魔法科高校の編輯人   作:霖霧露

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第八話 幕間~事件の後の断片~

~誰が灯した篝火か~

 

2095年5月4日

 

 ブランシュ事件が解決してから一週間以上。あれから特筆すべき事項はなく、平和な日々を俺は送っていた。強いていう事があるとすれば、事件翌日に開かれたエリカ主催のお疲れ様会兼達也誕生会で、達也の誕生日を知っているにも関わらず誕生日プレゼントを事前に用意していなかったことくらいだろうか。会の食費を俺持ちにすることでその場を凌ぐこととなったが、開催場のカフェ貸し切り費用は既にエリカが払っていた。

 

 現在、俺はある人に呼ばれ、放課後に学内カフェテリアでその人が来るのを待っている。

 

「ごめんなさい。待たせちゃったかしら」

 

 話し掛けてきた人物は俺を呼び出した壬生紗耶香だった。明確な時間指定をしていないし、放課後になったばかりであるのに謝罪する辺り律儀である。

 

「お気になさらず。待つのは男の甲斐性ですから」

 

 あえて王道から外した返しに、彼女は微笑む。とりあえず俺は対面の席へと促した。

 

「怪我をさせた俺が言うのもあれですが。退院おめでとうございます」

 

「いえいえ!怪我の方は全く問題なかったわ。問題だったのは、催眠の方で」

 

 申し訳なさそうに祝えば、あちらも申し訳なさそうに弁解する。彼女は昨日まで病院に居たが、その大きな原因はブランシュ日本支部リーダー・司一の洗脳に関する検査及び経過観察だった。原作ではもっと入院が長引いていたはずだが、彼女の相手がエリカから俺に変わった影響だろう。とても些細な影響だ。

 

「それより。四葉君に感謝を伝えたくて」

 

「感謝、ですか?」

 

 全くの身に覚えがなかったが、彼女の顔を見ると冗談の類ではないようだ。

 

「あの事件の時、私と純粋な剣で勝負してくれた事。あなただったら、魔法で私に手を出させる事なく倒せたはずでしょう?だから、とても感謝してるわ」

 

 俺はその言葉を聞いて、彼女の清らかな思いと逆に、暗い思いを抱いていた。

 

「私に剣と改めて向き合う時間をくれてありがとう。あれがなかったら、私は多分まだ渡辺先輩への誤解でがむしゃらに剣を振った一年間を受け入れられなかった。今までの努力を、否定してた」

 

「止めてください」

 

 俺はかぶりを振る。彼女の感謝の思いを受け取ることに、後ろめたさを感じて耐えきれなくなった。

 

「俺は、そんな言葉をかけて貰っていい人間じゃない。決してあれは、壬生さんを改心させるためにやったことではありません」

 

「じゃあ、どうして?」

 

 彼女の表情はまだ清らかだった。

 

「あれは、あなたの心を折るためにやりました。剣の才能を持っていた、才能に恵まれたあなたに、八つ当たりがしたかったんです」

 

「どうして?剣だったら四葉君の方がよっぽど強いわ」

 

 彼女の眼はまだ清らかだった。彼女を見ていられなかった俺は俯く。

 

「俺の剣は、あなたの剣のような綺麗なモノじゃない。卑怯で外道なモノです。あなたの剣のように、誰かに誇れるモノじゃないんです……」

 

「……」

 

 沈黙が流れる。彼女は言葉の意味を図りかねているのか、それとも察して軽蔑しているのか。

 

「それでも、それでも私はあなたの剣に心打たれました。あれほど精錬された技があるんだと、感動しました。私の剣の先にも、あれほど素晴らしい剣があるかもしれないと、希望を抱きました」

 

 彼女は尚も清らかだった。

 

「どんな剣であれ、あの剣技はあなたのモノで。あの剣技の素晴らしさはあなたの素晴らしさだと私は思います」

 

 俺は、彼女の力強い言葉になんと返していいか分からなかった。

 

「今日はなんだかごめんなさい。感謝を伝えるつもりが、暗い顔をさせてしまって。もし、気持ちが晴れなかったら剣道部を訪ねて。気晴らしに、一緒に健やかな汗を掻きましょ」

 

 彼女はにこやかに、さりげなく部への勧誘を挿んで席を立つ。彼女の快活な姿を見て、俺はある言葉を思い出した。

 

「『あなたには力があり、世界に不服があります。さあ、あなたは世界を変えたいですか?それとも、自分を変えたいですか?』」

 

 俺を真摯に見つめ、彼女にそう問う。彼女は唐突な問いに戸惑ってはいたが、目を閉じて考える仕草をする。彼女の思考は直ぐに終わった。

 

「私は自分を変えたい。世界への不服なんて跳ね除けられるくらい、もっと綺麗な剣を振る自分に」

 

 彼女の瞳には、()()()()()()()。彼女のその火に照らされてか、俺の心は少し晴れていた。

 

◆◆◆

 

~若葉、草原に根を下ろさず~

 

2095年5月8日

 

 休日である日曜日。俺は前世から引きこもりの気があり、休日となれば自室ないし家に籠るのがいつもの事である。体を動かそうとするにも、外に出るのではなく自宅の地下にある鍛錬場の方が周りに気兼ねなく動ける。それ故に、趣味である読書をするにも、気晴らしに運動するにも自宅の方が何かと都合がいいのだ。

 そんな俺ではあるが、お呼ばれをすればそれに付き合うのも吝かではない。

 

「初めまして、四葉十六夜君」

 

「ええ、お初にお目にかかります。七草弘一さん」

 

 だからと言って十師族現当主に呼ばれたくはないと思うが。残念ながら、『四葉』という名前がついて回る俺は、相応の理由がない限り断りづらい。そのために見事、七草家本宅の客間まで呼び寄せられたというわけだ。

 

「この前の第一高校で起きた事件の解決に尽力してくれたようだな」

 

「十師族の一員として当然のことをしたまでです」

 

 サングラスで目元を隠した弘一の顔からは感情を読み取ることができないが、少なくとも彼の言葉が俺を招くための口実に過ぎないことは察せられる。

 

「本来ならば関東圏の守護を任されている七草がすべきことだ。ほんの気持ちではあるが、我が家で労わせてくれ」

 

「ご厚情、感謝いたします」

 

 労う気があるなら自宅で休ませてほしいとは言わなかった。

 

「それにしても、君が第一高校に進学するとは。今は八王子市に居を構えているようだが」

 

 俺の自宅が八王子市にあることは別に隠していない。調べればそう労力をかけずに見つかるものだ。

 

「ええ、一人暮らしも人生経験ですから。母に強請(ねだ)って許可をいただきました」

 

「ほう、今まで君を隠していたあの四葉真夜が許可したと?」

 

 弘一から疑る気配が滲み出る。何かを探ろうとしているようだ。

 

「交渉の末にですが。色々言い合った後に、母が買い取った一軒家を押し付けられました」

 

 言うまでもなく、あの家はかなりのセキュリティを施されている。いちおう俺が出入りする分にはストレスフリーな作りにしてもらった。

 

「過保護なモノだな」

 

 彼の笑みが苦笑か嘲笑か判別出来ない。

 

「それも愛ゆえに、でしょう」

 

 真実がどうかは分からない。実の子供と疑われないようにするためかもしれない。だが、真実がどうであれ、俺自身も疑われてはいけないので取り繕う。

 

「15年も閉じこめられてもそう思うか?」

 

「思います」

 

「……」

 

 間を置かぬ俺の断言に彼は閉口し、少しばかりの沈黙が流れる。

 

「親子の絆、というのかな。少し羨ましいよ。こちらの長女は反抗期の兆候があってな」

 

 腹が探りきれないと判断したのか、先ほどまでの気配を潜めたようだ。

 

「父親と娘では、少し距離を取るのが丁度いいと思いますよ」

 

「参考にしよう。すまないが、所用が入っているので私はこれで席を外す。もてなしは真由美に言いつけておく。ゆっくりしていくと良い」

 

 弘一は立ち上がり、離席の旨を告げる。

 

「お忙しい中、このような時間を設けて頂きありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」

 

 俺は形だけの誠意を込めた感謝を告げた。

 

◇◇◇

 

「「もてなしを頼む」、じゃないわよあの狸親父。先輩後輩じゃ気まずいじゃない!」

 

「ええ、ですからその。お構いなく」

 

 昼食を七草家で頂けることになっているが、まだその時間には早く、客間にて真由美と歓談(?)をしていた。真由美は少し荒れているようだが。

 

「それはダメよ。いきなり呼びつけて置いて、何の御もてなしもしないなんて。七草の名折れになってしまうわ」

 

 この唐突な呼び出しは、昨日真由美から伝えられたことであり、それを伝えようとする彼女の顔は非常に申し訳なさそうだった。それ故に、彼女は必要以上の責任を感じているのかもしれない。

 

「既にお茶を出してもらっていますし、真由美さんのお時間をいただいているだけでも、十分なもてなしだと思いますが」

 

 というかこれ以上のもてなしを学校の先輩に求めるのは彼女が言う通り気まずい上に厚かましい。

 

「十六夜くんがとっても謙虚な子で助かったわ」

 

 真由美はため息を吐いてから、どうにか落ち着いてくれた。

 

「本当にごめんね?あんな父親で」

 

「いえ、四葉と七草の関係を考えれば、もっとぞんざいな扱いを受けるものと思っていましたので。食事が頂けるだけでも有り難いですから」

 

 そろそろ影で娘に貶されている弘一が可哀想になってきた。フォローはしないが話題を変えよう。

 

「ところで」

 

「?」

 

 俺が襖の方を見る。真由美もその先に何かあるのかと視線を追う。

 

「先ほどから襖を少し開けて覗き見しているのは、真由美さんの御姉妹(ごしまい)でしょうか」

 

「え?」

 

 真由美は俺の指摘を受けて、その襖を注視する。

 

「はぁ……。香澄(かすみ)泉美(いずみ)。出てきなさい」

 

 どうやら『マルチスコープ』を使って覗き見している者を確認したようだ。真由美の『マルチスコープ』といい、達也の『精霊の眼』といい、知覚系魔法は本当に恐ろしいものだ。

 

「まさか気付かれるなんて。もしかして知覚系魔法?」

 

 マルチスコープで捕捉されれば逃れても意味がないと観念したようで、襖を開けて入ってきたのは外見上髪型でしか区別がつかないような二人の少女、七草香澄と七草泉美だった。

 

「残念ながら魔法ではないな。ただ、人の視線に敏感というだけだよ」

 

 超人技能のおかげか、人の気配を知覚するのはそう難しくなく、さらに此方に意識を向けた視線にはかなり敏感だった。特に、殺意などには咄嗟に臨戦態勢をとってしまうくらいである。

 香澄は俺の説明に納得がいかないというような表情をしていた。

 

「あなたたち、客人を覗き見るなんて失礼よ」

 

「真由美さん、彼女らがそうしてしまうのも無理はないでしょう。ただでさえ俺の情報はあまり多く出回っていないのですから」

 

 真由美は二人を諌めるが、好奇心は猫をも死地へと追い立てる欲求だ。十師族の一員とはいえ、まだ中学生の少女たちにとって抗うのは難しいだろう。俺の言葉を受けて真由美は肩をすくめ、俺は彼女らの方に体を向ける。

 

「初めまして、俺は四葉十六夜。知っているだろうが四葉現当主の息子で、真由美さんの後輩だ」

 

「さ、七草の次女、七草香澄です」

 

 俺の柔和な態度が四葉の印象からズレていることで動揺したのか少しどもったが、しっかりと自己紹介を返してくれた。香澄に笑顔で応対し、もう一人・泉美の方へ目を向ける。

 

「えっと、そちらは七草泉美さん、で合ってるかな?」

 

 何故か香澄に続かない泉美の自己紹介を促す。

 

「は、はい!私は七草泉美です。あの、十六夜お兄様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」

 

「「お義兄様!?」」

 

 発音が同じはずなのに、泉美と真由美・香澄の「おにいさま」のニュアンス違いが如実に感じ取れる。そういえば、泉美は原作で深雪のことを「お姉様」と慕っていたようなことを思い出した。深雪と外見が似ていなくもない俺にも反応してしまったのだろうか。彼女はキラキラした目で俺を見つめてくる。

 

「その、すまないがその呼び方は色々と誤解を生むと思うから。違う呼び方に変えてくれると嬉しいかな」

 

 真由美と婚約したなんて勘違いされようものなら大問題だ。訳を説明しても他人様の妹に「お兄様」呼びをさせている奴と認識されて大問題だ。彼女の姉の為にも、俺の為にも是非とも止めて頂きたい。

 

「そうですか……。では、十六夜様と―――」

 

「「十六夜さん」でお願いするよ」

 

 切実に。

 

「はい。では、「十六夜さん」と呼ばせていただきます」

 

 彼女の前でため息は抑えたが、苦笑いは禁じ得なかった。真由美と香澄も泉美の暴走具合に呆れている。

 

「お時間はありますか?お聞きしたいことがたくさんあるのですが」

 

 彼女は懇願するようにこちらを見つめる。確かにまだ食事には早いし、彼女の様子を見ていると断りづらい。

 

「ええ、構いませんよ」

 

 真由美の方は追い出すべきか思案していたようだが、現状客人である俺の許可が優先される。

 

「趣味は何ですか?」

 

 お見合いかと突っ込まなかった俺は偉いと思う。真由美や香澄はずっこけそうになっているくらいだ。

 

「強いていうなら、読書が趣味かな」

 

 大変無難且つ面白みの欠片もないが、前世から俺はよく読書をしていた。『魔法科高校の劣等生』を知っている時点で分かると思うが、ライトノベルを好んで読んでいた。

 

「読書?あんまり学校でそんな姿は見たことないけど」

 

「紙媒体を好んでいるものですから。本の状態が気になってしまうので持ち歩かず、自宅でしか読まないようにしているんです」

 

 これも前世からだが、どうしても電子書籍というのは肌に合わない。なので、今は出版数が少なくなった紙の本や、紙が主流だった時代のライトノベルを買いあさっている。因みに過去のライトノベルは良好な保存状態の物が少ない上に、プレミアがついているようで高価な物が多い。俺の支出の大半はそれだ。

 読書はともかく、紙媒体を好む者は昨今希少種であり、それに対して意外だという表情をする真由美とどこに感動しているのか神を拝むような泉美。そして特に理由のない気まずさに襲われる俺。

 

「ボ、私からも訊きたいんですが。どうして15年も籠ってたんですか?」

 

「ちょっと!?」

 

 核心というか、秘密を突くような剛速球を放つ香澄に、真由美はそんな大暴投に驚く。

 

「そうですね。皆さんになら、話してしまってもいいかもしれません。申し訳ありませんが、これから話すことはオフレコでお願いします」

 

 俺は話を少しもったいぶる。真由美はさっきから驚いてばかりで大変そうだ。香澄と泉美は唾を飲んで次の言葉を待っている。

 

「実は。俺は四葉の人間であるにも関わらず、数年前まで魔法が扱えるような状態ではありませんでした」

 

「魔法が、扱えない?」

 

 精神が不安定の時は魔法も不安定になり、そのまま魔法を使えなくなることもある。これは周知の事実であるが、今言っているのはその事例ではない。

 

「今でこそその状態は治りましたが。使えなかった原因は不明。治った原因も不明です」

 

「それが、今まで世に公開されなかった理由ですか?」

 

「ああ、他の十師族でもそうだろうが、四葉直系の子息が魔法を使えないなんて広まれば誰に狙われるか分かったものじゃない」

 

 反魔法団体か、他国のスパイか、はたまた同族か。いつどこでどんな風に狙われるか、予測は尽きないだろう。それらすべてに対処するのは不可能だ。

 

「俺の15年は、その状態の改善方法の模索と、唐突な完治の経過観察でした」

 

「「「……」」」

 

 彼女らの顔が俄かに信じ難いというのを語っていた。当然だろう、全部嘘なのだから。これは、真夜とともに考えておいた、十師族に問われた際に答える虚偽だった。この虚偽の方が事実より信憑性があるものだとは思うが。誰が大亜細亜の少年兵が遺伝子を自力で書き換えて後天的に四葉の息子になったなんて話を信じられるだろうか。

 

「そうだったのね……」

 

 最初にその虚偽を真実と受け取り、放心から帰ってきたのは真由美だった。

 

「魔法が使えなくなる病気があるなんて広めて、無駄な恐怖を煽るのも良くありませんから。今尚事情を公表しないことを許してください」

 

「いえ、事情は分かりました。秘匿しているのも妥当な判断だと思うわ」

 

 真由美はどうやら肯定的に受け取ってくれたようだ。

 

「魔法が使えないなんて。そんな、そんなお辛い時期があったのですね!それを乗り越えて今の十六夜さんがいること、とても尊く思います!」

 

 泉美の方はまた暴走を始めたようだ。先ほどまでの少し重い雰囲気を払ってくれたのは有り難いと言えなくもなかった。

 

◆◆◆

 

~転ばぬ先の杖~

 

2095年6月25日

 

〈そろそろ定期試験の時期ね。勉強の方は大丈夫かしら?〉

 

「うん、問題ないよ」

 

 俺は自宅にて、真夜とヴィジホンを通した世間話に花咲かせていた。

 

「ただ、理論は達也に勝てる自信がないな。実技の方は深雪もいるしね」

 

 俺は頭の出来がリライトのおかげで良い方なので、勉強は人並み以上にできるし、魔法演算領域的な話でも頭が良いのでよほどのことがない限り悪い成績は出さないだろう。だが、達也と深雪に勝てるかというと次元が違う話だ。

 

〈ふふ、達也さんは入試の理論で断トツの一位。深雪さんは実技の方でそうだったわね〉

 

「あの二人はもう少し加減を覚えてほしいよ」

 

 目立ちたいのか目立ちたくないのか全く分からない。少なくとも一位を譲るくらいは手を抜いてほしいものである。入試成績では一高一年で唯一の十師族関係者が主席になれないという事態を起こした責任くらいは感じてくれたのだろうか。感じてないだろうな。

 

〈テストの後は、九校戦ね〉

 

「母さんは、俺が九校戦の選手に選ばれてほしいかな?」

 

〈そう思っていますし、そうなるでしょう。楽しみにしてるわね〉

 

 真夜は息子の活躍を期待しているようだ。もちろん、俺はそれにしっかりと応えるつもりだ。それこそが親孝行であり、贖罪となるだろう。

 

〈ただ、少し不安ね〉

 

「不安?」

 

 俺に対する不安だろうか。それは絶対に解消しなくてはいけないことだ。

 

〈九校戦の会場近くに、良くない連中が集まっているかもしれません〉

 

 俺はその言葉を聞いて、内心四葉の情報網に感嘆すると同時に、タイミングの良さを喜ばしく思った。

 

「良くない、か……。母さん、少し頼みがあるんだけど」




壬生紗耶香:ブランシュ事件時、十六夜との真剣勝負(真剣な剣だけでの勝負)で彼に敵わなかったものの、格上との勝負に少しでも食らいつけたことで自身の一年間が無駄ではなかったと悟った。同時に、剣だけで勝負してくれたことに、手を抜いているのも分かっていたので稽古をつけてくれたと考え、十六夜に感謝している。ちなみに、短い入院期間ではあったが、毎日お見舞いに来てくれた桐原武明の思いに気付き、自身の思いにも気づいたらしく恋仲になったらしい。

七草弘一:かつて四葉真夜との婚約を破棄されたことも理由の一つではあるが、増大し続ける四葉の力に十師族の均衡が崩されるのを懸念し、度々四葉にちょっかいをかける。今回の十六夜との対面も、15年の監禁に対する不満を出汁に七草へ引き込もうという思惑があったが失敗。下手に粘っても敵意を煽るだけと考え早々に切り上げた。

十六夜の暮らす一軒家:彼が真夜との舌戦の末に勝ち取った一高に通うための拠点。真夜の指示でもちろん様々なセキュリティが施されているため、他人を招き入れるには少々不便な家となっている。一軒家の住所も十六夜に従者が居ないことも調べればすぐに分かるが、四葉に敵意がある者から見れば罠にしか見えないだろう。

七草香澄:父親が四葉を目の敵にしていることに辟易しているが、四葉の悪名が原因の一つであると考えている。そのため、四葉に良い印象を持っていなかった。十六夜もその家の一員であるために恐れてはいたが、彼の対応から自身の偏見に疑問を抱く。

七草泉美:四葉の悪名は知ってはいるが、かつての四葉真夜誘拐事件が発端であり、その対応も妥当と考えているので四葉を必要以上に忌避する意味はないと考えている。十六夜の見目の良さと彼の内にある何かに反応し、彼を「兄」と慕いたい衝動に駆られた。さて、彼女が彼に感じた何かとは『彼がひた隠す彼の本性』なのか、それとも『彼が借りている力の輝き』なのか……。

閲覧、感謝いたします。

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