発酵技術により油脂を開発するスウェーデン企業Melt&Marbleが、シードラウンドで75万ユーロ(約9600万円)を調達した。
植物原料を使った代替肉の需要は急速に高まりを見せているが、植物肉と動物肉の味にはまだギャップがある。
Melt&Marbleは肉らしさを表現するうえで不可欠な油脂を、動物を使わずに提供することで、このギャップを埋めようと考えている。
スウェーデンを拠点とするMelt&Marbleは、精密発酵技術により油脂を開発している。
出典:Melt&Marble
精密発酵というのは、代替タンパク質領域で近年に注目される分野の1つ。上記画像のように、微生物を「生産工場」として、目的のタンパク質を作らせる。最終産物からは微生物は取り除かれる。
Melt&Marbleは、酵母の代謝を操作することで、あらゆる脂肪構造を模倣し、完全に新しい、より良い油脂を作り出すことができる。
パンやビール、ワインの生産では、酵母は糖からアルコールを作る。Melt&Marbleの技術をわかりやすくいうと、酵母の細胞を操作することで、酵母にアルコールの代わりにさまざまな動物性油脂を作らせている。
酵母はバイオテクノロジーによって、バイオエタノールやインスリンの生産など、異なる産業で重要な「触媒」として活用されてきた。
Melt&Marbleは特殊な酵素を活用することで、生成される油脂の構造や特性を決定できる技術を持っている。これにより、特定の用途に合わせて油脂の調整が可能となる。
出典:Melt&Marble
この柔軟な技術によって、同社はさまざまな植物ベース食品に適した油脂を作り出すことができる。
「植物性油脂の特性は、動物性油脂と異なります。たくさんの植物肉を食べましたが、本物には及びません。私たちはこれを解決したいと思っています。
私たちの技術を使えば、動物性油脂と同じか、それ以上の油脂を作ることができます。これは業界全体にとって起爆剤となるでしょう」
(創業者・CEOのAnastasia Krivoruchko氏)
代替肉の需要の高まりとともに、求められる植物油脂は増えていく。現在、代替肉に使用される油脂の一部は、森林伐採や生物多様性の破壊を伴うことが懸念される。また、動物性油脂と植物性油脂の特性は異なるため、動物肉の味を再現するのは難しい。
発酵ベースの油脂であれば、植物油脂よりも短時間に、スケーラブルな生産が可能となる。畜産と比べて使用する土地と水が少なく、排出される温室効果ガスも少ない。動物や熱帯雨林に害を与えることなく、効率的に油脂を生産できる。
出典:Melt&Marble
Melt&Marbleの研究は、スウェーデン、ヨーテボリにあるチャルマース工科大学の研究から始まった。当初、研究グループの特許保有会社として設立されたが、今年になり、植物肉用の独自の油脂製品ラインに焦点をあてることを決定。
Melt&Marbleは年末までに最初のプロトタイプとなる代替油脂を発表する予定。
出典:Melt&Marble
Melt&Marbleのように植物肉に必要な油脂を開発する企業は増えている。
オーストラリアのNourish Ingredientsも同じ精密発酵技術を使うことで、異なる植物性タンパク質に応じた油脂を開発している。
アメリカのMotif FoodWorksは、ゲルフ大学と提携し、植物肉の霜降り肉の生産を可能とする、独自オレオゲル技術による油脂技術を開発している。
イギリスのHoxton Farms、アメリカのMission Barnsは、細胞培養による動物性油脂を開発している。これらの企業は今年になってから、いずれも資金提供を受けている。
Melt&MarbleはもともとBiopetroliaという社名で2014年にスウェーデン、ヨーテボリに設立されたが、今月に社名が変更された。
このラウンドはNordic FoodTech VCが主導し、フィンランド企業Pauligのベンチャー部門PINC、Purple Orange Ventures、Chalmers Venturesが参加した。
参考記事
Melt&Marble Raises €750K Seed Round for its Fermentation-Based Fats
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