあります」
油断を戒めにきた服部へ、俺は自信を持って返答した。俺は原作知識により、事前に策を練っていたのだ。それも真夜に喜んでもらえるように練り直した、圧勝を狙える策である。
「策、というとどのような?前回のスピード・シューティングでやったみたいな事ですか?」
「さすがにあんな頭の悪い策は二度とやりませんよ」
あずさはあの『エア・ブリット』ごり押しを想起したみたいだが、あれは実用的な魔法に疎かったがための苦肉の策だった。相手の妨害に対してただ『エア・ブリット』の威力を上げるなんて、改めてあの策を思い出すと頭の悪さが際立つ。しかし、手札が少なかった当時はあれが限界だったとも言える。
「あれが、頭が悪い……?」
「会長、十六夜にとってはそういう事なんです。そういう事にしておきましょう」
何か、首を傾げるあずさに深雪が諭しているが、俺は聞こえなかった事にする。
「あれで頭が悪いというと、今度はあれよりもとんでもない事をしでかすつもりか」
「新魔法を試してみようかなって。有効そうな使い方があるんだ」
達也にさえ「とんでもない」と評されているが、それはさておき。俺は『付喪神』を使おうとしていた。それを受け、達也が目を細め、他は目を見開く。
「有効な使い方……。あの魔法にそこまで応用が……」
達也は新魔法が『付喪神』である事を察しつつ、それを如何にして有効に使うのか、興味が煽られていた。魔法とすら言えるか不明な埒外の技術に、達也の興味は尽きないだろう。
「新魔法って、新しい魔法を作っちゃったんですか?」
目を見開いた者たちを代表するように、ほのかが質問を投げかけた。
「類を見ないって程ではないが、かなり珍しい魔法だろうね。偶然の産物だからそこまで誇れた物ではないけど」
「並ぶ者は皆無な力を持ちながら、魔法の探求を欠かしていないだなんて!泉美は感激です!」
俺が「偶然の産物」だと明言したにも関わらず、泉美は何かしらのフィルターを通して聞き取っていた。泉美の高評価はストップ高をも振り切る。少しは深雪にも泉美の羨望が行くように学校での接触は控えているのだが、ご近所なのだから結局俺の方が接触頻度は高いので仕方ない。
「すみませんが、魔法の詳細は秘密で。ですが、優勝の見込みは充分あるかと」
「そうか。なら、結果で示せ」
「お望みのままに」
服部の実に実力主義的な挑戦状を、俺は躊躇いなく受け取った。異論が他人から出る事もなく、俺はロアー・アンド・ガンナー選手内定となったのだった。
他人に任せるのが下手な十文字克人:「十師族は率先して社会に貢献し、十師族の務めとして最前線に身を置かねばならない」という強い責任感があった弊害。社会貢献という点で、誰よりも部活連会頭として仕事を果たし、富める者の義務的精神で、一般市民である学生に仕事を回す事を逡巡していた。彼は、他人を救いはするが、他人を導けはしなかったのである。今回問題が浮上した事で、本人はそれを痛感した事だろう。
功労賞:後日、真由美から服部へ功労賞として贈答品が授与された、克人からの謝罪文と共に。
閲覧、感謝します。