太田 私も子育てをしながら、自分のジェンダーバイアスに気づくことが多々あります。そのときは「ごめん、ママのさっきの話、間違っていました。もう1回言います」とやり直しますね。
SHELLY 私もそうです。私たち親世代は今とは違った価値観の世の中で育ってきているので、自分でも気づけていないジェンダーバイアスはやっぱりあります。謝ることを含め、子どもをひとりの人間として見ることは大事にしたいですよね。
太田 私は、家の中での性差別には気をつけているつもりですが、子どもって親以外の身近な大人や、テレビやアニメといったコンテンツからも影響を受けるじゃないですか。SHELLYさんは、おふたりのお嬢さんに何かコンテンツを見せるとき、気をつけていることはあります?
SHELLY そこはもうコントロールしきれないので、一緒に見ながら説明するようにしています。
太田 私も同じです。「今テレビではこう言っているけど、本当はこうだよね」と会話をして。最近は、上の子が“非対称な言葉”に敏感になり始めたんですよ。テレビから“女優”という表現が聞こえると、不自然に感じるみたいで。そのときは、「よく気がついたね!」と絶賛するようにしています。
SHELLY 不思議ですもんね。女流作家という言葉はあるのに男流作家はないとか、同じ仕事なのに男性は医師で女性は女医だとか。あと、少女マンガも難しいんです。どうしても、ゆがんだ恋愛観が垣間見えるので。
太田 例えば壁ドンはデートDVになりかねないのに、トキメキとして描かれますしね。私が腑に落ちないのはお風呂をのぞくシーン。罪深いのが「のぞきに行こうぜ」じゃなく、偶然見えてしまったときに「ラッキースケベ」と表現するんですよ。故意ではないことを免責するみたいな言葉ですよね。
SHELLY 相手にまずは「ゴメンね」を伝えるべきなのに。
太田 そういった性暴力やセクハラになり得るものを、ギャグ的に描くことがなくなっていくといいですよね。
SHELLY そうですね。あとコンテンツの話でいうと、なるべく幅広いジャンルの絵本を読ませています。『王子と騎士』という話があるのですが、王子様が結婚相手を探して、いろんなお姫様と会うんですよ。でも、結局王子様は自分のピンチを救ってくれた騎士と恋に落ちて、結婚するんです。私は大人の脳で読んでしまうので、この後の展開で周囲に反対されるのかなと想像していたのですが、純粋に「王子が素敵なパートナーに出会えた!」と、みんなが祝福して終わり。ただ、娘たちが不思議そうに「男の子同士は結婚できないんでしょ?」と聞くんです。「結婚できるよ」と言えない日本の今の制度や、「できる国もあるよ」と注釈を入れる現状に心をすり減らすことは多いですね。
太田 私も、息子には「今の社会は未完成で、完全じゃないんだよ。だから、よくなるようにお母さんもがんばるし、あなたも大人になったら一緒に変えてね」と話しています。子どものリテラシーを育てることが、健全な未来につながっていくと思っています。