2019.10.14

そのサウンドを耳にした時に去来する様々な感情や風景 ― 焦燥、孤独、刹那、一筋の光…… 聴くものの感情を動かさずにはいられない唯一無二のビートを紡ぎ出す、今最も注目すべきプロデューサーのひとり MURVSAKI。KOHHやBAD HOP、Tohjiなど世間を賑わす話題のアーティストからも絶大な信頼を得るプロデュースワークはどのように生み出されるのか、MURVSAKIの制作環境、そしてバックグラウンドに迫る。
IYOW : A series of interviews with featured beat makers / producers / composers
MURVSAKI
1989年生まれ、大阪府出身。ビートメイカー/プロデューサー。
KOHHやBAD HOP、Tohjiなどの様々な作品を手掛けるベッドルームプロデューサー。
——キャリアスタートのきっかけ
2008年頃、一緒に住んでた友達に教えてもらったFL STUDIOの無料体験版をダウンロードし、遊びで作り出したのが多分きっかけ。
——ターニングポイント
2013年頃KOHH君が大阪に来たときに僕のビート集を妹がKOHH君に渡してくれて、その後プロデューサーの318さんから連絡をいただき、「FUCK SWAG」や「嘘つき」を制作したのが今のキャリアに繋がるきっかけになったかなと思います。妹good job!
——キャリア当初の制作環境
床に直置きデスクトップPC(カビだらけ)、無料のFL STUDIO 7、そして3,000円くらいのパソコン用サブウーファー付き小型スピーカー(笑)。
作っていると上の部屋から何度も怖い苦情が来たり。いま思うと最低な環境だけど、すごく楽しかった。
——現在の制作環境
現在も相変わらずベッドルームプロデューサーなんですけど、昔よりは少しグレードアップしました(笑)。

——メインの機材
PC : Windows 10 ラップトップ、core i7-8750H、メモリ16GB
DAW : FL STUDIO 20 signature edition
インターフェイス : Babyface Pro
MIDIコントローラー : ALESIS V49
——モニター環境
スピーカー : KRK VXT6
ヘッドフォン : ATH-M50x、CRUSHER 360、あとAirPods。
——使用音源
wavサンプルを加工してシンセみたいに弾くっていう変な作り方してます。
あとSerumで作ったシンセベースでWavyに展開させるのも好きです。
VSTプラグインなら気に入ってるのはTone2のGladiator3。ちょっとチープでギラギラしたサウンドがお気に入り。ウワモノに使ったりします。
——使用プラグイン
RC-20というビンテージノリのモジュレーションエフェクター。使い方簡単。エレピやギターなどのピッチをゆっくり揺らしたり、埃っぽくしたり。結構気に入ってます。
——ビートメイクのプロセス
基本のコードやウワモノを数パターン作って、プレイリストという画面で並べて再生してみて不必要に感じた音は削ったり加工して目立たなくしたり、そしてベースラインとドラムパターンを作成、あとは面白いFXを入れたり。全体を微調整したらMIXして完成。
あ、あとボーカル録り終えた後に大幅アレンジしたりもしますね。
——ビートメイクポリシー
音楽的な空気感や立体感は意識してます。
いつも大体イメージしてるのは荒廃した近未来。

——最も影響を受けたプロデューサー/ビートメイカー
illangelo
The Weekndのプロデューサーとして知られる人なんですけど、全てが素晴らしいです。初めて聴いた時からずっと大好きで、今でも影響を受けてる。
——影響を受けた楽曲
Kanye West – Wolves
電子楽器で作られた神話のような音楽。自分の中でビートの概念を覆された曲。
Drake – Marvin’s Room
懐かしいようなメロディ。不思議なポルタメント、急なミュートなど本当に心地良い。耳コピで練習した曲。
Travis Scott – Quintana
チープなTRAPに爆弾を投げたような凄まじいサウンド。邪悪な教団のような展開も好き。爆弾投げを覚えた曲。
The Weeknd – Crew Love (Original Version)
Rhodesの音色と、オルタナティブなR&Bにハマったきっかけ。YouTubeにしかないけど、Drakeのバージョンよりこっちのほうが絶対に良い。
Hudson Mohawke – Chimes
初めて聴いたとき、シンプルにこれは凄いと思った。いつ聴いても必ずモチベーションが上がる曲。
Lido – Tell Me How To Feel
アルバムの一番最後の曲で、これは全部出してきたなと感じて鳥肌が立った。感情的な展開にすごく影響を受けた曲。
Chouchou – Absolute Zero
自分がいつも想像してる優しいほうの世界観に一番近い、日本の曲。数年前にゴスロリのBarでかかっていてマスターに教えてもらった。
——My favorite works
KOHH – Mind Trippin’ II
自分が想像していた、荒廃した近未来感を初めて出すことができた曲。暴れたくなるような寂寥感。僕にとっては凄くハードな曲で、何度聴いても飽きない。
Tohji – HI-CHEW
これを制作していたとき、自分の私生活が荒れていてTohji君の家にしばらく滞在してたんですけど、もう色んなこと全部忘れて音楽だけに集中しようと殴り書きのように作ったビート。ビート自体はネットカフェで15分ほどで仕上げていて、本当にシンプルで難しいTipsは何もない。ただ冷たさと雷のような勢いだけを意識してました。そして僕の当時の状況を代弁してくれているかのような最高に気持ち良いリリック。これを全く書かずに勢いで歌っていて感動しました(笑)。
BAD HOP – YAGI
なんか好き(笑)。
——Message
実は自分名義のEPを制作中です。
MURVSAKI
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XLVSTIK MATERIAL PACK Vol. 1(サウンドパック)