基本的にハズレメーカー、TRN
私がKZとTRNをあまり好んでいないことは紛れもない事実です。これまで聴いてきた両ブランドの製品の多くは明らかに適切な調整を欠いており、それは彼らの製品が殆どの場合、よりドライバー数が少ない製品ほどサウンドバランスが良い傾向にあることに端的に表れています。彼らがより多くのドライバーを扱おうとするとき、そこにあるのは多くの場合、悲劇だけです。
さて、最近TRNはTRN X7という1万円台の製品を出しました。私はそのレビューユニットを受け取りましたが、一聴してそのサウンドの酷さを理解したので、この記事は実に憂鬱なものになります。
TRNはどうやら、だめなほうのKineraに憧れているようで、私にとってTRN X7はTRN版Kinera Nornとでも言うべきものです。
幸いにして、TRN X7を褒めちぎるような記事はネットを探せばいくらでも見つかるでしょうから、TRN信者の方はそちらをご覧になるのが良いでしょう。この記事は基本的にX7がいかにだめかということしか書いてません。
TRN X7が比較的まともなのは外観だけですが、それですらどちらかというとチープです。
商品画像と違う、合わないケーブルで送ってくるだけでなく、ときどきケーブルを入れ忘れることもあるようです。
洞窟で響くような気持ち悪い音
まず、耳に入れて音出しした瞬間に、低域の響きが強すぎることに気づきます。低域が中域にかぶさっており、ボーカルはわりと近いのに引き締まりが悪いのでディテールが良く聞こえませんし、ボーカルの音像は妙に平べったいですね。子音はよく聞こえないので、滑舌が悪く聞こえますし、活気が感じられません。暗く、おとなしめで奥ゆかしいと言えるかもしれませんが、全体的にぼんやりしています。無理に良いところを探すとすると、響き成分は妙に強調されているので、包まれ感は良好と言えますね。
音の立ち上がりも鈍く、どうも各ドライバーをよく調整せずにぶっこんでるのか、音が遠ざかったり近づいたり、響きの変動幅が大きく、情緒不安定で定位が分かりづらいですね。そもそも音像の輪郭感が悪すぎます。全体的に籠もっていて聞こえづらいので、案外定位の不自然さは目立って聞こえない可能性もありますが、音が飽和していて気持ち悪いだけです。まあ、こういうファットなサウンドを好む人がいないわけではないので、一部には需要があるでしょう。私は勘弁。
高域も伸びてない拡張性に欠ける音で、レンジ感も悪いですね。なんでこんなものを売り出す気になったんでしょうか。売れると思ったんですかね?最大限好意的に見繕ってせいぜい5000円クラスの音で、コスパが悪すぎです。測定してみると、案の定、すごい感じでしたね。
たしかリリースによると、「TRN X7は、プロのオーディオ音響エンジニアによってチューニングされており、広い周波数帯域にわたってフルボディなレスポンスを持つ、解像度の高いサウンドを実現しています。」とかいう話でしたが、聞こえる音の大部分は中低域ですね。うん、地雷。
まとめ
ドライバー数の多さとわりと整っている見た目、そして何よりTRNを必要以上によく感じさせるかもしれないSNSの声などに騙されないことです。このイヤホンには基本的に$50くらいの価値しかありません。あなたがドライバー数にこだわるタイプなら、これを買うよりは半額以下で手に入るGeek Wold GK10をおすすめします。外観はチープでも、そちらのほうがはるかにあなたを幸福にするでしょう。
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