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無罪リラクゼーション!!ライバルはマッサージ師でなく映画や美容院

リラクゼーションも違法?

マッサージ師や鍼灸師は、「リラクゼーション」や「ボディケア」はマッサージ師の資格を持っていないので違法だと言いますが、それは本当なんでしょうか?
資格者がそれぞれの思惑でバラバラの解釈をしているので、一般の方には非常に分かりにくい状況ですよね。
柔道整復師という国家資格を持っているけど接骨院ではなく「リラクゼーション業」で開業した(保険は一切使わない)私の見解を示します。

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解釈が分かれるが、基本的なこと

  1. あん摩マッサージ指圧師」は国家資格なので法律がありますが、
    その法律には「按摩・マッサージ・指圧とは、各々どういう手技を指す」という定義が書かれていない。
    また、「どういう目的で行われ、どんな効果が期待できる」ということも法律には書かれていない。
    つまり、「按摩・マッサージ・指圧」の教科書には技術や理論が当然あるだろうけど、法律に「揉んだり押したりすることで治療効果がある」と書かれているわけではない。
  2. 柔道整復師」は国家資格で、保険の対象範囲と不正請求について批判もされていますが、
    それとは別に「柔道整復術」という技術体系の中には、「脱臼を元に戻す、包帯で固定する」という技術だけでなく、「後療法」という「回復を早めるために行う技術」も含まれていて、後療法の中には「手技療法」が含まれている。
    これは柔道整復師が勝手に言っていることではなく、柔道整復師もまた国家資格であり、教科書の内容である。この事は整形外科医ですら知らないことが多い。
  3. あん摩マッサージ指圧師」「鍼灸師」「柔道整復師」は、「国家資格を持った医業類似行為」と法的に認められている。
    これらの国家資格では解剖学や病理学等の「人の体に影響を及ぼすにあたって最低限の医学的知識」が必修である。
    一方、「整体師」や「カイロプラクティック」はどちらにしても日本国内では「民間資格」で、実は学校に行かなくても誰でも名乗ることができる。勉強している人もいるだろうけども、「人の体に影響を及ぼすにあたって最低限の医学的知識」は必修ではない。
  4. 整体師・カイロプラクティック・温熱・電気・気功療法…これらは「法的制度の無い医業類似行為」に分類されるけど、
    これらを職業にすれば「即、違法」というわけではないようです。
    過去の最高裁判所の判決の中で、
    「医業類似行為は、人の健康に害を及ぼす恐れのある施術でなければ禁止の対象にならない」
    という解釈が出ています。
  5. 総務省による日本標準産業分類では、
    「リラクゼーション業(手技を用いるもの)」は、大分類の【生活関連サービス業,娯楽業】の中にある。定義は「手技を用いて心身の緊張を弛緩させるための施術を行う」
    一方「あん摩マッサージ指圧師」は大分類の【医療,福祉】の中にある。鍼灸師柔道整復師と同じところに小分類され、「医業類似行為を業として行う」という定義だと分かる。

     

上記1~5に関する参照元

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あん摩マッサージ指圧師」=「マッサージ師」の主張は、『リラクゼーションもボディケアも違法行為だ』というもの

医師かマッサージ師か鍼灸師以外の者は、
「触る・なでる・揉む・叩く・擦る・押す・ストレッチやリハビリのように身体を操作したり指示すること」等の全ての手技行為を行う事が出来ない。
治療であろうがリラクゼーションであろうが全ての手技行為は禁止であり、マッサージ師か鍼灸師でなければ違法行為である。

もし上の通りなら、一般の利用者の視点でも、業界の人間である私から見ても、多くの店や人や企業が違法ということなのですが、
温泉・銭湯、駅ナカ・駅前、宿泊施設・オフィス街、等々…今や何処でも堂々と営業していて、前述の通り「リラクゼーション業」が認められている現況では、マッサージ師の主張は実情に即していなくて、願望が強いものと思います。
これも前述の通りですが、「法律」に書かれていることは、
『資格を持たずにあん摩マッサージ指圧師の仕事をしてはいけない』ということだけで、
『触ったり揉んだり押したりしてはいけない』とは書かれていません。
これはこの問題だけでなく、様々な事に言えることですが、
法律には解釈の余地があり、解釈は時代や状況に合わせて変わり得るものです。

「あはき法」の意図について、私の解釈

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」=通称「あはき法」の成立について、

GHQが「あん摩や鍼灸は非科学的であり、不潔である」とあん摩や鍼灸を禁止しようとしたため、業界や視覚障害者の約60日間に渡る猛抗議の末に和解案として作られた法律である

また、「医業類似行為」という用語が「あはき法」の中で登場するものであること

あん摩・はり・きゅう・柔道整復といった法定の行為4種と、カイロプラクティックや整体のような、法定の行為以外の民間療法を含む概念である

そして、現代の日本が「産業分類」で、
あん摩マッサージ指圧師」を医療の亜種とし、
「リラクゼーション業」はサービス業・娯楽業として分けていること等を総合的に解釈すると、
「あはき法」の主旨は、日本では伝統医療であった「按摩や指圧」「鍼灸」「柔道整復」に関しては医師以外では特例で「医業類似行為」=「医療ではないが、限定的に治療に近い職業を許されたもの」とすることで、
その為にはある程度の医学周辺知識を学ぶことや国家試験を受けなければいけないという法的制度だと解釈します。
これら法的に認められた医業類似行為には、それぞれ別の条件付きで、保険を使うことができます。

www.mhlw.go.jp

医学的根拠の有無は関係なく医療に近い位置に分類され、保険を使うことができる。
これが主旨であり、「人体に触れることそのものの独占」とは解釈されない。
だから非国家資格者でも「ケガをさせなければ」処罰されていないのであり、リラクゼーションもエステも「別の産業」として成立しているのではないでしょうか?

整体・カイロプラクティック接骨院らは、リラクゼーション業以上に批判されるべきです

これらが批判されるべきなのは、「手技行為を行っている時点で」ではありません。
誰でも名乗れる職業名または法的制度のない民間資格であるこれらは、「最低限の医学的知識」を持たない場合があるからです。
医学的に根拠が無い「治療」をしたり、人体にとって危険な施術をすることがあります。
前述の通り、国家資格者でなくても「人の健康に害を及ぼさなければ」禁止処罰されないのですが、それでも危険だと思う理由があります。
「リラクゼーションではなく、治療だ」と言うような整体師などは、標準医療や西洋医療に批判的な傾向があり、ワクチン否定やホメオパシー推奨など、科学的根拠のある医療から患者を遠ざけてしまうからです。
いわゆる「ニセ医学」「トンデモ」である傾向は「治療ではなくリラクゼーションです」と言う者よりも、整体・カイロ・気功の「先生」の方が強いと思います。

  • 不正請求をする接骨院は批判されて当然の状況

普通の柔道整復師は「接骨院整骨院)」を経営したり勤めるのですが、
柔道整復師の施術で「保険」が使えるのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫のような急性の「ケガ」のみです。
しかし実際には多くの接骨院で「肩こりや筋肉疲労」に対する手技でも保険を請求していたり、「していないケガを書類に書いたり」しています。
顧客にとっても「保険証を持って行けば安くマッサージが受けられる」という誤認をさせてしまって、接骨院と顧客の両方が得をするので「被害」が分かりにくいのですが、不正な請求に税金が使われてしまう事は、厳しく批判されて当然だと思います。

柔道整復師の手技療法にも需要がある

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保険を使えるのは急性のケガのみですが、
柔道整復師はマッサージ的な手技を学んでいない」と言う人がいるのは誤解です。
また、国家試験の試験科目を比べても分かるように、柔道整復師には「陰と陽」という考え方がなく、より西洋医学寄りです。

  1. あん摩マッサージ指圧師試験 - Wikipedia

  2. はり師試験 - Wikipedia

  3. 柔道整復師国家試験 - Wikipedia

  • 1と2にあって3にはない科目
    東洋医学】【経絡経穴
  • 3にあって1と2にはない科目
    【運動学】【外科学】【整形外科学】

東洋医学の可能性を信じたい人を完全に否定することはできませんが、
あん摩マッサージ指圧師」と「柔道整復師」の人の体の触り方や「治療できると判断する範囲」は同じではないと思います。
少なくとも私の場合は、「あなたの病は“悪い氣”のせいだ」みたいなことは話しませんし、お客の中には、「全身の経絡」みたいなポスターが貼っているような「東洋治療院」にではなく「リラックスルーム」の雰囲気の方が行きやすいという人もいると思います。

良いか悪いかは言いませんが、例として、
東洋医学の色が強い治療家がどういう理屈でマッサージを行うかという参考

www.skincare-univ.com

リラクゼーションの土俵では「実力勝負」です

  • マッサージ師は「土俵」があやふやじゃないでしょうか?

心身のリフレッシュが目的のリラクゼーションであってもマッサージ師以外は違法だと言う「あん摩マッサージ指圧師」は、
リラクゼーション店が増えた事によって生活が脅かされたと考えている気がしますが、「医療の土俵」で厳しくなっているのは、競合相手が「病院」や「リハビリ」や「治療を謳う整体」だからではないでしょうか?
東洋理論に誇りがあるのなら「治療効果」を出して医療として選択肢に入るようにするのが良いし、「医業類似行為」ということで「医療…のようなもの」をするのなら、競合は「整体」「カイロプラクティック」等ではないでしょうか?
そして、「法的制度のある医業類似行為」である国家資格の特権は、保険が使える事で充分に得ているのではないでしょうか?
「訪問マッサージ」や「マッサージ助成券」については、医師から治療効果に疑問を持たれていても恩恵を受けていますよね。

d.hatena.ne.jp

  • リラクゼーション業の競合は映画や美容院

総務省の分類からしても、リラクゼーション業は医療のカテゴリーにはなく、
「サービス業」や「娯楽業」に近いものです。
競合は病院や接骨院や整体ではなく、映画や美容院だと思います。
時間のできた時や休日、お財布と相談して「今日は何をしようか」という時に、
「髪を切って身も心もリフレッシュしよう」とか、
「銭湯に行って疲れを取ろう」とか、
「映画を観て気分転換しよう」とか・・・
そういう選択肢の中の候補として、「気持ちいいボディケアを受けよう」があるのではないでしょうか。

その場合、『何に癒やされるか』は人それぞれです。
治療理論よりも「どういう人にしてもらうか」で癒やされる人もいるでしょう。
また、例えばハワイ式の「ロミロミ」を受けたいと思っても、中国の思想に基づく「あん摩マッサージ指圧師」以外の者に施術を受けてはいけないんでしょうか…??
誰に『心身のリフレッシュ』を受けるかを法律でカチカチに規制するというのは、あまりにも非現実的だと、私は思います。

下野した「医療系国家資格者」として

サービスや娯楽なら、何にお金を使うかは「お客様」が選ぶことです。
マッサージ師にしても柔道整復師にしても、リラクゼーションやボディケアをするのなら、それは、無資格者を含むリラクゼーション業と同じ土俵で勝負することです。

まだ治療で消耗してるの?

いくら治療理論を語っても、お客に選ばれないのならサービス業としては負けです。もし、マッサージ師や接骨院よりも「保険が使えないのに」無資格のリラクゼーション店に行く人がいるのなら、それはお客が求めているのは治療や理屈ではなくて「押したり揉んだりして欲しい」ことかもしれません。
お客(患者)の中には、マッサージや接骨院に治療効果を期待していなくて、「上手に、しっかり、たっぷり、押したり揉んだり癒やしてもらいたいだけ」という人がいる―と言われて否定できるでしょうか?
たとえば医師はどうでしょうか?医師の中には、「マッサージや鍼灸に治療効果なんてない」と言う人も、「接骨院などに行っても治療の意味はない」と言う人もいると思いますが、そういう医師は「マッサージ」を受けないと思いますか?
柔道整復師の資格を取った後、接骨院で働いて、色々あってリゾートホテルの「手もみ処」に転職した経験を持つ私は知っています。医学的・科学的根拠に明るい医師も、休みに来たホテルで「単に気持ちが良いだけのマッサージ」を受けます。
その時に、無資格や未熟な施術者が下手だったり力が足りなければ、勿論次は頼まれません。一方で、非科学的な理論を展開して「病気が治せる」かのように話す「あん摩マッサージ指圧師」や「鍼灸師」よりも、「変なことを言わなくて一所懸命にやってくれる子」の方が選ばれることもあるのです。

リラクゼーションを違法だと叫ぶ国家資格者は、「ただ単に気持ちいいだけで、何も治さない“マッサージ”」を恥じる様な傾向があります。
それでは「サービス業としてのリラクゼーション業」にお客が流れて行く意味を理解できないと思います。『そこ』にこそ需要があるから、治療院ではなくリラクゼーション店に行く人がいるのです。

少し辛辣なことを言います。
自分の資格の強さは「保険が使えること」だと思っていて、
お客(患者)もまた「保険で安く受けられるならいいか」で来ている施術者というのは、
サービスや手技が上手になることは難しいのだと思います。
逆に、「リラクゼーション」や「ボディケア」に来るお客というのは、「数千円払うのだから満足させろ」と来るわけです。サービスとは何かを考え、喜ばれるような技術を身に付けなければ生き残れないのが「サービス業としてのリラクゼーション業」ではないでしょうか。

  • 国家資格者の強みは何か

それぞれの立場に「思惑」があり、法律の解釈に絡み、どの資格者にも業界にも「問題」がある複雑な内容なので…かなり長いブログになってしまいました。
これを私が書いた理由は、お客や一般の方にとって非常にわかりにくい状況だと思ったからというのが一つ。
もう一つの理由は、ツイッターでフォロワーが想定より増えてきて、時には反響もあり嬉しいのですが、時々次のようなツッコミを入れられるからです…

立派なことを言っているが、あなたはマッサージ師じゃないので違法行為ですよ!

議論してしまえば必ず時間がかかる内容で、業務に支障が出てしまうのでスルーしていましたが、これに答えなければ「やはり、やましいことをしているから」と言われてしまいそうなので、今回は書きました。
私はリラクゼーション業を違法だとは解釈していない国家資格者(柔道整復師)で、不正請求が問題の「接骨院」としての開業をせず、よって保健所への登録もなく、「リラクゼーション」または「ボディケア」として商売をしています。
柔道整復師であるのに保険取り扱いを捨てているのは勿体ない…と言われれば、その通りかもしれません。
しかし、本当の国家資格者の強さは、保険で安いことや技術の独占ではなく、「勉強したこと」や「経験したこと」だと思っています。たとえリラクゼーションだとしても、解剖学や生理学を知っていて体に触れることには「違い」が出ると思っています。
また、「治療を謳ってしまう整体師」のようにお客(患者)を医療から遠ざけないことが医療系国家資格者の責任だと思っています。

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私は医療から下野した医療系国家資格者です。
自衛隊経験を持つアクション俳優」…例えばそういう人に近いのかもしれないと思います。

もし……最後まで読んでくださった人がいるとしたら、ありがとうございます。
リンクもたくさん貼りましたが…最後に、私のツイートがまとめられたものを紹介させてください。

togetter.com