重要‼️ 新型コロナ対策「PCR・抗体・CT」検査はよく間違える【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義⑨】

命を守る講義⑨「新型コロナウイルスの真実」


 感染症から命を守るための原理原則は、変わらない。この原則を体に染み込ませる決定版。感染症専門医の第一人者・岩田健太郎神戸大学病院感染症教授の最新刊『新型コロナウイルスの真実』をもとに現在の感染者が急増する緊急事態に対し、私たちが「今、できる対策」を連続講義いただいた。「新型コロナウイルス感染症」から自分と家族、人々の命を守るために、今、私たちは何をすべきか。第9回目は、「新型コロナウイルス」の検査における偽陰性、偽陽性の落とし穴を学びます。


◼️検査では証明できない

 今回の新型コロナウイルスの感染経路は非常に分かりやすくて、感染者がどういうクラスターとして感染したかも8割ぐらいは見つけることができます。
じゃあ逆に、すでに分かっているクラスターから外れていたら感染を否定できるかというと、それはもちろんできません。これまでに知られていないクラスターの可能性がありますから。
さらに、症状も初期は風邪と見分けがつかない、特徴がはっきりしないものなので、「この症状だったらコロナじゃない」というのもなかなか言えないんです。
クラスターからも症状からも、「新型コロナウイルスに罹っていない」ことは診断できない。
それなら検査ならできるか、というと、残念ながら検査で分かるのは「新型コロナウイルスに罹っていること」であって、「罹っていない」ことは証明できません。
というのも、検査方法としてよく名前が挙がっている「PCR」の感度が6〜7割程度しかないからです。
感度というのは、要するに病気の人を100人集めたら何回PCRが陽性になるか、ということです。だからPCRが陰性の人でも、3割以上は新型コロナウイルスに感染している計算になります。

 ここで、PCRの原理について簡単に触れておきましょう。
PCRとはPolymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の頭文字で、特定の遺伝子を捕まえて増幅させる技術です。
なので、対象がウイルスじゃなくても、遺伝子さえ持っていれば、例えば人の遺伝子に対してもPCRを使うことができます。
PCRによる検査では、この新型コロナウイルスに特徴的な遺伝子の配列を探してきて、対になっている遺伝子を分離させ、ポリメラーゼという酵素の働きを利用して遺伝子を増幅させます。
こうやってウイルスの遺伝子を増やし、見える形にしてあげて写真を撮り、ウイルスがいるかいないか判断する、というのがPCRの原理です。

 かいつまんで説明すれば、ウイルスの遺伝子を拾ってきて、これをどんどん増やして目に見えるようにして、「いたぞ!」というふうに見つけるのがPCRです。ぼくが学生の頃には確立されていた、歴史の古い技術です。

 この手法にはいくつか問題があります。
一番の問題は、遺伝子が拾えなかったら見つからないということです。
新型コロナウイルスの検査の場合は喉をこすってサンプリングするのですが、そこで拾えた遺伝子の量が足りない場合と、そもそも喉にウイルスがいない場合があります。
ウイルスは人間の細胞の中にいますから、細胞から外に出ているウイルスの遺伝子を捕まえてやらなくてはいけないんですが、感染していても細胞からなかなか外に出ずにサンプリングできないことがあるんですね。
あるいは、ウイルスが喉にいなくて肺の中に入ってしまっていると、当然喉をこすっても捕まりません。
というわけで、PCRによる検査では偽陰性、つまり体内にウイルスがいるんだけど検査で捕まらないことがしばしば起きます。これは今回のウイルスに限った話ではなくて、これまでに知られている感染症でもしょっちゅう起きてきたことです。
ですから、PCRで陰性でもウイルスがいないという証明にはならないのです。
逆に、PCRが陽性の場合はウイルスがいるという証明にほぼなります。偽陽性の問題はほぼ起こりません。時々間違えることもありますが、その典型は検査中に検体を取り違えてしまうようなケースですから、そういうミスが起こらない限りはほぼ間違えないですね。

 

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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