100年の時を超えて蘇った都心の酒蔵『東京港醸造』

100年の時を超えて蘇った都心の酒蔵『東京港醸造』

更新日:2018/01/20 01:00

さとちんのプロフィール写真 さとちん ご当地グルメライター、海鮮丼マニア、チェコ親善アンバサダー
江戸時代末期、東京都港区芝に西郷隆盛や勝海舟といった幕末の志士が通った造り酒屋がありました。様々な事情から明治になって廃業してしまいましたが、100年の時を超えて酒造りを再開。都会のビルの間にある小さな酒蔵で醸されるお酒は、毎回作られるたびに変化し、進化する東京そのものです。

東京に来たら是非訪ねてほしい、大都会の小さな酒蔵を紹介します。

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江戸開城の舞台となった東京都港区芝

江戸開城の舞台となった東京都港区芝

写真:さとちん

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慶応4年(1868年)3月、薩摩藩蔵屋敷で行われた西郷隆盛と勝海舟の交渉により武力攻撃が回避され、1万人に及ぶ江戸の住民を戦火から救うことになった一連の会見は「江戸開城」と呼ばれ現代も広く語り継がれています。

かつての薩摩屋敷跡には三菱自動車工業本社が入った第一田町ビルが建ち、その前には「江戸開城」と書かれた碑があります。

裏に記されてるのは「慶応四年三月十四日 此地薩摩邸に於いて 西郷 勝両雄會見し 江戸城開城の圓満解決を図り 百萬の民を戦火より救ひたるは其の功誠に大なり 平和を愛する吾町民深く感銘し 以て之を奉賛す」と、日本の未来のために奔走した幕末の志士たちへの感謝と称賛の言葉。

江戸から東京へ。大きく進化する最初の一歩となった地です。

西郷隆盛や勝海舟が通った「若松屋」が「東京港醸造」として再スタート

西郷隆盛や勝海舟が通った「若松屋」が「東京港醸造」として再スタート

写真:さとちん

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1812年(文化9年)東京都港区芝に造り酒屋「若松屋」が創業。当時、芝には薩摩藩の上屋敷や蔵屋敷が立ち並び、薩摩藩の出入り商人として認められたことから、芋焼酎や濁り酒を製造して藩屋敷に納めていました。当時の若松屋には奥座敷があり、西郷隆盛や勝海舟、山岡鉄舟、高橋泥舟、坂本龍馬など、幕末の蒼々たる面々が密談に利用していたと言われています。

そんな「若松屋」ですが、日清日露戦争の影響や後継者問題から1909年(明治43年)に酒造りを廃業。その後は雑貨業を営んでいましたが、歴史を紡いでいきたいと、7代目の齊藤 俊一さんが2011年(平成23年)に「東京港醸造」と名前を変えて酒造りを再開しました。

西郷隆盛や勝海舟が通った「若松屋」が「東京港醸造」として再スタート

写真:さとちん

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写真は西郷隆盛が酒代の代わりにと「若松屋」に置いていった書のレプリカ。「東京港醸造」の店内に飾られています。

西郷隆盛や勝海舟、山岡鉄舟らも飲み代の代わりとして多くの書を残していき、現在も大切に保管されています。

実は江戸開城の会見が行われたのは「若松屋」の奥座敷だったという説もあるんですよ。

受け継がれた想い。東京の地酒が復活

受け継がれた想い。東京の地酒が復活

写真:さとちん

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「東京港醸造」では鉄筋コンクリート4階建てのビルで、東京の水道水を使って酒造りを行っています。日本酒というと蔵に天然水のイメージですが、鉄筋コンクリートのビルは気密性が高く、酒造りに適しているんです。

水道水も昭和40年~50年の東京の水はカルキ臭が強く、まずい水の代名詞のようになっていましたが、水道局の努力によって今は劇的においしくなっています。高度浄水処理をされた水は、京都伏見の水に成分が似ているとのこと。

受け継がれた想い。東京の地酒が復活

写真:さとちん

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酒造りを再開するにあたって最初に苦労したのが、清酒の免許を取得することだったそうです。最初にどぶろくやリキュールなどの製造免許を取り、その後も何度も申請をして、5年かけて2016年に清酒の製造免許を取得。2016年8月「純米吟醸原酒 江戸開城」が発売となりました。

小さな蔵には貯蔵タンクがないため、できたらすぐに絞って出荷。生産量は少ないですが、常に出来たての高品質の清酒。それが、大都会東京の地酒です。

人情味あふれる角打ちで自分好みの一本を探そう

人情味あふれる角打ちで自分好みの一本を探そう

写真:さとちん

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「東京港醸造」は第一京浜から入った細い路地にあります。江戸開城の碑からは徒歩4分ほど。夜になるとお店の前で角打ちを楽しむことができます。

角打ち…馴染みのない言葉かもしれませんが、酒屋の片隅にある立飲みスペースのことで、買ったお酒を家に帰るまで我慢できないと、その場で飲み始めたのが最初だとか(諸説あります)。

人情味あふれる角打ちで自分好みの一本を探そう

写真:さとちん

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どれも1杯400円。いろいろ飲み比べて、自分好みの一本を探すことができます。朝絞ったばかりの清酒をいただくなんて贅沢も、酒蔵の角打ちならではのお楽しみ。
写真は杜氏の寺澤 善実さん。運がよければ清酒造りのお話など聞くことができます。

ほとんどの人がひとりでフラリとやってきています。最近は女性ひとりのお客さんも多いとか。仕事も人間関係のしがらみのない、知らない人同士、楽しくお酒を酌み交わす角打ちは、最近ひそかにブームとなっているんです。

人情味あふれる角打ちで自分好みの一本を探そう

写真:さとちん

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食べ物は目の前の居酒屋から。お店に行って注文すると、出来たてを運んできてくれます。牛すじ煮込みや焼き鳥、アジフライと、いろんなお店のメニューにおいしいお酒。ここは大人のフードコート(笑)。

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進化する東京そのものお酒は東京土産としてもオススメ

進化する東京そのものお酒は東京土産としてもオススメ

写真:さとちん

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清酒「江戸開城」以外に「東京芝の酒」「六本木の酒」「銀座の酒」と地名の入った東京シリーズは、東京土産にも最適な一本。スタイリッシュな瓶は、そのままインテリアにもなりそう。

世田谷のはちみつを使った「ミード」や「東京紅糀あまざけ」など女性向きの商品も多数。珍しい生きた乳酸菌を使った日本酒「Palla-Casey」はクリームチーズや生ハムといった洋風のお料理との相性ばっちりです。

「東京港醸造」のお酒は作るたびに味を変えているそうで、日々変化していく東京そのものですね。

進化する東京そのものお酒は東京土産としてもオススメ

写真:さとちん

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江戸開城から150年経って、大都会に蘇った清酒を是非味わってみてください。

<基本情報>

住所:東京都港区芝4-7-10
電話番号:03-3451-2626
営業時間:11:00~19:00(土曜は~17:00)
定休日:日曜・祝日
アクセス:JR田町駅 徒歩8分、都営三田駅A9出口 徒歩4分

2018年1月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2018/01/09 訪問

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