社会的、文化的に形成された、ジェンダーという概念。心理的な自己認識や置かれた環境によって一人ひとりが抱く問題意識は違います。今回は、「これからの性教育」のテーマを軸に、タレントのSHELLYさんと弁護士の太田啓子さんに語り合ってもらいました。
私たち大人がジェンダーに対する
意識を変えることが最初の一歩
YouTubeや雑誌などを通して積極的に性教育の大切さを発信しているSHELLYさんと、弁護士として多くの離婚や性被害などの事件と対峙してきた太田啓子さん。それぞれ親としても子育てに奮闘しているふたりが、日々感じている「男の子らしさ」「女の子らしさ」の危険性とは? これからの性教育の大切さや、子どもたちに生きやすい未来を贈るため、いま大人がすべきことも語ってもらった。
SHELLY
1984年生まれ、神奈川県出身。4歳と2歳の娘の母であり、MCやナビゲーターなど幅広く活躍。現在は『ヒルナンデス!』の金曜レギュラー、『今夜くらべてみました』のMCなどを務める。昨年、YouTubeで性教育チャンネル『SHELLYのお風呂場』を開設。
太田啓子
弁護士。離婚・相続等の家事事件、セクハラ・性被害などを担当する。2019年に『DAYS JAPAN』広河隆一元編集長のセクハラ・パワハラ事件に関する検証委員会の委員に。12歳と9歳の息子の母。共著『日本のフェミニズム since1886 性の戦い編』(河出書房新社)。
SHELLY さっそくですが、太田先生がジェンダー問題を意識し始めたのは、何がきっかけでしたか?
太田 私は離婚事件を扱うことが多いのですが、その中で家庭内の性差別やDVも目の当たりにしてきたんです。やがて自分がふたりの男子の母になり、彼らを女性と対等な関係を築ける子に育てたいと思うようになりました。でも、子育てが始まると、男子が日常的に受け取るジェンダーバイアスの多さに驚きました。「ケンカに負けたらやり返してこい」「男は泣くな」と、“男の子だから”という理由で粗雑に扱われる。それがやがて、強い男性をよしとするマッチョな価値観につながり、その先に女性を抑圧する現在の性差別があるのだと思います。
SHELLY “男の子だから”という子育てが、男性に、感情を豊かに感じさせない社会につながっていますよね。「寂しいとか、疲れたとか、辛いとか言うのは弱いやつ」と言われて育つから、感情を押し殺した大人になっていく。逆も同じで、女性が活躍する時代だと言われても「大声を出しちゃダメ」「目立つことはしないで」と育てられた女の子がCEOになるわけがない。まだまだ日本はジェンダー問題に向き合えていないなと感じます。
太田 特に周りの発言で感じますよね。「男子はやんちゃで、言うことを聞かないよ」とか、「女の子だから、お手伝いしてくれるでしょう?」って、多くの人が言うじゃないですか。世の中の“男の子だから”“女の子だから”という決めつけが未だ強いなと実感します。
SHELLY 本来は、お人形さん遊びが好きな男の子がいても、トラックのおもちゃで遊ぶ女の子がいてもいい。私は仕事で性教育の話をさせてもらうことも多いのですが、「うちは男の子なんですけど、どう教えるといいですか?」って聞かれるんです。でも大切なのは自分の体も、相手の体もよく知ること。性教育に男女差はないんです。それに、生まれてきた体が女の子か男の子かというだけで、今後どういうジェンダーを持ち、どんな相手と恋愛をするのかはわからない。私たち大人がジェンダーに対する意識を変えることが最初の一歩だと感じます。