ドナルドダックじゃない方

ブレードランナー 2049のドナルドダックじゃない方のレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
2.0
がっかりした。非常にがっかりした。
ドゥニ・ヴィルヌーヴはすごい辣腕なのだと思った。結局、退屈な話を上手いことまとめてるだけ。端っから負け戦の大物続編企画をこれだけちゃんとした形にしたんだから並大抵の才能じゃあないんだろう。仕事に徹したんだと思うよ。だけどつまらない。『複製された男』とか『ボーダーライン』で分身とか正邪の混淆っていう『ブレードランナー』と通ずるテーマをやってきた人が本家でどうそれを発展させるのかと思ったら何も発展しない。ドゥニ・ヴィルヌーヴの映像力はここではもっぱら何度も見たあの世界をちょっとずつズラしていくためだけに使われる。

なんでこんなに腹が立っているかということを正確に書くとネタバレになるので婉曲に表現すればゴミを否定されたからということになる。ゴミはゴミだと言われた気がするから。ゴミは可哀想だと言われた気がする。ゴミに手を差し伸べようと言われた気がする。ゴミとか言うと角が立つが、つまり何かというと無価値とされているもののこと。
こんなチープなヒューマニズムは最悪。ヒューマニズムの美名に隠れたレイシズムとも言える。やさしさの暴力。ハリウッド映画の脳筋思考様式。他者の他者性を剥奪して己の領域を死守しようとするリベラルを気取ったスーパー保守。
俺が『ブレードランナー』を好きなのはそういう土臭いところがないからで、マーケットとかストリップバーとか廃アパートとか地べたを這いずり回ってはいるが都会的な、浅草のゲテモノ趣味が都会的で銀座のスノッブが田舎的っていうような意味で都会的な感覚に全幅の信頼を置いているから素晴らしい。
『ブレードランナー』はゴミを恐れたりしないしゴミを見下したりもしないわけですよ。むしろ逆。ゴミ、ガジェット、見世物やまがいもの、欠陥や荒廃、の中にこそおもしろさや美を見出そうとする洒脱。あんな珍妙な世界観を誰が真剣に受け止めるか。だがあやしいからこそ信じるに足るということもある。
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