男女のA面/B面が入れ替わったら?

清田:田房さんの新刊『大黒柱妻の日常 共働きワンオペ妻が、夫と役割交替してみたら?』(エムディエヌコーポレーション)でも、A面/B面の問題は重要なテーマになってるよね。前回記事で「子どもが生まれてからA面とB面を行き来せざるを得なくなった」という話をしていたけど、この漫画では妻と夫でA面/B面が完全に入れ替わる展開になっていて、問題意識がさらに進んだように感じました。

田房永子『大黒柱妻の日常』P75より引用

田房:主人公のふさ子はワンオペ育児しながら、自分が働くための時間を確保するために「保育園」を探さなきゃいけない。すごく大変なのに、夫は来年保育園に入れなくても就労時間は変わらないから、その大変さをわかってないっていうシーンがあるんですけど、まさにそれが「B面(育児担当)にいる人だけが、A面とB面を行き来(仕事時間の確保のための保活をしながらワンオペ育児を両立)しなきゃいけない」ってことなんですよね。

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清田:大黒柱としてA面の世界でバリバリ仕事を始めたふさ子が、忙しさのあまり家事育児(B面)に対するコミットがどんどん減っていっていくというくだりに衝撃を受けました。そこに罪悪感はあるし、できるだけ家事育児への関わりを増やしたいと思っているんだけど、仕事への意欲や「成長せねば!」という焦り、収入のプレッシャーから、なかなか気持ちを向けることができない。

そんなふさ子の様子を夫は“昭和の親父”と指摘していたけど、これは男女ではなく、立場や権力性の問題なのかもしれないと感じました。とはいえやっぱり、男女では圧倒的な非対称性があって、主人公に同情的な気持ちがわいてしまったりもして……とても考えさせられるシーンでした。

田房永子『大黒柱妻の日常』P105より引用

田房:私自身、男女の差ってホントにあるのか? っていう疑問があって、女だって「権力」を手に入れたらどんどんズルくなっていったり、男もマジメに家事をしてたら他人事な配偶者にイライラしたり口うるさくなったりするものだよね、っていうのを漫画に描き起こしてみたいという思いがありました。やってみて、やっぱり男女差あるわって思うところも出てきたけど。

例えば、男性は女性に比べて、自分の感情を言語化するのが得意じゃない人が多いですよね。だから、ふさ子の夫・トシハルも本当は、重要なことに限って言葉で言わない寡黙なタイプの男性にしたかった。でも私の実力では会話がないと話が進行できないから、たくさん会話させちゃいました。