韓日関係
韓国に来る日本人がこれを読むとどんな気持ちになるだろうか。これは文明国家がすることではない。立場を変えて考えてみよう。東京銀座の電車駅に「朝鮮人を切り殺そう」という文字が貼られていれば、これを見た韓国人の気分はどうだろうか。「倭人を屠殺しよう」という詩句を見て複雑な気持ちになるのなら「土着倭寇」として攻撃されるかもしれない。
111年前の1910年8月27日、韓日併合条約署名の前後の朝鮮は、自分たちも気づかないうちに日本に染まりつつあった。親日を犯しながらもそれが親日かどうかも知らずに慣れていった。1926年の李完用(イ・ワンヨン)の葬儀では行列が十里も続き、高宗の国葬以降で最も大きな規模だった。愛国志士には本当に申し訳ない話だが、その時代の韓国人は帝国大学を卒業し、高等文官試験に合格して郡守や判事に出世し、タクシーに乗って鍾路(チョンノ)の和信(ファシン)百貨店でショッピングをする人を羨んだ。
◆乙巳5賊・丁未7賊だけが罪人なのか
安重根(アン・ジュングン)義士が1920年2月に死刑判決を受けた当時、韓国人は韓半島(朝鮮半島)侵略の元凶、伊藤博文の死を謝罪する使節団、すなわち待罪団を組織して伊藤を追悼する銅像を制作し、活仏として崇めた。伊藤を追悼する博文寺を現在の新羅ホテルの位置に建てて、伊藤の号・春畝にちなんで後方の山を春畝山と呼んだ。
我々は親日の黒歴史の清算を叫びながら、親日派として乙巳5賊(李完用・朴斉純・李址鎔・李根澤・権重顕)と丁未7賊(李完用・任善準・趙重応・李秉武・李載崑・宋秉畯・高永喜)を挙げる。もちろん彼らが歴史に犯した罪の赦免を受けることはできない。ところが彼らが亡国のすべての原因を招いたのではない。
反日を叫んだ人たちが果たして当時の事態を正確に直視したのかも疑わしい。例えば金九(キム・グ)が「日帝時代に国内に残っていた人はすべて親日派だったため、全員監獄に行くべき」(Mark Gayn, Japan Diary)と主張した時、呂運亨(ヨ・ウンヒョン)はあきれて「国内派民族主義者の苦痛を知らない言動」と反発し、金九との提携をあきらめた。
解放されると李承晩(イ・スンマン)は親日財閥・張震英(チャン・ジンヨン)の敦岩荘で、金奎植(キム・ギュシク)は親日財閥ミン・ギュシクの三清荘で暮らした。朴憲永(パク・ホンヨン)は全羅北道益山(イクサン)の地主キム・ヘギュンの恵化荘で、金九は金鉱財閥チェ・チャンハクの京橋荘で過ごした。京橋荘は日本の公使・竹添進一郎が住んでいた家だ。
日帝の滅亡を早くから感知した親日財閥はそれぞれ家1軒ずつを用意して当代の実力者を訪ねて泣訴し、救命運動を展開することを談合した痕跡がみられる。そのような汚れた財産は「受けるのにふさわしい」ものではなかった。こうした点で見ると、我々はすべて罪人であり、亡国の責任者だ。今の親日論争は「先に生まれた者の悲しみと遅く生まれた者の幸運」がもたらした葛藤だ。
解放政局はもちろん、現代史を合わせて親日論争の最も大きな被害者は李承晩(イ・スンマン)だろう。公敵が必要であり、復讐心に燃える人たちに親日は李承晩に濡れ衣を着せる口実として利用された。しかし厳密にいうと、李承晩の初代内閣で閣僚13人のうち親日に分類できるのは2人だけだった。それでも反李承晩系列が李承晩と韓民党を親日に追い込んだ際、直ちに反撃しなければ立ち場を失うことを李承晩陣営はよく知っていた。米軍政で警察総帥を務めた趙炳玉(チョ・ビョンオク)が反撃の先鋒に立った。彼は政界の人たちの親日に精通していたため話せることが多かった。それで出てきた論理が「親日(pro-Jap)は生きていく中で犯したこと(pro-Job)だった」というものだ。
今のこの時代の持つ者のうち旧韓末から日帝時代と解放政局にいたるまで100年の歴史を生きてきた先祖9族、すなわち3族(父方・母方・妻家)3代(父・祖父・曽祖父)の履歴書・家系図・戸籍謄本・除籍謄本を出して「我が家は本当に天を仰いで一点も恥じるところがない」と言える家はいくつあるだろうか。奴婢と火田民を除けばそれほど多くはないはずだ。同時にその9族のうち愛国者がいない一族もほとんどない。きまり悪いが、我々はその時代をそのように生きた。
また国難を迎えれば我々は祖国のために死ぬことができると全員が言えるだろうか。率直にいって筆者も完全にはそうできない。巨大な国家暴力の前で一個人が抵抗することは容易なことではなかった。興亡盛衰を経験しながら義士がいなかったこともなかったが、歴史的に愛国者があふれる時代もなかった。こうした点で見ると、我々は亡国の原因を数人の親日派に負わせることで亡国という巨大談論を希釈した。
筆者は「親日派には公訴時効がない」という論理に法律的な瑕疵がないかを時々考えてみる。我々はいま親日派を捜し出すのではなく「親日派の子孫」を捜し出している。『三国志』をみると、曹操が袁紹に大勝して戦利品を探す間、部下が袁紹と内通した手紙が数多く出てきた。周囲の人たちが「内通した奴らを全員殺そう」と建議した時、曹操はその手紙をすべて燃やして二度とその問題を問いたださなかった。
人種差別問題の権威者、英国のアンドリュー・リグビは「過去の清算は政敵を引っ掻くものではいけない」と力説した。領土もなく国家もなく国民もない状況で一個人が憂国的な気概だけで抗戦するのは限界があった。こうした論理が亡国の責任者に免罪符を与える論理になってはいけないが、敵の治下で4年間過ごした反逆者を処理できなかったフランスとはケースが異なる。昔から巨富は亡国の瞬間や残酷な戦争を踏んで現れた。したがって我々は亡国を招いた彼らの罪状を歴史に記録しておくこと以外に方法はない。我々は過去を抱えて暮らし、過去と共に進む方法を学ばなければいけない。
【寄稿】韓日関係、「善くないサマリア人」と共存する知恵を学ぶ時だ(2)
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