動機は3つあった。
スマホはXperia 1を使っている。最大の特徴は画面比率が9:21ということ。
これはいわゆるウルトラワイドディスプレイを縦にした比率と同じ。
そのうえ1度にアプリを2つ同時に起動できるので、スマホゲー掛け持ち者としては非常に使いやすい代物だった。
ただ音ゲーの場合はいうほど便利じゃない。なんというか、横に広すぎてノーツを視認しづらいし、画面もそれほど大きくないからフリックノーツの精度が低いと感じる。
単純に下手なのは否めない
そんな訳で「タブレット欲しいよなぁ……」と考えるに至った。
2つ目は「画面共有しやすい」こと。
最近そろそろ10年くらいの付き合いになる友人がいるのだが、友人間でプレイしているゲームを画面共有して、だらだらと過ごすのがブームになっている。
androidスマホはキャプチャーボードにつないでもキャプチャできないが、apple製品は可能。これで適当な時に共有して楽しむことができる。
3つ目は「漫画とかアニメとか見たい」という雑な理由だった。
布団で寝ながらデカい画面でオタクコンテンツをしゃぶることよりも幸せなことがあるだろうか。
そんなわけで「タブレット買おう!」と一念発起したが、一番の狙い目だったiPadは売り切れ常連かつ、注文しても1~2ヶ月待つのがザラという大人気状態だった。
そりゃあそうだ、世はまさに大ステイホーム時代。タブレットの需要が尽きないことは容易に想像できた。
一度は昂ぶった購買欲があえなく燃え尽きそうになったが、ここでとあるフレンドの言葉を思い出した。
「iPadAir持ってるけどかなりいい感じだよ。画面とかめっちゃ見やすいし」
このフレンド(仮称として河童さんとする)の言葉がなければiPadAirを知ることはなかっただろう。
なにせ最初はAmazonで探していて、iPadといえば普通のとminiしか無いんでしょと思っていたからだ。
ipadAirは在庫が潤沢で、appleストアで直接注文すれば翌日には配送されるという素敵状態だった。
その代わりと言ってはなんだが結構高い。ストレージを256GBにアップグレードすると
87780円。PS5とソフト数本が買えてしまうレベルになってしまう。
「うわっ、しかもmicroSDカード入らないのかよ!」
調べていて思わず声に出してしまった。
「まぁアップルはそういうとこあるからね」
そういうところがあるらしい。
買ってしまった。
256GBモデルなので87780円。ついでにいうと保護シートとカバーも買ったので9万円は超えてしまったことになる。
タダでさえ無印ipadより数段高い値段だが、64GBと256GBという究極のニ択に晒され、microSDカードに頼れないというandroidとの決定的な違いに揺り動かされ、気づけば「安心」するほうへ舵を切ってしまったのだ。
「容量デカいほうがおすすめよ」
思い返すと河童さんもそう言っていた気がする。
届いた。
楽しい。
綺麗な箱に包まれた付属品を見るだけでテンションが上がった。
apple製品を買うのはこれが初めてなので、初回セットアップはwindows版PCのiTunes経由で行った。
まずは機器認証が必要ということで、iTunes上でapple用のアカウントを急いで作成。
PCとiPadを接続し、何度か認識されないというトラブルはあったものの、無事に認証を済ませることができた。
とりあえずプロセカをインストールした。
現行のスマホから操作してアカウント引き継ぎ用のコードを発行してもらい、表示されたコードをそのままiPad側のプロセカに打ち込む。
スクリーンショットを撮ったりする手間も不要で、スムーズに引き継ぎができた。
とりあえず何曲か遊んだ。
おお、流石はタブレット、迫力が違う。ライブ中のキャラクターはハッキリと映し出されるし、ノーツの展開も見やすい。
ついでにフリックもやりやすい。スマホに比べて画面面積が4倍近くはあるしな。
ヒバナ[Expert]もはじめてクリアできた。実はプロセカはプレイして1ヶ月も経っていない。
ちょっとうれしかった。
……
……
席を離れていたときにiPadの画面が消えていたので再度表示させると、「パスコードを入力」と表示されていた。
え、パスコードって何だっけ?
初回セットアップで設定した気もする。
だが、映し出されていたのはキーボードだったので数字ではない。しかも何桁かなんて教えてくれない。完全に忘れてしまったか、もしくは全く見に覚えのないパスワードを求められているかのどちらかだと考えた。
調べると確かにそういうこともあるらしい。
30分ほどかけて調べたが思い当たるパスコードはわからず。
この時点で開封して2時間ほど経っていたがまさか2時間でまな板とそう変わらない状態になってしまうと思わなかった。
結局、初期化することで対応しようということになった。
「それってプロセカのアカウントも消えちゃうんじゃね?」
彼は河童さんとは違う友人だ。仮にオタコンさんと呼ぶ。
オタコンさんはぼくをプロセカ沼に引きずり下ろした張本人だ。
彼の推しは瑞希で、ぼくの推しは絵名なのだが、ガチャを引いた結果自分の推しが引けずにお互いの推しを引き合うという壮絶な結末を迎えたことがある。
……話を戻そう。
確かに初期化をするとアカウントも消えてしまいそうだ。
iTunesにはバックアップ機能があり、ipadを接続した段階でのバックアップは取得している可能性があったのだが、プロセカのインストールはiTunesでの認証以降に行ったのでそんなバックアップは残っていないと想像できる。
パスコードがわからない以上、iTunesとの接続も望めなさそうだった。
「まぁ運営に問い合わせればどうにかなるんじゃね?」
引き継ぎトラブルということで、運営に問い合わせればアカウント復旧ができるかもしれないと教えてくれた。まさかこんなことになるとは。
というわけで、一旦プロセカとはおさらばして、iPadの初期化を行うことにした。
復旧用のプログラムをiTunesにダウンロードするのに1~2時間、それから初期化作業が20分ほどかかった覚えがある。
初期化が終わり、再設定の作業に入った。
途中、とある設定項目に入った。
パスコードである。
結局のところパスコードは6桁固定であり、
「数字だけ」のパスコードの場合はテンキー風のキーボードで6桁なことがわかる、
「英数字」の場合は普通のキーボードが出るし6桁ということがわからない
ということがわかった。
悲しいことに、ぼくの普段利用しているパスワードは4桁、5桁、または8桁だったため、6桁のパスコードというのは絶妙に設定しづらい桁数だったのだ。
その結果、6桁のパスコードの印象が薄く、思い出すことができなかったのだ。
結構凹んだ。
そんなわけで、まな板にジョブチェンジしたiPadを再びオタクコンテンツ供給機として蘇らせる代償として、プロセカのアカウントと一旦おさらばすることになったのだ。
その後、プロセカ運営との壮絶なアカウント復旧作業のやり取りがあるとは、
このとき思いもしなかった。(前編おわり)