ドナルドダックじゃない方

アウシュヴィッツ・レポートのドナルドダックじゃない方のレビュー・感想・評価

3.4
これ難しいなと思ったのが、冒頭に「過去を忘れる者は同じ事を繰り返す」ってエピグラフが出て、エンドロールに入ると誰が言っているのかは具体的にわからんけれども現代の色んなヘイトスピーチ音声が流れるんです。ガス室送りにされたのはユダヤ人の人たちだけじゃなくて、ナチとそれを支持するドイツ国民が社会の荷物と判断した色んな属性の人たちでもあったというのは最近よく言われることで、その流れを受けてこれも「こういう言説を野放しにしておくとそのうちまたホロコースト(ショア)起きるぞ」と観客にメッセージを送ってるわけですね。

それはわかるんですけどなんかもう慣れちゃったっていうか、『サウルの息子』を観た時にはすごい題材と映像だなーと思って強い映画体験として脳に焼き付いたんですけど、そういうのってショック療法みたいなもので何回も効かないよなって感じで、この題材の映画にまたこういう映画かぁ的な感想を垂れるのも気が引けるが、でもエンドロールのヘイトスピーチも含めてやっぱそう思っちゃったからさ。管理する側からの視点で収容所を扱った『小さな独裁者たち』もそういう感じだったし、『帰ってきたヒトラー』もまぁメッセージとしては同じようなところありますよね。
だから、またかぁって。別にガッカリしたとかじゃなくて普通に良い映画だと思ったんですけど、映像的にもメッセージ的にももう慣れちゃったんだよこういう映画多くて、単純に。警鐘に慣れるのは良くないっていうのも正論でしょうけど正論で感覚は矯正できないしさ。そこが難しい。強いメッセージは何度も発する必要があるが何度も発すればメッセージを受け取る側の慣れは避けられない。そういうジレンマがあります。なんかそういうことを考えさせられる映画でした『アウシュヴィッツ・レポート』。作った側としては不本意だろうけれども。
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