「ひとり情シス」が辛い…退職防止のカギはツール活用
はじめに
スタートアップ企業や中小企業を中心に、情シス業務をひとりの従業員が担当する「ひとり情シス」が増加しつつあります。情シスとは情報システム部門をさす言葉で、企業によってシステム管理部やIT部門、デジタル推進部などとさまざまな組織名称がありますが、業務内容に大きな違いはありません。
近年はIT企業に限らず多くの業種でICT(情報通信技術)が活用されているため、情シスは欠かせない部門です。企業にとって重要な部門をたったひとりの従業員に任せることは、多くのリスクにつながります。
本記事ではひとり情シスによって起こりうる問題と、解決のカギとしてツール活用があげられることを紹介します。
「ひとり情シス」とは?
そもそも、ひとり情シスとはどのような状況をさしているのでしょうか。まずは情シスの主な業務内容とともに、ひとり情シスの特徴について解説します。
情シスの業務内容
情シスの主な業務内容は、社内システムの開発や構築、運用、保守などです。従業員が使用する端末の管理なども情シスが行います。一昔前に比べると近年の情シスが担う業務は多様化かつ複雑化しており、企業によっては顧客向けのシステム構築や運用などを担う場合も。
また、世界的にDX推進が叫ばれている現在は、情シスの業務は企業の経営を支える根幹に関わることも多く、より欠かせないものとなりました。DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、単純なICTの導入に留まらず、デジタルとデータの活用によって企業文化や業務、製品・サービスなどさまざまな変革を起こして企業の競争優位性を確立することです。
日本では2018年に経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0」を機に、各企業でDX推進の動きが見られ始めました。
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ひとり情シスとは
ひとり情シスとはその名のとおり、ひとりの従業員が情シス業務を担うことです。従業員数の少ないスタートアップ企業や中小企業に多く見られますが、従業員数100人を超えるなかでひとり情シス問題を抱える企業もあります。
また、情シス部門とDX推進部門を分けている企業の場合は、ひとりの従業員が両部門の責任者を任される場合も少なくありません。
ひとり情シスが生まれる原因
ひとり情シス自体が必ずしも問題であるわけではなく、たとえば従業員数自体がごく少数の場合は担当する業務量も少ないため大きな負担とはなりません。問題なのは、従業員数が50名あるいは100名を超える規模の企業であってもひとり情シスが生まれていることです。
なぜ企業規模が大きくなってもひとり情シスが生まれるのか、主な理由は次の4つが考えられます。
情シス担当者が定着しない
1つ目の理由として情シス担当者の早期離職があげられます。企業は数名の担当者を配置したいと考えていても、人材が定着せず結果的にひとり情シスとなるパターンです。
情シス担当者が定着しない大きな理由は、現状のひとり情シスを脱却できていないことにあります。ひとり情シスは抱える業務量が多く激務となるため、離職が起こりやすい状況です。そのなかで現担当者の離職が決まってから新たに採用しても、結果的にひとりにかかる業務量は変わりません。
「激務→離職→採用→激務→離職」と同じ状況を繰り返す、言わばひとり情シスの悪循環が続いている状態です。
専門知識を要する人材を採用できない
2つ目の理由は、情シス業務を問題なくこなせる専門知識を有する人材が採用できない点です。従業員数が少ない企業の場合、情シス部門を設けず従業員の中でICTに詳しい人物が通常業務と兼任しているケースが見られます。
ただし情シス業務を専門的に行ってきた人材に比べると知識も経験も不足しているため、工数が多くかかったり適切な運用ができていなかったりと問題が生じやすくなります。
問題が起きてから情シスを専門的に担ってきた人材を採用しようと思っても、専門スキルをもった人材はそう多くありません。とくに規模の小さい企業ではなかなか応募がなかったり、入社までいたらなかったりする場合もあるでしょう。結果的に既存の情シス担当者の業務負荷が長期にわたって増えることになるのです。
情シス業務に対する経営層の理解不足
第3の理由は、経営層やマネジメント層の情シス業務に対する理解不足です。情シス業務はその性質上、成果が可視化されにくいため、IT知識に明るくない第三者からは激務と無縁の部門だと誤解されることがあります。
そのため経営層や他部門から工数を理解しないまま新たな業務を依頼されることも多く、情シス担当者は限られたスケジュールのなか、テスト不足の状態で不完全なシステムを運用せざるを得ない場合も。
不完全なシステムの運用でトラブルが生じても、利用する従業員側に対処できる人材がいなければ問題が深刻になるまで放置されやすく、セキュリティや機密情報の流出に発展しかねません。
このようなトラブルが生じても、経営層が情シス業務に対して十分に理解できていない企業では工数問題や人材不足に目が向けられず、担当者の実力不足や注意不足で済まされてしまい、新たな人材の確保など環境改善に至らないことが大半です。
情シスを含むIT業界の従事者不足
情シスに限らず、日本の一般的なイメージとしてITに関わる仕事は激務だと認識されている傾向にあります。そのため企業側が採用計画を立てたとしても、募集に対して応募が集まりにくい状態です。
また、IT業界は日々めざましい進化を遂げていることから、長時間勉強して身につけた知識が、現場では既に古いものとなっているパターンも少なくありません。常に新しい情報や知識を獲得し続けなくてはならない一方で、入社すれば長時間労働やひとり情シスなど過酷な職場環境が待ち構えているというイメージは、IT業界への従事者そのものを不足させる要因と考えられます。
ひとり情シスによって起きる問題とは?
ひとり情シスは業務上の問題に加えて、人材確保を困難にするなど、様々な問題を生じさせます。現場だけではなく、企業の信頼性や業績に影響を及ぼす可能性もあるため、早急な対処が必要です。
ここでは、ひとり情シスによって生じる6つの問題について解説します。
情シス担当者の業務負荷の増大
情シスの仕事は社内システムの構築・運用をはじめ多岐に渡りますが、担当者が少なければ少ないほど、ひとりに割り振られる業務量は多くなります。
さらにひとり情シスの場合はシステムの開発や構築から運用、メンテナンスまで、すべての業務をひとりで担当しなくてはなりません。企業規模が大きくなるにつれ社内システムの種類も増え、担当者の業務負荷はより増大するでしょう。
また、通常業務に加えてトラブル発生時の対処も行うため突発的な業務も発生しやすく、業務の圧迫につながります。
情シス担当者の孤独感
業務量以外にもコミュニケーション不足による孤独感が離職理由になる場合も。
ひとり情シスは抱える業務について相談できる相手がいないため、孤独を感じやすくなります。とくにトラブルが発生した際に、すべて自分で対処するしかない状況は企業としても重く受け止めるべきでしょう。
セキュリティ対策不足
成果の可視化が困難な情シスは、IT関連の知識に乏しい経営層から人件費の削減対象とされることが少なくありません。とくに担当者が優秀なシステム管理を行っていた企業ほど深刻なシステムトラブルとは無縁となりやすいため、情シスの業務は軽視されがちです。
人員が削減されるとセキュリティ対策に十分な時間を割く余裕がなくなります。結果的に情報漏えいや不正アクセスなど重大なセキュリティ事故につながるリスクが高くなってしまうのです。
有事の際の対応遅延
ひとり情シスとなると、通常業務に加えてトラブル対処や従業員のパソコンの設定・管理などもすべて担当者ひとりで対応しなくてはなりません。このような状況のなかで万が一トラブルが発生した際は、膨大な通常業務と並行して対処を行わなければなりません。
実際に手を動かせるのが自分しかいないため、どうしても有事への対処には時間がかかり、迅速な解決は難しいでしょう。
業務の属人化
システムの多くは、24時間365日運用されています。情シス担当者が複数名いる企業では業務を振り分けたり休日や夜間対応を行う担当者を配置したりできますが、ひとり情シスの場合ほかの従業員を頼ることが困難です。
そのため業務が属人化しやすく、担当者が退職したり病気などで急遽欠勤したりした場合は、トラブルが生じても誰も対処することができません。退職した場合に新たな人材を採用したとしても、担当者と引継ぎができていなければシステムの問題点や対処方法が分からず、ブラックボックス化してしまいます。
退職率の増加
前述した5つの要因が重なると、優秀な担当者であってもスムーズに業務を進めることは困難となり、退職を検討せざるを得なくなります。結果的に情シス担当者が定着せず離職率が高くなり、状況が改善されなければ新たに人材を採用しても負の連鎖は続くでしょう。
また、退職率が増加すれば度々求人を出すこととなり、企業イメージを低下させるリスクもあります。
退職を防ぐために。ひとり情シスへの対応
人件費の確保が難しいなどの理由でひとり情シスが続く企業も少なくないでしょう。しかし長期的なひとり情シスは前述のように退職率の増加やセキュリティの問題など多くのトラブルを引き起こす要因となりやすいため、早急な対処が必要です。
ここでは担当者の増員が困難な場合も取り入れやすい、ひとり情シスへの対応方法を紹介します。
①アウトソーシング
社内に情シス業務を任せられる人材が少ないときは、アウトソーシングの活用を検討するのも一つの手です。情シス専門のアウトソーシング業者なら、専門的知識を有した人材に多くの業務を任せることができます。
自社の情シス担当者が不得意な分野を任せたり、専門性に富んだアドバイスを受けたりと、既存担当者の大幅な負担軽減につながります。
②業務負荷を軽減させるツールの活用
即座に増員が困難な場合も、ツールの活用によって情シス担当者の業務負荷を軽減できます。今夏は下記のツールについてご紹介します。
Unifinity
Unifinityは、現場で使用するアプリをノーコードで作成できるアプリです。アプリ開発の専門知識を要せず誰でも手軽にアプリ作成できるため、社内の各部門で業務内容に応じたシステムを情シス担当者に頼ることなく作成・運用できるメリットがあります。
バーコード読み取りやカメラ機能など多くの機能を追加できるうえ、自社システムやほかのツールとの連携も可能です。開発したアプリは全OSで共有・利用できます。
ツール詳細:Unifinity
CLOMO
CLOMOはスマホやタブレット(iOS・Android)用のリモート管理機能です。機能制限や設定の適用、紛失・盗難対策、利用状況の監視などさまざまな管理機能を端末に提供しており、情シス担当者が従業員の端末配備や管理に割く工数を軽減できます。
紛失や不正持ち出しなど万が一の事態が生じた場合は遠隔管理で端末内のデータを消去できるため、情報漏えい対策としても有効です。
ツール詳細:CLOMO
ひとり情シス問題の解決はコネクシオまでご相談ください
ひとり情シスによる課題は多岐にわたります。解決には新規採用やアウトソーシングなどの選択肢もありますが、即座に人員増加が困難な場合はツール活用も検討しましょう。
コネクシオは、ツールの選定や導入からスムーズな運用に至るまで、ひとり情シスの課題解決に向けた環境整備をトータルサポートします。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。