あみ焼きレストラン ラリーズ庚午店 (広島市西区庚午北)

画像 ラリーズの経営者であった豊島稔さんの切り絵作品展をブログの最後で行っていますのでご覧下さい。
最新の追記記事・・・2013/3/24
春うらら 


おかげさまで、カーサ商業建築研究所はこの1月15日に創立30周年を迎えることができました。
これもひとえに皆々様のご支援の賜物と深く感謝申し上げます。
 小さなアトリエを設立して以来、環境や建築設計の仕事を自分達の生き甲斐としながら『人の心』を設計尺度に、豊かに美しく生きていくための環境を追い求め、人々と共に成長しうる空間づくりに努力してまいりました。

 この30年間を振り返りながら仕事を整理してみますと一つひとつの懐かしい思い出が蘇えります。
多くの素晴らしい出会いに恵まれ、仕事の場を与えて頂いたことに深く感謝申し上げます。
私達の理想の未来がはっきりと見えない時代となり、30年の節目としてクライアントとの共同作業で行った店づくりをシリーズでご紹介させて頂き、『商業建築とは何なのか・生きるとは何か』もう一度原点に立ち返り、考察をさせて頂きたいと思います。

 私達が携わった作品も30年間、今も生きつづけ成長している店舗もありますが30周年を前にして残念ながら閉店し、解体をしてしまった飲食店があります。
今はなくても皆様の心に昔懐かしい店として心に残っている「あみ焼きレストラン ラリーズ庚午店」の店づくりについてご紹介を致します。


あみ焼きレストラン ラリーズ庚午店・・・ 

 30年前と言えば焼肉の店内は煙がもうもうと女性や子ども達が気軽に行けない、不清潔なホルモン屋しかなかった時代です。店主であるクライアントの最初の要望は、焼肉専門店として家族が楽しく食事ができ、温かく包み込むようなカジュアルなレストランを造りたいと。
こちらもまだ若く、商いについては全くの素人同然、戸惑いながら店主の経営理念を生かした店づくりはどの様にすればよいのかと店舗のコンセプトをまとめ、店主と一緒に運営やサービス、デザインなど、こと細かく夢を形にする共同作業がはじまりました。
 当時は無煙ロースターの無い時代です。焼肉店と言えばあのもうもうとした煙をどうするか、排気や冷暖房にも大変苦労をしました。
今までに無い焼肉店として清潔感や家族がいつまでも楽しめる店、そのために店内が汚れない、時間と共に風合いが増すインテリア素材を選び、具体的な空気感や物語性をデザイン化して行きました。
そのようにしてやっと庚午にラリーズ最初の大型店、「あみ焼きレストラン ラリーズ庚午店」が完成したわけです。

 完成すると3ヵ月間は改善の手直しが続きました。そんな時、個人的にスペインでの仕事が舞い込み、設計事務所を設立して独立をしました。ラリーズに後ろがみを引かれる思いで一年間日本を離れてしまいました。
帰国し店を再び訪れてみるとたくさんのお客さんに驚きました。店主もよく帰ってくれたと大歓迎で気軽に受け入れて頂きました。
店舗の問題点や今後の対策、そして新たな展開へとデザイナーとして細かいインテリアや運営上の問題点なども色々と勉強をさせて頂きました。
時には店主と一緒に異業種の他店も勉強しょうと四国や福岡、東京への視察など、いつも美味しく肉を食べて頂きたいと肉の焼き方の研究も勉強させて頂きました。
肉を焼く網や洗浄器などの考案や排気方法の改善、拘りの店主にはあらゆる工夫が店内の小物まで施され、いつのまにか店の奥には小さな工作工房が出来上がっていました。

 お客様に喜んで頂けることとは何か、家族で楽しく食事をして頂くことはどの様にすれば良いか、飲食店の原点に立ち返り、新たな焼肉店としての模索が続いたのです。
そのような店主の姿を見ていると私にとっても店づくりの姿勢や考え方もこの時代に培われ、店主は私にとって店づくりの教えの親でもあるわけです。

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      ラリーズ本通店(中の棚商店街)             本通店の店内(銅板の排気フードが印象的)

 ラリーズ庚午店の評判を聞き、毎日店舗の前に行列ができました。冬の寒い時期でも一時間待ちはあたりまえになってしまいました。
お客様に申し訳ないと玄関やアプローチに風除けとしてビニールで覆い、ストーブが持ち込まれ、お茶のサービスや子どもに配るおもちゃ、トランポリンやシーソなどの遊び場もつくって行きました。
店主はいつも先頭に立ち、吹きさらしの駐車場で車の整理や案内、すべてご来店頂くお客様への感謝の心遣いでした。店内ではたくさんの家族が子ども達と一緒に焼肉を食べている。そんな子ども達の笑顔を見るとこちらも嬉しくなります。こんな飲食店を設計していて良かったと店主と共に幸せ感を味わっていました。
焼肉やサービスが評判を呼び、売上も全国で稀な飲食店として当時は庚午店の1店舗で、年商三億円近くを売り上げ、注目をされていました。
お客様に育てられ、庚午店が親になってラリーズ緑店、ラリーズ本通店、ララビス白島など、新しい子ども達が生まれ、育って行きました。

 月日が経つと当時のお客様であった子ども達も大人となり、今度は子ども達を連れてご来店、その当時の子ども心に感じた懐かしい様子を子ども達に語られている。そんな様子をみていると、とっても幸せで店主は焼肉店をこれだれ長く続けられてきたことに感謝し、焼肉店をやっていて良かったとつくづく語られておられました。しかし、29年目に突然に閉店を余儀なくし、お客様に申し訳けないと戸惑いや寂しさ、悔しさのなかで悩み苦しまれていました。

 そんな時、気分を晴らすために家具工場の見学を誘ってみました。工場の経営者でもある職人さんが楽しそうに子どものおもちゃを造って居られる様子に感動し、・・・これだ・・・子どもが喜んでくれる。
飲食店で味わったそんな喜びの生き方をもう一度したい。工場のご好意に支えられ早速、家具工場に弟子入りをされました。
新たな生き甲斐として子どもが喜んでくれる「木のおもちゃ」をつくりだされたのです。本来手先の器用な店主はおもちゃ造りに直ぐに慣れ、次々と木のおもちゃが出来上がって行きます。そしておもちゃのデザインは私の担当となり、一緒の共同作業がはじまっております。

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 店主とはラリーズ庚午店のご縁で32年の付き合いとなりました。店主も75歳になられました。
楽しみながら生き生きと眼を輝かせながらおもちゃを造られています。そんな姿をみると、あの時の焼肉の店主と同じような幸せ感をかんじます。
色々な苦難を乗り越え、謙虚なありのままの姿を拝見するとこちらも頭が下がる思いがします。
私にとっても店づくりの教えの親から今度は人生の教えの親となったようです。


追記(2011/02/11)・・・ 

画像 先日、ラリーズの社長であった豊島さんの自宅に遊びに行ってきました。素適な笑顔で迎えて頂きました。
毎日15,000歩も歩いて居られます。病気もなく彫刻の彫りもメガネをかける必要もありません。
これも全て親からの贈り物だと感謝されていました。
部屋では水彩画を描かれています。毎日が充実した日々を送られています。
版画は昔親交があった芹沢桂介先生の作品を手本しながら制作をされています。
今度一緒にスケッチにでも出かけることにしました。

その様子の写真を追加して貼り付けました。

追記(2011/07/9)・・・ 

豊島さんの近況をお伝えします。
先日、梅雨もおわり、お元気で作品づくりを続けておられるかと自宅訪問です。
一日、15,000歩のウオーキングも暑くなり少しペースを落としながら筋肉隆々、元気印です。
素敵な作品が沢山できています。芹沢桂介先生の作品を手本に順調な仕上がりです。
刷ることは自分であみだしたオリジナル苦心の作品が輝いて見えます。

作品をご覧下さい。
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芸術作家の領域に迫りつつ・・・ブログでの豊島稔作品展です。
コメントを頂ければ作家に伝えます。

作品をご覧頂き、ありがとうございました。


追記(2012/5/20)・・・

豊島さんの近況便りです。

画像 連休も終り、若葉の緑が美しく初夏のさわやかさを感じる季節です。
時々散策されている京橋川の河川敷、今日は一緒に散歩に出かけませんかとお誘いしてみました。
新緑と水の美しさ、河川敷にある雁木で江戸の文化にも触れながらのんびりと散策です。京橋のたもとにあるオープンカフエーでひと休憩、その時の写真を掲載します。
優しい笑顔とさわやかな空気に大満足、広島は美しい町だとつくづく感動しました。


追記(2012/7/10)・・・

電気代の掛かる風力発電機

画像 先週電話を掛けてみると風邪だから会えないと?・・・一週間後、今日改めて電話を掛け、風邪如何ですかと自宅訪問・・・
何??? これは! 風力発電機ができていた。話には聞いていたが・・・早速、動かしてみょうと組み立てて、風を送ってみる(扇風機で)中々動かない・・弱から強へ そして手で労わるようにそっと羽に触れてみると、ゆっくりと回転がはじまった。
わぁ~~凄い!動く・動く!ニコニコ笑顔だ。回転は弱いけれど製作者に申し訳ないと回転しているようだ。いやいや夢と努力が回転しているのだ! 今度は改良された2台目の縦軸風力発電機の登場である。
この羽は浮力の力で回転する最新型の発電機である。実はこの羽をバルサで作ったときに削った粉が顔に付き、アレルギーが発生して顔が腫れたあがったのだと、風邪ではなかったと告白された。やっと病院に通って直ったのだと・・笑顔が・・・。そうか、だからバルサから透明の飛行機のような軽い羽が出来ていたのだ。



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            プロペラ型の風力発電機              縦軸型の最新鋭型の風力発電機

この風力発電機まだまだ発電はしそうに無いが扇風機と人の力を借りて回る、中々おつな発電機である。
自然の力で回転するには台風の時しかないようだ。LEDの球を付けて電気を貯める蓄電器も必要だと話が発展する。・・・いやいや夢が広がる!
研究の余地はあるがこの世の中、全てが省エネ時代、家庭用に必要とされるモノをつくって喜んでもらうのだと・・その意気込みが凄い!・・・いやいや夢が凄い! そばで奥さんが微笑んで居られる。・・・(決して呆れはてて居られるのではないことを付け加えておきます。)


春うらら・・・追記(2013/3/23)
 久し振りにカルマンギヤーに乗りながらドライブは如何と携帯電話をしてみるとご夫婦で散歩中とのこと、じゃあ邪魔でしょうから今度にというと・・・結局、小さな車に乗って三人でドライブすることとなりました。
カルマンギャーも今年で46歳、ゆっくりとのんびりとドライブ
まだ桜はつぼみ、平和公園や広島城にと・・

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広島城での桜・・・奥さんは今年から花粉症になったと目にはゴーグル、マスクは外していただきました。
奥さんの朗らかさに桜も負けそうです。
微笑ましいご夫婦ですね


豊島さんの近況便りが好評に付き、今後も続けて行きます。
またご訪問頂ければ幸いです。

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この記事へのコメント

心から残念です
2010年12月11日 12:08
メールの管理者からコメントを代筆させて頂きます。
・・・コメントに連絡先のアドレスが掲載されていましたのでプライバシ上ご迷惑を掛けてはと思い削除しましたが素晴らしい文面なので改めて文面のみを掲載させて頂きます。コメント日は・・2010/03/06 00:25

私は子ども時代からラリーズに良く通い、短大時代は2年間ずっとアルバイトをしておりました。
広島帰省時にラリーズの敷地が更地になっていて、本当にショックでした。
社長の写真が出ていたので、お元気そうで本当に嬉しかったです。
今は結婚をして香港に住んでおりますが、10年以上経った今もまだラリーズのメンバーとは連絡を取り合うほど本当に仲良しです。(その内で3組のカップルが結婚しました)
社長をはじめ、部長や店長・副店長、肉切り場、洗い場、キッチン、ホール、みんな仲良しの本当に良いお店で、いまだ忘れない思い出です。
こちらの事務所でデザイナーさんが一生懸命考えてくださったお店は、本当に良い店でした。社長とお話をされることがありましたら、どうぞよろしくお伝えくださいませ。
池田順子(旧姓/田中)
94年から96年までホールでアルバイトをしておりました。当時のメンバーは森山、城戸、吉田、宮脇、小谷、大西、登能、安山などです。

・・・こころ温まる素敵なコメントありがとうございました。
この文面を社長ご夫婦に伝えると、とっても喜んでおられました。
社長は現在、チカチコの子どものキッチン製作を終え、自宅で昔からの念願であった木彫版画をされています。後日、素敵な作品をブログでもご紹介します。
モー子
2013年04月04日 00:03
ラリーズの写真をみて、ものすごく懐かしくてコメントさせていただきます。

自宅の近くにあったラリーズは私達家族にとって身近な存在であり、特別な場所でした。
何かお祝い事や誕生日にはいつもラリーズに行き、私にとっては数え切れないぐらいの思い出がいっぱいあります。
入口前にあったトランポリンや輪投げをして店内に入り、大好きなお子様のを注文するとおもちゃがもらえるのが嬉しくて♪
誕生日には店員さんがポラロイドカメラで写真を撮ってくださいました。
母には内緒で父に連れていってもらった時は初めて父と同じものを注文して、凄く大人になった気持ちになったり…(笑)

ラリーズのメニューで子供の頃からずっと私のナンバーワンは
コーンスープでした。
コーンスープと美味しいお肉と平たいお皿に乗せられてるご飯が特別な感じがして、たまらなく嬉しかったです♪

今でも店内の様子を鮮明に覚えています。

本当にたくさんの思い出をありがとうございました
ひげじい
2013年04月04日 19:34
モー子 さん ご訪問ありがとうございました。

小さいころからの思い出の店が無くなることは
 寂しいことですが・・
コメントをとっても嬉しく読まさして頂き、
 こちらも感動し少し胸が温かくなりました。
デザイナーとして改めて店舗の大切さを痛感いたしました。

豊島さんにもモー子さんのご訪問に感激されることでしょう。
 コメントをお渡ししておきます。

ご訪問ありがとうございました。
isizuchi777
2013年10月01日 08:22
 長らく いかがお過しかと情報を探していましたが 今朝偶然に この記事を見つけました                                懐かしいお顔を拝見し思いが溢れ 往事の様々なことが浮び 改めてふかくお礼を申上げます                              いついつまでもお元気でお過しになられますよう 新居浜より祈念しております
ひげじい
2013年11月10日 16:13
isizchi777さん ご訪問ありがとうございます。
返事が大変遅くなり申し訳ございません。

豊島さんにはコメント文をお渡しいたしました。
 大変喜んで居られ、新居浜にはご親戚もあるので
どの方かと思いを馳せて居られました。

最近は豊島さんとよくお会いします。
昨日は11月とはいえ、早い忘年会を致しました。
 先週は熊野町にある筆の里美術館で棟方志功の展示会にいきました。
親交のあった棟方志功を手本にして木彫されていますので
興味津々、作品堪能してきました。
帰りにはちょっと山に入り、紅葉や
 あけびを採ったりと秋を愉しんでまいりました。

さき
2021年04月24日 01:28
ラリーズを検索してこちらにたどり着きました。現在引っ越して愛知県におりますが、引っ越し先から広島へ遊びにきてみたらお店がなくなっていて家族でショックを受けていました。今でも懐かしい思い出で、トランポリンで遊んだり、子供のお土産おもちゃなのに、大人の父親がおもちゃを選んだり、入り口の人形が時々変えられるのを覗いて楽しんだり。何より店長さんはじめとして従業員の方々の対応が素晴らしく、ブログを拝見して経営者の方の心配りが表れていたんだと納得しました。素敵な思い出をありがとうございますとお礼が言えて良かった。お元気でおすごしされますように。
ひげじい
2021年04月26日 17:21
>さきさん
>
>ラリーズを検索してこちらにたどり着きました。現在引っ越して愛知県におりますが、引っ越し先から広島へ遊びにきてみたらお店がなくなっていて家族でショックを受けていました。今でも懐かしい思い出で、トランポリンで遊んだり、子供のお土産おもちゃなのに、大人の父親がおもちゃを選んだり、入り口の人形が時々変えられるのを覗いて楽しんだり。何より店長さんはじめとして従業員の方々の対応が素晴らしく、ブログを拝見して経営者の方の心配りが表れていたんだと納得しました。素敵な思い出をありがとうございますとお礼が言えて良かった。お元気でおすごしされますように。
>

さき様 
ご訪問頂きありがとうございます。
豊島さんと昔の懐かしいプロジェクトやラリーズの店づくりについてよく話をすることがあります。しかし、閉店した店にお客様からの懐かしい思い出の便り、こちらもうれしく感動をいたしました。ご家族様の素敵な思い出につながる店をやっていて良かったと、こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいです。店主の豊島さんも86歳を迎えられ、奥様と仲睦まじく楽しく暮らしておられます。
ひげじい
2021年04月26日 17:25


>さき様 
>ご訪問頂きありがとうございます。
>豊島さんと昔の懐かしいプロジェクトやラリーズの店づくりについてよく話をすることがあります。しかし、閉店した店にお客様からの懐かしい思い出の便り、こちらもうれしく感動をいたしました。ご家族様の素敵な思い出につながる店をやっていて良かったと、こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいです。店主の豊島さんも86歳を迎えられ、奥様と仲睦まじく楽しく暮らしておられます。
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